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46.思わぬ提案に乗る方向で
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身長の倍を超える大きさの背もたれを持つ玉座に、ルシファー様は額を押さえて呻いた。
「普通の椅子でいいだろ」
「普通の椅子に権威は付いてきません」
ぴしゃんと言い返す。王冠でダンマリを決め込むなら、こちらも一切手加減はしませんよ。玉座は反対するだろうと思っていました。だから、いま札を切るのです。断れないタイミングで、ね。
「王冠に続いて、玉座まで嫌だと言い出したら……ベールと私で数十年単位のお話があります」
「……玉座は我慢する」
「我慢なさる? ほぅ、何か不満があるのですね。じっくりお聞きしましょうか」
「いや……いい」
ここまで詰めても、話さないのなら余程のことでしょう。聞き出すのを諦めかけたその時、ぼそりとルシファー様が呟いた。
「偉そうなの、嫌いなんだよな……オレはこういうの向いてないし」
その後もぶつぶつと話すが、似たような内容だった。つまり、偉そうに見えるから王冠や玉座を拒否したい? 実際に偉いのに……何を言っているのでしょうね。
「魔王陛下が偉くないと言い出したら、他の貴族はどうするのですか。一族を纏める長は? 我々大公は? 無責任ですよ」
「……そう言われると思った」
だから言葉を呑み込んだんだ。むすっとした顔で反論し、ルシファー様はひらりと姿を消した。
王冠を嫌がった理由は判明しましたが、ベールに伝えていいものかどうか。怒って追い回す気もするし、逆に呆れて放り出すかも。どちらでもおかしくないが、呆れる可能性の方が高いでしょう。
拗れる前に、適当に誤魔化す手もありますが……さて。
家具として設置と表現するより、建物の一部の建築に近い玉座を眺める。
「王冠なんだけど、即位記念祭で付けてもらうのはどうかしら。普段はつけなくていいと思うの。眩しいし重いでしょ?」
転移で飛び込んだベルゼビュートの発言に、なるほどと納得した。偉そうに見えるのが、即位記念祭だけなら構わないのでは? このくらいの妥協なら、あの人も受け入れるだろう。
「いい考えですね」
たまには役に立つ。勘がいいベルゼビュートは、ルシファー様の態度や仕草から何か感じ取ったのだ。理由は不明でも、嫌がっている気配を察して妥協案を出した。こういう部分は、彼女の長所ですね。
「あら、いま褒めたの? 嘘っ! 明日、世界が滅びるんじゃない?」
「滅ぼしてあげましょうか?」
この失礼な発言も、慌てて逃げるところも。本当に腹立たしいくらい、ルシファー様に似ていますね。見送って、やれやれと首を横に振った。
玉座の完成までに、王冠をどこへ飾るか……決めよう。ベールと相談すればいいか。彼の魔力を探り、近くに転移した。
「……何を始めたのですか」
「王冠の形が気に入らないのなら、変えてみようと思いまして」
宝石を外して、悩んでいるベールは真剣そのものだった。おそらく別の形にしても、嫌がる。確信はあるが、忠告するには理由も必要だった。少し考え、話を逸らすことに決めた。
「玉座の上部に飾る話だったのでは? 王冠から外して宝石を玉座に埋め込むのは、やめた方がいいかと」
「……そうですか。では戻しておきましょう」
微妙な間があったのは、隠した裏に気づかれたか。言及しないのは、私が隠すだけの理由があると判断したためだろう。互いに裏を読む癖のある私達だからこその、さらりとした会話に落ち着いた。
現場に戻って確認し、玉座の彫刻に夢中のドワーフを巻き込む。王冠が映えるよう、彫刻を変更する親方は、文句を言いながらも嬉しそうだった。生涯最高の彫刻を施してみせると息巻いて、ノミを振り回す。
私とベールなので問題ないですが、他の方相手にはやめてほしいですね。
「普通の椅子でいいだろ」
「普通の椅子に権威は付いてきません」
ぴしゃんと言い返す。王冠でダンマリを決め込むなら、こちらも一切手加減はしませんよ。玉座は反対するだろうと思っていました。だから、いま札を切るのです。断れないタイミングで、ね。
「王冠に続いて、玉座まで嫌だと言い出したら……ベールと私で数十年単位のお話があります」
「……玉座は我慢する」
「我慢なさる? ほぅ、何か不満があるのですね。じっくりお聞きしましょうか」
「いや……いい」
ここまで詰めても、話さないのなら余程のことでしょう。聞き出すのを諦めかけたその時、ぼそりとルシファー様が呟いた。
「偉そうなの、嫌いなんだよな……オレはこういうの向いてないし」
その後もぶつぶつと話すが、似たような内容だった。つまり、偉そうに見えるから王冠や玉座を拒否したい? 実際に偉いのに……何を言っているのでしょうね。
「魔王陛下が偉くないと言い出したら、他の貴族はどうするのですか。一族を纏める長は? 我々大公は? 無責任ですよ」
「……そう言われると思った」
だから言葉を呑み込んだんだ。むすっとした顔で反論し、ルシファー様はひらりと姿を消した。
王冠を嫌がった理由は判明しましたが、ベールに伝えていいものかどうか。怒って追い回す気もするし、逆に呆れて放り出すかも。どちらでもおかしくないが、呆れる可能性の方が高いでしょう。
拗れる前に、適当に誤魔化す手もありますが……さて。
家具として設置と表現するより、建物の一部の建築に近い玉座を眺める。
「王冠なんだけど、即位記念祭で付けてもらうのはどうかしら。普段はつけなくていいと思うの。眩しいし重いでしょ?」
転移で飛び込んだベルゼビュートの発言に、なるほどと納得した。偉そうに見えるのが、即位記念祭だけなら構わないのでは? このくらいの妥協なら、あの人も受け入れるだろう。
「いい考えですね」
たまには役に立つ。勘がいいベルゼビュートは、ルシファー様の態度や仕草から何か感じ取ったのだ。理由は不明でも、嫌がっている気配を察して妥協案を出した。こういう部分は、彼女の長所ですね。
「あら、いま褒めたの? 嘘っ! 明日、世界が滅びるんじゃない?」
「滅ぼしてあげましょうか?」
この失礼な発言も、慌てて逃げるところも。本当に腹立たしいくらい、ルシファー様に似ていますね。見送って、やれやれと首を横に振った。
玉座の完成までに、王冠をどこへ飾るか……決めよう。ベールと相談すればいいか。彼の魔力を探り、近くに転移した。
「……何を始めたのですか」
「王冠の形が気に入らないのなら、変えてみようと思いまして」
宝石を外して、悩んでいるベールは真剣そのものだった。おそらく別の形にしても、嫌がる。確信はあるが、忠告するには理由も必要だった。少し考え、話を逸らすことに決めた。
「玉座の上部に飾る話だったのでは? 王冠から外して宝石を玉座に埋め込むのは、やめた方がいいかと」
「……そうですか。では戻しておきましょう」
微妙な間があったのは、隠した裏に気づかれたか。言及しないのは、私が隠すだけの理由があると判断したためだろう。互いに裏を読む癖のある私達だからこその、さらりとした会話に落ち着いた。
現場に戻って確認し、玉座の彫刻に夢中のドワーフを巻き込む。王冠が映えるよう、彫刻を変更する親方は、文句を言いながらも嬉しそうだった。生涯最高の彫刻を施してみせると息巻いて、ノミを振り回す。
私とベールなので問題ないですが、他の方相手にはやめてほしいですね。
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