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4章
Part 281『地獄への道は善意で舗装されている』
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***
ハチは、喫茶店から出て行く峰の姿を見て微笑む。
「あまり、殺人犯を信用しないほうが良いでございますよ。」
峰は、勘違いしていた。魔女を殺したのが復讐であったとしても、ハチは、峰を危険に巻き込んだ張本人だ。
たとえ、安全である可能性が高くともその事実は変わらない。
つまるところ、ハチにとってどうでも良かったのだ。峰が死のうが、生きようが、どうでも良い。
むしろ、不幸になってしまえば良いとすら思っていた。
ハチは、魔女に育てられた。育てるなどと言えば聞こえがいいが、その実態は凄惨極まるものだった。食事は、与えられたとしても、残飯のようなもので、腐敗しているようなものを食べさせられたこともあった。
それでも生命力の強い種族であったハチは、生きて成長した。もしかしたら、死んでいたほうが幸せだったかもしれない。
魔女の奴隷として生活する自分は、死んでいるのと変わらなかった。気に入らなければ、魔法による攻撃をされ、死の淵を何度も行き来した。
痛みを避けるように魔女に対して従順であるようになった。悪意を向けられないように、気に入られるように。
うちに渦巻くどす黒い感情を押し殺し、従順で使える奴隷という自分を演じ続けた。
いつか殺してやると思いながら、魔女を愛する奴隷を演じた。
少しの自由を手に入れ、外の世界に触れ、自由に遊びまわる子供を見た。愛し合う恋人たちを見た。優しく温かい家族を見た。
自分の立場とは明らかに違うそれらを見て、押し殺していた感情が少しずつ漏れ始める。
幸せな存在が憎い。壊れてしまえばいいのに・・・・・・
魔女の仕事を手伝うことは、ハチにとって少なからず、自分の心の支えになっていた。
魔女の売った道具のせいで多くの妖怪が死ぬ。
病気で薬を買い続けなければいけない妖怪
ああ、もっと不幸になればいいのに・・・・・・
気がつけば、ハチは精神を魔女に毒されていた。
自分は絶対に罪にはならない場所から相手を不幸に落とす。落とされた本人ですら、ハチを責められないような、そんな安全な場所から突き落とす。
相手の不安を煽り、相手の間違いを正さず、坂道に向かって石ころを少しだけ押すような、そんな無味無臭の悪意をハチは常に抱いていた。
「どう転ぶかそれはそれで見ものでございますね。あちらの方も面白いことになっているでございますし」
ハチは、意味ありげに微笑むとコーヒーを飲み干し、笑顔を浮かべて喫茶店を出た。
ハチの悪意を知る者はまだいない。
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ハチは、喫茶店から出て行く峰の姿を見て微笑む。
「あまり、殺人犯を信用しないほうが良いでございますよ。」
峰は、勘違いしていた。魔女を殺したのが復讐であったとしても、ハチは、峰を危険に巻き込んだ張本人だ。
たとえ、安全である可能性が高くともその事実は変わらない。
つまるところ、ハチにとってどうでも良かったのだ。峰が死のうが、生きようが、どうでも良い。
むしろ、不幸になってしまえば良いとすら思っていた。
ハチは、魔女に育てられた。育てるなどと言えば聞こえがいいが、その実態は凄惨極まるものだった。食事は、与えられたとしても、残飯のようなもので、腐敗しているようなものを食べさせられたこともあった。
それでも生命力の強い種族であったハチは、生きて成長した。もしかしたら、死んでいたほうが幸せだったかもしれない。
魔女の奴隷として生活する自分は、死んでいるのと変わらなかった。気に入らなければ、魔法による攻撃をされ、死の淵を何度も行き来した。
痛みを避けるように魔女に対して従順であるようになった。悪意を向けられないように、気に入られるように。
うちに渦巻くどす黒い感情を押し殺し、従順で使える奴隷という自分を演じ続けた。
いつか殺してやると思いながら、魔女を愛する奴隷を演じた。
少しの自由を手に入れ、外の世界に触れ、自由に遊びまわる子供を見た。愛し合う恋人たちを見た。優しく温かい家族を見た。
自分の立場とは明らかに違うそれらを見て、押し殺していた感情が少しずつ漏れ始める。
幸せな存在が憎い。壊れてしまえばいいのに・・・・・・
魔女の仕事を手伝うことは、ハチにとって少なからず、自分の心の支えになっていた。
魔女の売った道具のせいで多くの妖怪が死ぬ。
病気で薬を買い続けなければいけない妖怪
ああ、もっと不幸になればいいのに・・・・・・
気がつけば、ハチは精神を魔女に毒されていた。
自分は絶対に罪にはならない場所から相手を不幸に落とす。落とされた本人ですら、ハチを責められないような、そんな安全な場所から突き落とす。
相手の不安を煽り、相手の間違いを正さず、坂道に向かって石ころを少しだけ押すような、そんな無味無臭の悪意をハチは常に抱いていた。
「どう転ぶかそれはそれで見ものでございますね。あちらの方も面白いことになっているでございますし」
ハチは、意味ありげに微笑むとコーヒーを飲み干し、笑顔を浮かべて喫茶店を出た。
ハチの悪意を知る者はまだいない。
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