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本編
100.信頼できない商人をどうするか
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商人の一時的な滞在は、許可が不要だ。そのため定住許可は出せないが、滞在は許された。騎士達はそれぞれに私服に着替えたり、配下の情報屋や衛兵を使って監視を始める。パブロ商会の本店移転計画は、ロイスナー公国にとって難しい問題だった。
独立した国である以上、産業の発展は必須だ。以前のようにアードラー王国の一領地であれば、自領の発展だけを考えればよい。得意な分野を伸ばし、苦手な分野は他領を頼る方法が使えた。しかし、独立したなら話は別だ。
頼る先が同じ国内ではなく、他国となる。交易となるため、税や国内産業の保護も絡んだ。何より、この地域は食糧の自給自足が難しい。山脈を背負った標高の高い地域であるため、年間を通して気温が低かった。主食の小麦が育ちにくいのだ。
暖かな地方の平地ならば二毛作も可能だが、ロイスナー公国では無理だった。加えて、酪農により得た乳製品の出荷もある。清流が豊かなため、川魚や山菜も豊富だった。足りないのは小麦などの穀物になるが、そこで必要なのが信頼できる商会となる。
他国との取引ルートを持ち、様々な商品を扱う大きな商会……条件としてはパブロ商会も該当する。ただ本店を移転したこと、情報を隠していること。ロイスナー公国のことを調べる間もなく急いでカペル共和国を離脱した事情が、セラノへの不信感として残った。
「ラファエルはどう思った?」
「僕なら……距離を置いて接する」
信頼はしない。けれど、契約書で縛るならその部分に関しては信用してもいい。それがラファエルの判断だった。人を見定める目が確かだと仮定するなら、契約を破る悪人ではないが信頼できるほど誠実ではない。表現になるほどと頷いた。
名乗らず騎士の振りで交じったヨーゼフも、似たような判断を下した。裏事情がわからぬうちは、手を組めない。アウグストは兄と甥の意見を尊重する方向で、見張りだけを命じた。
「妙な動きをしたら、対処して構わない」
副官ヴィリにも権限を与え、緊急時の想定も行った。ようやく上司がまともに動き出したと安心した矢先、ヴィリはその期待を裏切られる。
「俺はガブリエルと出かけてくる」
「どちらへ?」
「ルイス王国だ」
山脈を越えた向こう、普段は国交も交易もない国だ。大きな山脈と海に挟まれた細長い国だった。王国を名乗っているが、世襲制ではない。王は二十年に一度、国民に選ばれる不思議な制度があった。
「っ、なぜ!」
「ガブリエルが必要だと言ったからだ」
驚いて固まる副官を残し、アウグストは馬首を屋敷へ向ける。夢でお告げを受けたのか、ガブリエルは母ミヒャエラに相談した。ルイス王国へ行きたい、その願いにアウグストが護衛に選ばれたのだ。厳しい山越えは無理なため、隣のゼークト王国経由で向かう。
「さて、せっかく姪と旅行だ。楽しんでくるとしようか」
王城で騎士団長という枠に押し込められた窮屈な生活と真逆の、自由な旅を楽しもう。同じように王太子の婚約者という柵から解放されたガブリエルとともに。アウグストの胸は期待に満ちていた。
独立した国である以上、産業の発展は必須だ。以前のようにアードラー王国の一領地であれば、自領の発展だけを考えればよい。得意な分野を伸ばし、苦手な分野は他領を頼る方法が使えた。しかし、独立したなら話は別だ。
頼る先が同じ国内ではなく、他国となる。交易となるため、税や国内産業の保護も絡んだ。何より、この地域は食糧の自給自足が難しい。山脈を背負った標高の高い地域であるため、年間を通して気温が低かった。主食の小麦が育ちにくいのだ。
暖かな地方の平地ならば二毛作も可能だが、ロイスナー公国では無理だった。加えて、酪農により得た乳製品の出荷もある。清流が豊かなため、川魚や山菜も豊富だった。足りないのは小麦などの穀物になるが、そこで必要なのが信頼できる商会となる。
他国との取引ルートを持ち、様々な商品を扱う大きな商会……条件としてはパブロ商会も該当する。ただ本店を移転したこと、情報を隠していること。ロイスナー公国のことを調べる間もなく急いでカペル共和国を離脱した事情が、セラノへの不信感として残った。
「ラファエルはどう思った?」
「僕なら……距離を置いて接する」
信頼はしない。けれど、契約書で縛るならその部分に関しては信用してもいい。それがラファエルの判断だった。人を見定める目が確かだと仮定するなら、契約を破る悪人ではないが信頼できるほど誠実ではない。表現になるほどと頷いた。
名乗らず騎士の振りで交じったヨーゼフも、似たような判断を下した。裏事情がわからぬうちは、手を組めない。アウグストは兄と甥の意見を尊重する方向で、見張りだけを命じた。
「妙な動きをしたら、対処して構わない」
副官ヴィリにも権限を与え、緊急時の想定も行った。ようやく上司がまともに動き出したと安心した矢先、ヴィリはその期待を裏切られる。
「俺はガブリエルと出かけてくる」
「どちらへ?」
「ルイス王国だ」
山脈を越えた向こう、普段は国交も交易もない国だ。大きな山脈と海に挟まれた細長い国だった。王国を名乗っているが、世襲制ではない。王は二十年に一度、国民に選ばれる不思議な制度があった。
「っ、なぜ!」
「ガブリエルが必要だと言ったからだ」
驚いて固まる副官を残し、アウグストは馬首を屋敷へ向ける。夢でお告げを受けたのか、ガブリエルは母ミヒャエラに相談した。ルイス王国へ行きたい、その願いにアウグストが護衛に選ばれたのだ。厳しい山越えは無理なため、隣のゼークト王国経由で向かう。
「さて、せっかく姪と旅行だ。楽しんでくるとしようか」
王城で騎士団長という枠に押し込められた窮屈な生活と真逆の、自由な旅を楽しもう。同じように王太子の婚約者という柵から解放されたガブリエルとともに。アウグストの胸は期待に満ちていた。
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