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序章 ルフスの日常
Prologue:2 剣技
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機工都市ルフス郊外・街道付近。
ルフスから出て、街道沿いを走っていると都市の上空を飛んでいた白い鉄の球体が複数、そして巨大な緑色の肌をした巨人が見えてきた。
草原に生えている木よりも背丈のある巨人が鉄の球体から発射されている青い光線のような魔法をものともせず闊歩している。
「堂々とした足取り、ん~いいねぇ。潰し甲斐がある」
「確かに、機工装置の迎撃魔法が効いてないね……」
“機工”。
レイル達が住む機工都市ルフスが独自に生み出した魔法技術、鉄と魔法を組み合わせることによって自立的に動く鉄の装置、判りやすく言えば“マシーン”を造り出すことができる。
機工技術は様々な用途でルフスに使われている、街を灯す街灯のランプの点火に、モノを冷やし続ける装置など。
空を飛んでいた白い鉄の球体も機工装置の一つで“偵察機工使い魔”と呼称されており、都市を守る役割を担っている。こうした魔物の迎撃もこの使い魔たちの仕事だ。
「状況は?」
先に到着していた隊員達にディアスがそう聞くと、隊員の一人が説明を始める。その時隊員は居るはずもないレイルを素早く二度見し僅かに動揺していた。
(何故レイル様が……)
「さ、サイクロプスは機工装置を完全に無視して真っ直ぐ都市へと進行中、およそ五分で都市正門に到達すると思われます。武装は血に塗れた棍棒が一つ、その他の装備は首から下げた十字のネックレス、髑髏の装飾品、皮の腰巻のみ。
魔力反応による戦闘能力計測では通常のサイクロプス並みの数値が確認されています」
「ただのオシャレサイクロプスってワケか……」
説明を聞き終えたディアスは、腰に装備していた鞘から剣を引き抜くと巨体に視線を向ける。
「なら。対サイクロプス用の作戦で、通常通り行くぞ」
「はっ」
ディアスを含めた五名の隊員がそれぞれ武器を構え、臨戦態勢を取る。
レイルは少し離れた位置からその様子を見守る事にした。
(俺はただの観客ということで……)
サイクロプスが隊員達を捉え、雄叫びを上げる。
手に持った棍棒を振り回し巨体を揺らしながら襲い掛かる、その迫力は初めて敵対した者ならば思わず震えあがってしまうだろう。
しかしディアス達防衛部隊は数多くの経験を積んだ戦闘のプロ。このような自分より数倍も大きい敵との戦闘には慣れていた。
「散開――」
合図と共に隊員達が四方に散る。
サイクロプスは一瞬戸惑った後、一人の隊員に的を絞り駆けだした。
それを見て、ノーマークの二名の隊員がサイクロプスの足元に素早く駆け、剣の刃で分厚そうな緑色の皮膚を攻撃。
手ごたえはあるが僅かに切り傷を与えられただけ、大したダメージではない。
実際にサイクロプスは攻撃を感じていないのか、足元の二人などお構いなしに最初に的を絞った一人の隊員にしか興味が無い様子。
「まぁ、そうだろうな。だがいいのかソレで」
ディアスは不敵な笑みを浮かべ、そう言うと。剣に自身の魔法の源である魔力を流し込んだ。
すると魔力が込められた剣の刃の部分に不思議な光を発しながら“刻印”が浮かび上がった。
刻印は一つ、二つ。と時間が経過する毎に増えていき、四つ浮かび上がった所でディアスはサイクロプス目掛けて走り出した。
まるで風のように、素早く一瞬でサイクロプスの足元まで到達すると跳躍、その背に向かって剣を振り下ろした。
「剣技・天撃!!!」
技の名と共に、刃の刻印が一瞬眩い光を放つ。そして刃が背に当たった直後内包していた魔力が爆発、爆音と物凄い勢いの爆風と共に刃が一気に振り抜かれた。
「グピッ!!」
サイクロプスから声が漏れる。
「魔法は無効化してても、直接攻撃に乗せて叩き込めば。普通に効くってことかァ?!」
剣技。
剣術のひとつの到達点、長年の鍛錬によって磨かれた剣使いにのみ会得することができる“奥義”。発動時に武器に特殊な刻印《ルーン》が現れるのが特徴。
並の者なら十年の修行でやっと剣技のひとつを身に着けることができるレベルの習得難度であり、防衛部隊に所属している隊員の中でも扱えるものはそう多くは居ない。
爆煙に包まれる中、ディアスは確かな手ごたえを感じた。
他の隊員達もすかさず攻撃に転じる、だが。
「うぉッ!!」
爆煙を払う様に振られた棍棒がディアスを襲った。
ルフスから出て、街道沿いを走っていると都市の上空を飛んでいた白い鉄の球体が複数、そして巨大な緑色の肌をした巨人が見えてきた。
草原に生えている木よりも背丈のある巨人が鉄の球体から発射されている青い光線のような魔法をものともせず闊歩している。
「堂々とした足取り、ん~いいねぇ。潰し甲斐がある」
「確かに、機工装置の迎撃魔法が効いてないね……」
“機工”。
レイル達が住む機工都市ルフスが独自に生み出した魔法技術、鉄と魔法を組み合わせることによって自立的に動く鉄の装置、判りやすく言えば“マシーン”を造り出すことができる。
機工技術は様々な用途でルフスに使われている、街を灯す街灯のランプの点火に、モノを冷やし続ける装置など。
空を飛んでいた白い鉄の球体も機工装置の一つで“偵察機工使い魔”と呼称されており、都市を守る役割を担っている。こうした魔物の迎撃もこの使い魔たちの仕事だ。
「状況は?」
先に到着していた隊員達にディアスがそう聞くと、隊員の一人が説明を始める。その時隊員は居るはずもないレイルを素早く二度見し僅かに動揺していた。
(何故レイル様が……)
「さ、サイクロプスは機工装置を完全に無視して真っ直ぐ都市へと進行中、およそ五分で都市正門に到達すると思われます。武装は血に塗れた棍棒が一つ、その他の装備は首から下げた十字のネックレス、髑髏の装飾品、皮の腰巻のみ。
魔力反応による戦闘能力計測では通常のサイクロプス並みの数値が確認されています」
「ただのオシャレサイクロプスってワケか……」
説明を聞き終えたディアスは、腰に装備していた鞘から剣を引き抜くと巨体に視線を向ける。
「なら。対サイクロプス用の作戦で、通常通り行くぞ」
「はっ」
ディアスを含めた五名の隊員がそれぞれ武器を構え、臨戦態勢を取る。
レイルは少し離れた位置からその様子を見守る事にした。
(俺はただの観客ということで……)
サイクロプスが隊員達を捉え、雄叫びを上げる。
手に持った棍棒を振り回し巨体を揺らしながら襲い掛かる、その迫力は初めて敵対した者ならば思わず震えあがってしまうだろう。
しかしディアス達防衛部隊は数多くの経験を積んだ戦闘のプロ。このような自分より数倍も大きい敵との戦闘には慣れていた。
「散開――」
合図と共に隊員達が四方に散る。
サイクロプスは一瞬戸惑った後、一人の隊員に的を絞り駆けだした。
それを見て、ノーマークの二名の隊員がサイクロプスの足元に素早く駆け、剣の刃で分厚そうな緑色の皮膚を攻撃。
手ごたえはあるが僅かに切り傷を与えられただけ、大したダメージではない。
実際にサイクロプスは攻撃を感じていないのか、足元の二人などお構いなしに最初に的を絞った一人の隊員にしか興味が無い様子。
「まぁ、そうだろうな。だがいいのかソレで」
ディアスは不敵な笑みを浮かべ、そう言うと。剣に自身の魔法の源である魔力を流し込んだ。
すると魔力が込められた剣の刃の部分に不思議な光を発しながら“刻印”が浮かび上がった。
刻印は一つ、二つ。と時間が経過する毎に増えていき、四つ浮かび上がった所でディアスはサイクロプス目掛けて走り出した。
まるで風のように、素早く一瞬でサイクロプスの足元まで到達すると跳躍、その背に向かって剣を振り下ろした。
「剣技・天撃!!!」
技の名と共に、刃の刻印が一瞬眩い光を放つ。そして刃が背に当たった直後内包していた魔力が爆発、爆音と物凄い勢いの爆風と共に刃が一気に振り抜かれた。
「グピッ!!」
サイクロプスから声が漏れる。
「魔法は無効化してても、直接攻撃に乗せて叩き込めば。普通に効くってことかァ?!」
剣技。
剣術のひとつの到達点、長年の鍛錬によって磨かれた剣使いにのみ会得することができる“奥義”。発動時に武器に特殊な刻印《ルーン》が現れるのが特徴。
並の者なら十年の修行でやっと剣技のひとつを身に着けることができるレベルの習得難度であり、防衛部隊に所属している隊員の中でも扱えるものはそう多くは居ない。
爆煙に包まれる中、ディアスは確かな手ごたえを感じた。
他の隊員達もすかさず攻撃に転じる、だが。
「うぉッ!!」
爆煙を払う様に振られた棍棒がディアスを襲った。
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