異世界でも主人公は奥さんでした?!〜異世界でも始まる奥さん無双〜

コンビニウルフ

文字の大きさ
23 / 28

第21話 乙女の純愛?!

しおりを挟む
 アマラさんの恋事情の件は、さすがに領主様への用事を済ませてからとなりました。
 日程通りに到着したので、明日の昼にエステを披露する事になる。

 アマラさん、クリスさん、ミーナさんは、なんだかんだ言いながらも『百均』で買ってあげた手鏡を離してくれない。
 自分の肌や髪を見ながらずっとニマニマしている。
 アマラさんは時々、思い出したかの様にクネクネしていた。

「アマラ、ちょっと気持ち悪いニャ。浮かれすぎは禁物だニャ」

「そうですわ。領主館へ送り届けるまでが護衛の依頼ですわよ」

「わ、分かってるよぉ。アタシだって分かってるんだけどさぁ。風呂とエステって言うのはスゲェな……」

 オレはアマラさんの変わり様の方が凄いと思ってしまいます。
 ステラさんも、アマラさん達が自分の技術でここまで変わったと上機嫌になっていた。

「ステラさん頑張ってましたからね。私が教える事は、もうほとんどないですよ」

「本当ですか! 美鈴さんにそう言って貰えると本当に嬉しいです。励みになります!」

 ステラさんは小さくガッツポーズを作り、目尻には光るものが見えた。

「ニャミーちゃんももう少しだし、ボルストンの主婦の人達もエステの認定証をあげて良いくらいの人が2~3人出てきたしね。みんなすっごく頑張ってるから、良いことになりそう♡」

「美鈴お姉様……私も頑張ります! 神に祈るだけではなくて、エステでみなさんの心を救う事が出来る様に……」

 女性陣が盛り上がってる中、オレとホフマンさんはまるで空気でした……

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 翌日も女性達は元気いっぱいです。
 夜も相当盛り上がったようで、特に『コイバナ』『ジョシカイ』の名称は広く普及する事となるだろう。
 何故『男子会』は無いのだろう?まぁホフマンさんとは少し飲んで終わりだったけれど。
 また、宿屋の洗い場を借りて朝風呂を堪能した。

「朝から風呂とは何と贅沢なんでしょう。気分も最高です。領主様への話も上手く行きそうな気がします」

 ホフマンさんは朝風呂は初めてのようで、スッキリとして仕事が出来ると風呂の素晴らしさを実感出来たようだ。

「ニャァァァァ~。気持ち良すぎるニャ~。もうお風呂無しではいられないのニャ~」

 ミーナさんは特にお風呂を気に入ってくれたようで、隣から声が漏れてくる。
 もちろん覗いてなどいませんよ。

「みんなリフレッシュできて良かった! これで今日のエステはバッチリ上手く行きそうだね」

「美鈴さんから学んだ、技術と気持ちで領主様に喜んで頂けるように頑張ります!」

「ステラさんの技術と気持ちがあれば、猫獣人とか人族とか関係ないよ! きっと上手くいくから安心してね」

 奥さんの言葉ででステラさんの目に炎が見えるぞ。
 メッチャ熱血してるけど、エステってこんな要素ありましたっけ?

「可能であれば『紅の鷹』にも領主様に会って頂きたいですね」

 ホフマンさんの一言に驚きを隠せない様だ。

「アタシ達がかい?理由わけを教えて欲しいね」

「『紅の鷹』メンバーは領主様の護衛もした事があると聞きました。それであれば、貴女達の見違えた姿に驚くと思うのです」

 奥さん達も頷いている。

「ビフォーアフター出来るし、アマラさん達が一緒にいてくれたら安心だよね」

「びふぉーあふたーはよく分かりませんが、美鈴お姉様が言っているのであれば、その方が良いと思います!」

 ニャミーさん、シスターだけにリアル信者ですね。
 奥さんは女神だけれども……でもオレもその方が良いと思う!
 2人の視線が怖いわけじゃないよ!

 結論から言うと、アマラさん達も同行OKになりました。
 すんなり行き過ぎで怖いな。
 領主はロンド商会と裏で繋がってるって噂もあるし……気を抜かないで行こう。






「私が領主のユリウス・グレイ男爵だ。ホフマンよ、よく来てくれたな。『紅の鷹』は……見違えたな! これもエステの力か!」

「貴方、早く私もしてほしいわ。私は妻のマリアよ。急に来て貰ってごめんなさいね」

 あれ?領主様は思ったより良い人みたいだけど?! 奥方のマリアさんも気さくな感じだぞ?
 グレイ男爵は35~6歳位かな?
 体格は恰幅が良く、ブロンドで耳が隠れるくらいのミディアムヘアをしている。
 マリア夫人はスレンダーで金髪を肩くらいまで伸ばしている20代後半の優しそうな人だ。
 小声でホフマンさんに聞いてみると……

『グレイ男爵は、猫獣人である私に、商店の許可証を下さった人格者ですよ。マリア様もとてもお優しい方です』

 ヤバイ!! 完全にウワサだけで早合点してたみたい……確かに『らしい』と言うだけだった……(第3話参照)ゴメンナサイ。

「それでは奥様、まずはお風呂に入って頂きます。その後にエステを行います。グレイ男爵様も宜しかったらお風呂へどうぞ。疲れがスッキリと取れますわ」

 ステラさんは落ち着いて話始めた。
 さりげなくお風呂を勧めるのはさすが商人の妻だなと感心してしまう。

「そのお風呂とはそんなに良いものなのか?美容に良いだけではないのか?」

「風呂に入ると身体中の血の廻りが良くなり、身体が軽くなります。何より、温かい湯に浸かるのはこの上なく気持ちが良いのです」

 ホフマンさんは領主様の問いに最高の答えで返した。
 領主様も興味を持ってくれたようで、先ずは館の主人であるグレイ男爵から風呂に入る事になった。
 もちろん、ホフマンさんとオレで入浴の仕方とシャンプーの使い方を教える。

「ふぉぉぉ……これは……自然と声が出てしまうな……くぅぅ……疲れが溶け出していくぞ……」

 5分くらい浸かっていただろうか。
 初めての風呂でのぼせてしまう可能性もあるので、上がってもらう。
 シャンプーも香りが良いと大満足して頂いた。

「マリア! これも凄いぞ!」

「あら、貴方がそんなに褒めるなんて楽しみですね」

 マリア夫人はステラさんと奥さんが連れて行ってくれた。
 何故かニャミーさんとアマラさん達も一緒に行ってしまった。
 グレイ男爵が風呂に入っている間に、だいぶ打ち解けたようだ。

「ところでホフマン、盗賊に襲われたらしいな」

「はい男爵様。やはりご存知でしたか」

「おそらくロンド商会の息がかかった者だろう。ポンプにチェス、リバーシ。今回のエステが成功すれば、お前も商店から商会になるだろうからな」

 やはりというか、グレイ男爵は仕事のできる男であった。
 多少の勘違い(早合点?!)はあったが、領民を思う素晴らしい領主のようだ。
 詳しく聞くと、その人柄ゆえに獣人も人族も分け隔て無く接してくれるそうだ。
 飲んだくれの情報は鵜呑みにしてはいけないよ。(みんなも気をつけてね!)

「風呂は樽で何とかなるが、『しゃんぷー』や『りんす』はどこから仕入れたんだ?」

「シャンプーやリンス、それに化粧品も和馬さんから仕入れています。何処どこから仕入れているかは言えないそうです」

「申し訳ありません。こればかりは故郷から仕入れているので、お教えする事ができないのです。ただ、製法であれば話す事は出来ます」

「そうか……では教えを乞おう。頼めるか?」

「喜んでお伝えします。化粧品と薬学に詳しい方がいれば分かりやすいかと」

 スキル『ネット検索』で調べた石鹸や化粧水の作り方を伝えてみよう。
 オレ達がいつ居なくなるか分からないし、当分は『百均』よりレベルが高い物が出来るとは思えないからね。
 どうやらマリア夫人の入浴とエステも終わったようだ。

「貴方……どうかしら……」

 グレイ男爵はこの日一番の衝撃を受けるのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

処理中です...