【完結】魔王様、逃がすわけないでしょう?

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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17.魔の森が生み出し、王は拾う

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 拾った亀がバレたあたりから、ルシファー様が開き直った。次々と城内へ新しい生き物を連れてくる。分類しては希望を聞いて、各所へ送り届けること二ヶ月。即位記念祭目前となった。

「今後一ヶ月、何かを拾ってきても、無視します」

 祭まで一ヶ月を切った。これ以上遅れたら、準備が間に合わない。何より、ベールの苛々がすごかった。当たり散らすほど無節操ではないが、呑み込んだ文句がじわじわと滲み出ている。比喩表現ではなく、本当に魔力が漏れていた。

 すれ違った魔狼が怯えて尻尾を巻き、廊下を曲がって鉢合わせしたドラゴンが立ったまま気絶する。これ以上の被害者を増やさないため、元凶であるルシファー様を締め上げることにした。

「……一ヶ月か」

「ええ、その間に見つけた子を持ち込んだら……問答無用で亜空間にしまいます」

「死んだらどうするんだ!」

「連れてこなければいいでしょう」

 一ヶ月待てばいい。ただそれだけのことなのに、なぜ……? 眉根を寄せて、ルシファー様に詰め寄る。

「まさか、まだ隠しているのですか」

「そ、そんなこと、あるわけないだろ。あるわけない」

 二度言った。間違いなく隠している。魔力を放ち、周囲へ感知を広げた。働く魔族の魔力を排除し……不自然な場所にある魔力に目を細める。

「ルシファー様の私室、それも寝室に侵入者がいるようですね。排除してきましょう」

「い、いや。あれは違う。大丈夫だ、客人だから」

 本当に墓穴を掘るのが上手な人です。寝室に客人を招くバカが、どこにいるのですか。それもご丁寧にベッドの上に……いえ、もしかしたら下かもしれませんね。他にも小さな反応がいくつか。

「客人ですか、ではご挨拶をしなければいけません」

 やめてくれと騒ぐルシファー様が腕を掴むが、無理やり掴んで持ち上げた。脇に抱えて進む。本気で戦えば、私など止められるだろうに。じたばたと手を動かすだけで、魔力による実力行使はなかった。

 寝室の扉を開け、中を見回す。綺麗に整理された部屋は、掃除の後だろう。シーツも整えられていた。やはりベッドの下か。ルシファー様を床へ下ろし、ベッドを浮かせた。膝をついて覗き込むなど、私の性に合わない。

「……緑の……子供?」

 ルシファー様や私達と似た形の、子供だった。髪の色は鮮やかな緑、瞳は金色がかっているが緑だ。肌も薄い緑で、顔立ちは整っていた。

「新種だと思うんだが、魔の森を散歩してたら抱きつかれた」

「……はぁ」

 溜め息と同時に、呆れの声が漏れる。

「一人ですか?」

「いや、他にも……」

 出すよう言い聞かせると、同じ姿の子供が三人出てきた。同じ種族なのだろう。全員が服を着ておらず、裸のままだ。毛皮も鱗もないので、何か着せた方がいいだろう。

「これで終わりですね?」

「間違いない、嘘じゃないぞ」

 きっぱり言い切った純白の少年の頬を、ぎゅっとつねった。痛いと騒ぐ魔王だが、痛いわけがない。薄い結界越しの暴力など、撫でた程度の感覚のはずだ。遠慮なく、さらにつねった。

「次はありません。私が「私」でいる間に、いい子になってくださいね」

 以前の私は、俺と称していた。あの頃の乱暴で粗雑な振る舞いを思い出したのか、ルシファー様は何度も頷く。摘まんでいた手を離し、子供の前に屈んだ。ちなみにベッドは邪魔なので、少し離れた窓際に下ろした。

「言葉は理解できますか?」

 こくんと頷くが、声を発することはない。いくつか質問を行い、きちんとした知性もある種族だと判明した。魔の森が生み落とした魔族なら、生存の権利を保証する。この世界のルールは単純だった。

 弱ければ死ぬ、強ければ生き残る。魔の森が生み出す生き物は多種多様だが、自然淘汰されて整理されるのだろう。今はその前段階、テストも兼ねて作り出すだけ。この子達も生き残れるか、わかりませんが……。

 ルシファー様のシーツを剥いで、服の形に整える。見様見真似で着用する子供達の髪を撫でれば、鋭い針のようだった。毒も持っているようですね。

「ルシファー様はベールの説教を受けてください。この子達は私が預かります」

「殺すなよ?」

 失礼な主君を睨むのではなく、笑顔で振り返る。慌てて逃げていくが、すぐにベールに捕まった。肝心な言葉が足りないのに、どうして余計な一言が多いのでしょうか。
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