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8章 ダンジョンを守れ ~異種族間同盟~

汚濁竜

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「本当に弱点なの…………? そんなところが」


「はい、私が見たところ。間違いないと思います」


 レクスは、思わぬ弱点に驚愕した。おおよそ、ドラゴンの弱点とは思えないような所だ。本当にそこが弱点なのか? と疑いたくなるような所だからだ。


「イルミ。ここにいて」


 レクスは、『守る』で集中的にイルミを障壁で覆った。これで、よっぽどのことがない限り、破られることはない。その代わり、自分の守りに障壁を割けなくなったが。


「ちょっ、レクス……………!!」


 イルミはレクスを止めようと手を伸ばす。だが、その手は届かない。イルミが障壁の中にいるからだ。


「大丈夫。すぐに終わらせて来るから。あっ、でも、少し目を閉じてた方がいいかもしれない。ちょっとヤバイことになるかもしれないから」


「そ、それって……………」


 もしかして、大量出血を見ることになるかもしれない……………! そう解釈したイルミは、尚更レクスを止めようとする。


「待って、レクス、待って!!」


 そんなイルミの叫びに、レクスはただ振り向いて安心させるように微笑んだ。大丈夫だよ、と。レクスは再び顔を汚濁竜ダストドラゴンに向けると、そのまま突っ走って行った


「レクスーーーーーーー!!」


 イルミは叫んだ。


(せっかく出来たなのに……………こんなところで失いたくない…………!!)


 もう駄目だ────と目を閉じるイルミ。しかし、いつまでたってもそのような悲鳴も音もなかった。恐る恐る目を開けてみるイルミ。そこには──────汚濁竜ダストドラゴンを圧倒するスピードで動き回るレクスの姿だった。そのスピードは凄まじく、イルミの視界にははっきりとレクスの姿を捉えられない。


『グヌヌヌ……………見えぬ。早くもあれを使うことになろうとは…………というか、使うつもりもなかったのだが…………仕方ない』


 汚濁竜ダストドラゴンはそう呟くと、ぶつぶつと何かを唱え始めた。


「……………!? 周囲の視界が……………!?」


『ククク……………これぞ我が奥義、蜃気楼…………。我の領域からは逃れられない………』


 汚濁竜ダストドラゴンはそう言うと、揺らめくようにして消えた。これはあのドラゴンのスキルなのだろう。この周囲の煙もドラゴンの名にふさわしく、少し臭かった。


『さあ、ホンモノの我を見つけてみせよ……………』


 ゆらゆらと所々に出現しながらそう言う汚濁竜ダストドラゴン。これは全部。その理由は至極単純。


「魔力反応で丸分かりだよ!!」


『グボベッ!?』


 レクスは汚濁竜ダストドラゴンの腹を思いっきり殴った。情けない呻き声で悲鳴を上げるドラゴン。


『グッ……………! 蜃気楼が通じぬとは…………ならば…………!!』


 ドラゴンはそう言うと、更に魔力を使って蜃気楼を強化する。もしかすると、スキルがこれしかないのだろうか。もしくは使っていないのか、使えないのか。

『グフフ…………この我にここまでの力をだ、出させるとは、さては貴様、人間ヒューマンではないな?』


「いや、人間だけど」


『……………フ、フフフ面白い冗談を言うやつだ。その冗談がどこまで続くか──────』


 ドラゴンに段々余裕がなくなってきている。弱点に飛び込むなら今しかない。たとえ、蜃気楼が強化されていてもその存在は感知できるので、大丈夫だ。


「……………………………」


 ドラゴンが、───────



「今だ!」


 レクスは口の中にある口蓋垂目掛けて飛び込み───────



『グアアアアァァァァ──────!?』
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