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48.小物を先に片付けなくてはね
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先に小物が引っかかった場合、釣り上げる方がいいかしら。それとも後回しにするべき?
大物を釣り上げる予定の湖で、小物がその餌に食いついた場合どうするか。小物を排除するのも一つ、釣り上げて次の餌に利用するのも……また。
こんな考えに至るのは、周囲の環境の変化が大きい。私は今まで無力な小娘だった。前世は公爵夫人なのに蔑ろにされ、餓死や毒殺で処分されたのよ。そんな無力だった私が、両手に持て余すほどの権力を手に入れたら、多少傲慢にもなるわよね?
「あら、お父様。お久しぶりですわ」
「貴様っ、なんのつもりだ! アウエンミュラー侯爵はわしだぞ。リヒテンシュタイン公爵へ嫁いだ貴様ではない」
うふふ、なんて素敵な道化かしら。全部説明してくれるなんて。これでリヒテンシュタイン公爵家を巻き込む理由が出来た。ちらりと視線を向けた先で、ヴィルは機嫌よさそうだった。以心伝心、お互いに都合がいいと微笑み合う。
「何を仰ってるのかしら。私はアウエンミュラーで唯一正当な血筋の娘ですわ。家督を継ぐ権利は私にしかありません」
その言葉に激昂して喚き散らす父を、周囲の貴族は興味深そうに眺める。それからひそひそと噂話が始まった。当然、私が実家である侯爵家で酷い扱いをされた噂も、復活したでしょうね。前女侯爵の夫、現女侯爵の父――あの男に残るのはその肩書きだけ。
「血筋など関係ない。侯爵になるために、あんな面白くもない女と結婚してやったんだぞ!」
「その煩い口を閉じろ」
ヴィルがぴしゃりと言い放つ。だが父は侍従が呼んだヴィルの肩書きを覚えていないらしい。顔を顰めて指差し怒鳴り散らす。
「リヒテンシュタイン公爵に嫁がせたのに、浮気か? こんな薄気味悪い片目男に騙されおって!! 早く戻って子でも産め。女にできるのはその程度だろう」
ざわっと周囲が怒りや嫌悪の感情に染まる。何もしなくても墓穴を掘ってくれる父を、少しだけ見直した。こんなに馬鹿で愚かな人間に、私は知らず怯えていたのね。暴力や叱責を恐れる私を破滅へ導いた男……もう血の繋がりなんて価値がない。だって、それより大切な存在を知ったもの。
「貴族女性すべてを敵に回す発言だぞ」
「さきほど私に挨拶したけれど、そんなおつもりだったのね。お付き合いを断たせていただくわ」
周囲の貴族から睨まれ、拒絶する言葉を投げかけられ、ようやく父は気づいた。この場所で発言するほど、己の立場が悪くなることを。慌てて「そういう意味では」だの「あなたは違う」と言い訳を始めた。
断絶すると言い切ったのは、アダルベルト侯爵夫人ね。前世では、弟のどちらかがアダルベルトと婚姻したわ。
「そんな! 僕の結婚はどうなるんだ」
騒ぐ弟の片方に、にっこりと笑顔を向けた。噛み付いて来なさい。餌を撒いて待つのが、こんなに楽しいだなんて。謀略や策略を張り巡らせ、危険を掻い潜る王宮の黒い一面は、意外にも私の肌に合うみたい。
「愛しいローザ、この羽虫は俺が処分しよう。だから」
「信じてるわ、ヴィル」
愛を請う形で私の手にキスをする独身の大公と、微笑んで受け止めるリヒテンシュタイン公爵夫人になったはずの私。このウーリヒ王国の貴族には、どう見えたのかしらね。
大物を釣り上げる予定の湖で、小物がその餌に食いついた場合どうするか。小物を排除するのも一つ、釣り上げて次の餌に利用するのも……また。
こんな考えに至るのは、周囲の環境の変化が大きい。私は今まで無力な小娘だった。前世は公爵夫人なのに蔑ろにされ、餓死や毒殺で処分されたのよ。そんな無力だった私が、両手に持て余すほどの権力を手に入れたら、多少傲慢にもなるわよね?
「あら、お父様。お久しぶりですわ」
「貴様っ、なんのつもりだ! アウエンミュラー侯爵はわしだぞ。リヒテンシュタイン公爵へ嫁いだ貴様ではない」
うふふ、なんて素敵な道化かしら。全部説明してくれるなんて。これでリヒテンシュタイン公爵家を巻き込む理由が出来た。ちらりと視線を向けた先で、ヴィルは機嫌よさそうだった。以心伝心、お互いに都合がいいと微笑み合う。
「何を仰ってるのかしら。私はアウエンミュラーで唯一正当な血筋の娘ですわ。家督を継ぐ権利は私にしかありません」
その言葉に激昂して喚き散らす父を、周囲の貴族は興味深そうに眺める。それからひそひそと噂話が始まった。当然、私が実家である侯爵家で酷い扱いをされた噂も、復活したでしょうね。前女侯爵の夫、現女侯爵の父――あの男に残るのはその肩書きだけ。
「血筋など関係ない。侯爵になるために、あんな面白くもない女と結婚してやったんだぞ!」
「その煩い口を閉じろ」
ヴィルがぴしゃりと言い放つ。だが父は侍従が呼んだヴィルの肩書きを覚えていないらしい。顔を顰めて指差し怒鳴り散らす。
「リヒテンシュタイン公爵に嫁がせたのに、浮気か? こんな薄気味悪い片目男に騙されおって!! 早く戻って子でも産め。女にできるのはその程度だろう」
ざわっと周囲が怒りや嫌悪の感情に染まる。何もしなくても墓穴を掘ってくれる父を、少しだけ見直した。こんなに馬鹿で愚かな人間に、私は知らず怯えていたのね。暴力や叱責を恐れる私を破滅へ導いた男……もう血の繋がりなんて価値がない。だって、それより大切な存在を知ったもの。
「貴族女性すべてを敵に回す発言だぞ」
「さきほど私に挨拶したけれど、そんなおつもりだったのね。お付き合いを断たせていただくわ」
周囲の貴族から睨まれ、拒絶する言葉を投げかけられ、ようやく父は気づいた。この場所で発言するほど、己の立場が悪くなることを。慌てて「そういう意味では」だの「あなたは違う」と言い訳を始めた。
断絶すると言い切ったのは、アダルベルト侯爵夫人ね。前世では、弟のどちらかがアダルベルトと婚姻したわ。
「そんな! 僕の結婚はどうなるんだ」
騒ぐ弟の片方に、にっこりと笑顔を向けた。噛み付いて来なさい。餌を撒いて待つのが、こんなに楽しいだなんて。謀略や策略を張り巡らせ、危険を掻い潜る王宮の黒い一面は、意外にも私の肌に合うみたい。
「愛しいローザ、この羽虫は俺が処分しよう。だから」
「信じてるわ、ヴィル」
愛を請う形で私の手にキスをする独身の大公と、微笑んで受け止めるリヒテンシュタイン公爵夫人になったはずの私。このウーリヒ王国の貴族には、どう見えたのかしらね。
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