【完結】愛してないなら触れないで

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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47.国王陛下の認めた女侯爵という価値

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 二人で並んで立つ。促されるままに腕を絡めた。これは政略ではなく、愛し合っての婚約と知らしめるため。このウーリヒ王国社交界で、不文律となっていた。政略結婚ならば通常のエスコートを、恋愛で結ばれたなら腕を絡める。より親しさをアピールすることで、周囲を牽制するのが狙いだった。

 腕を組んで入場すれば、他の独身男性はダンスへ誘うことを諦める。独占欲の証でもあるので、美しい妻を自慢とする男性のほとんどは腕を組んだ。それを羨ましく思った前世の私に教えてあげたいわ。今生は愛する人と夜会で腕を組むのよ、って。

 私達を見た侍従が声を張り上げた。と同時に扉がゆっくり開く。

「アルブレヒツベルガー大公様、ならびに婚約者アウエンミュラー侯爵様のご入場です」

 ざわっと夜会の広間が揺れる。アウエンミュラーの名を名乗る権利を持つのは私だけ。だけど、すでに広間に父や弟妹がいるはず。彼らにアウエンミュラー侯爵の名を語る資格はない。一滴も一族の血を引き継がぬ、侵略者なのですものね。

 私しか継承者のいない爵位だから、女性であっても侯爵を継げる。王宮の侍従は貴族の次男三男が多く、故にこの国で「閣下」の名称は呼び出しに使用しなかった。爵位に男女の区別をする習慣もないから、「女侯爵」ではなく「侯爵」となる。顔を上げた私は、堂々と足を踏み出した。

 ぴたりとタイミングを合わせたヴィルが並び、正面にある玉座の近くに用意された長椅子へ向かう。玉座に近いほど高位貴族が並ぶ。濃紺の絨毯の上を進み、ぴたりと足を止めた。

「愛しいローザ、こちらへ」

 用意された長椅子に腰掛けて手招くヴィルは、三人掛けの空きスペースではなく膝を示した。内心はどきどきしながらも、微笑んで彼の膝に腰掛ける。重くないかしら。まだガリガリに痩せたあの頃じゃないから、気を遣ってしまうわ。姿勢を正しくして、少し力を入れて浮かせば……そんな考えを見透かしたように、引き寄せられた。

 完全に寄りかかってしまい、すべての体重がヴィルにかかる。

「ごめんなさい、重いかしら」

「君が? 軽過ぎて抱き締めていないと不安なくらいだ」

 人目など気にせず、私を抱き寄せて囁く。その姿は傲慢で自分勝手な権力者のイメージそのものだった。

「アルブレヒツベルガー大公閣下、お久しぶりですわ。そちらの美しいご令嬢を紹介していただけませんか?」

「……ヴァイデンフェラー公爵夫人か。俺の婚約者アウエンミュラー侯爵だ」

「ご令嬢ではありませんの?」

「国王陛下の認めた女侯爵に不満があるのか」

「いいえ」

 笑顔が途中で引き攣ったのは、ヴィルが威嚇するからね。ここは私が先に折れましょう。この方は復讐の対象ではないのですから。

「このような体勢で失礼いたしますわ。アウエンミュラー侯爵ローザリンデと申します」

 その言葉に甲高い叫び声が被った。

「嘘だ! その娘が爵位を継げるはずがっ!!」

 あらあら、マナー違反ですわ。お父様は昔からマナーや礼儀作法を疎かにしてらしたから……こんなところで恥をかくのも自業自得ですね。ヴィルと顔を見合わせて、くすっと笑った。
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