【完結】魔王様、逃がすわけないでしょう?

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

文字の大きさ
46 / 67

46.思わぬ提案に乗る方向で

しおりを挟む
 身長の倍を超える大きさの背もたれを持つ玉座に、ルシファー様は額を押さえて呻いた。

「普通の椅子でいいだろ」

「普通の椅子に権威は付いてきません」

 ぴしゃんと言い返す。王冠でダンマリを決め込むなら、こちらも一切手加減はしませんよ。玉座は反対するだろうと思っていました。だから、いま札を切るのです。断れないタイミングで、ね。

「王冠に続いて、玉座まで嫌だと言い出したら……ベールと私で数十年単位のお話があります」

「……玉座は我慢する」

「我慢なさる? ほぅ、何か不満があるのですね。じっくりお聞きしましょうか」

「いや……いい」

 ここまで詰めても、話さないのなら余程のことでしょう。聞き出すのを諦めかけたその時、ぼそりとルシファー様が呟いた。

「偉そうなの、嫌いなんだよな……オレはこういうの向いてないし」

 その後もぶつぶつと話すが、似たような内容だった。つまり、偉そうに見えるから王冠や玉座を拒否したい? 実際に偉いのに……何を言っているのでしょうね。

「魔王陛下が偉くないと言い出したら、他の貴族はどうするのですか。一族を纏める長は? 我々大公は? 無責任ですよ」

「……そう言われると思った」

 だから言葉を呑み込んだんだ。むすっとした顔で反論し、ルシファー様はひらりと姿を消した。

 王冠を嫌がった理由は判明しましたが、ベールに伝えていいものかどうか。怒って追い回す気もするし、逆に呆れて放り出すかも。どちらでもおかしくないが、呆れる可能性の方が高いでしょう。

 拗れる前に、適当に誤魔化す手もありますが……さて。

 家具として設置と表現するより、建物の一部の建築に近い玉座を眺める。

「王冠なんだけど、即位記念祭で付けてもらうのはどうかしら。普段はつけなくていいと思うの。眩しいし重いでしょ?」

 転移で飛び込んだベルゼビュートの発言に、なるほどと納得した。偉そうに見えるのが、即位記念祭だけなら構わないのでは? このくらいの妥協なら、あの人も受け入れるだろう。

「いい考えですね」

 たまには役に立つ。勘がいいベルゼビュートは、ルシファー様の態度や仕草から何か感じ取ったのだ。理由は不明でも、嫌がっている気配を察して妥協案を出した。こういう部分は、彼女の長所ですね。

「あら、いま褒めたの? 嘘っ! 明日、世界が滅びるんじゃない?」

「滅ぼしてあげましょうか?」

 この失礼な発言も、慌てて逃げるところも。本当に腹立たしいくらい、ルシファー様に似ていますね。見送って、やれやれと首を横に振った。

 玉座の完成までに、王冠をどこへ飾るか……決めよう。ベールと相談すればいいか。彼の魔力を探り、近くに転移した。




「……何を始めたのですか」

「王冠の形が気に入らないのなら、変えてみようと思いまして」

 宝石を外して、悩んでいるベールは真剣そのものだった。おそらく別の形にしても、嫌がる。確信はあるが、忠告するには理由も必要だった。少し考え、話を逸らすことに決めた。

「玉座の上部に飾る話だったのでは? 王冠から外して宝石を玉座に埋め込むのは、やめた方がいいかと」

「……そうですか。では戻しておきましょう」

 微妙な間があったのは、隠した裏に気づかれたか。言及しないのは、私が隠すだけの理由があると判断したためだろう。互いに裏を読む癖のある私達だからこその、さらりとした会話に落ち着いた。

 現場に戻って確認し、玉座の彫刻に夢中のドワーフを巻き込む。王冠が映えるよう、彫刻を変更する親方は、文句を言いながらも嬉しそうだった。生涯最高の彫刻を施してみせると息巻いて、ノミを振り回す。

 私とベールなので問題ないですが、他の方相手にはやめてほしいですね。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

【コミカライズ決定】愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
【コミカライズ決定の情報が解禁されました】 ※レーベル名、漫画家様はのちほどお知らせいたします。 ※配信後は引き下げとなりますので、ご注意くださいませ。 愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

【完結】冷遇され続けた私、悪魔公爵と結婚して社交界の花形になりました~妹と継母の陰謀は全てお見通しです~

深山きらら
恋愛
名門貴族フォンティーヌ家の長女エリアナは、継母と美しい義妹リリアーナに虐げられ、自分の価値を見失っていた。ある日、「悪魔公爵」と恐れられるアレクシス・ヴァルモントとの縁談が持ち込まれる。厄介者を押し付けたい家族の思惑により、エリアナは北の城へ嫁ぐことに。 灰色だった薔薇が、愛によって真紅に咲く物語。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】魔王を殺された黒竜は勇者を許さない

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
ファンタジー
幼い竜は何もかも奪われた。勇者を名乗る人族に、ただ一人の肉親である父を殺される。慈しみ大切にしてくれた魔王も……すべてを奪われた黒竜は次の魔王となった。神の名づけにより力を得た彼は、魔族を従えて人間への復讐を始める。奪われた痛みを乗り越えるために。 だが、人族にも魔族を攻撃した理由があった。滅ぼされた村や町、殺された家族、奪われる数多の命。復讐は連鎖する。 互いの譲れない正義と復讐がぶつかり合う世界で、神は何を望み、幼竜に力と名を与えたのか。復讐を終えるとき、ガブリエルは何を思うだろうか。 ハッピーエンド 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/03/02……完結 2023/12/21……エブリスタ、トレンド#ファンタジー 1位 2023/12/20……アルファポリス、男性向けHOT 20位 2023/12/19……連載開始

処理中です...