60 / 112
59.幼子のようにはしゃいでしまった
しおりを挟む
ふわふわした気持ちのまま、大公家の屋敷に戻る。精霊も当然のように付いてきたけど、もう気にならなかった。馬車から降りるときにエスコートされるのは、まだ照れ臭い。経験がないせいね。
「おかえりなさいませ、お嬢様」
微笑んで迎えるアンネに抱き着き、興奮を抑えきれないまま「やったわ」と何度も繰り返す。それだけで通じた。私の立場が公式に侯爵として認めらえたこと、リヒテンシュタイン公爵に勝ったこと。話したいことが溢れる私に、アンネは黙って背中を叩いて頷いた。
「ローザ、部屋で話した方がいいんじゃないか? 今日はアンネと休むといい」
まだ口調の固いヴィルの気遣いに甘えることにした。彼と二人きりで夜を過ごすには、覚悟が足りないから。それに興奮してしまって、きっと朝まで話し続けてしまうわ。聞き上手なアンネでも根を上げそうなほど、たくさん言葉と感情が溢れていた。
「ありがとう、ヴィル。そうさせていただくわ」
「失礼いたします。旦那様」
アンネの呼び方に、執事が満足げに頷くのを見て悟る。そうよね、リヒテンシュタイン公爵家から引き取られたアンネの雇い主は、現在大公家なんだもの。旦那様で間違いないわ。私の侍女でもあるけれど。
部屋に向かう途中で思い出し、足を止めた。振り返ると、玄関ホールに入って来たヴィルと目が合う。どうしたのかと問う瞳に微笑み、駆け寄って抱き着いた。
「今日は本当にありがとうございました。必ずお礼をします」
「……お礼なら今の抱擁で十分です」
ヴィルの柔らかい声と温かい腕に、胸が熱くなる。こんな気持ちは前世も含めて覚えがないわ。すべての重石が消えて軽くなった私を、さらなる高みへ舞い上がらせようとする。何度もお礼を言って、与えてもらった部屋へ帰った。
「聞かせてください」
ドレスを緩めて着替えたところで、アンネの一言。もう止まらなかった。我慢してきた過去の愚痴も、夜会でどれだけスッキリしたか。元家族が消えて、本当に気持ちが楽になったことも。王妃様と親しくなったことまで。夜空が濃紺から紫になり、白くなって赤く染まる頃、ようやく私は落ち着いた。
寝不足の目を擦り、一緒にベッドへ横たわる。過去が清算されて、これから先へ進めるの。私とアンネの記憶を合わせて、前世を整理したいわ。私が何度死んだのか、それも確かめなくちゃ。死に方が違うのは、何度も時間を戻った影響だと思う。
精霊って、そういう事例を知ってるかも知れないから尋ねてみたい。侯爵の地位を得て離婚すれば終わり、と考えた過去の私に教えてあげたいわ。ここからが本当に忙しくなるのよって。
朝日が沁みるベッドで手を繋いで眠る。私が手を離さなければ、アンネが寝坊しても怒られることはないはず。徹夜したのは私のせいだから、叱られるなら一緒に……。
「おかえりなさいませ、お嬢様」
微笑んで迎えるアンネに抱き着き、興奮を抑えきれないまま「やったわ」と何度も繰り返す。それだけで通じた。私の立場が公式に侯爵として認めらえたこと、リヒテンシュタイン公爵に勝ったこと。話したいことが溢れる私に、アンネは黙って背中を叩いて頷いた。
「ローザ、部屋で話した方がいいんじゃないか? 今日はアンネと休むといい」
まだ口調の固いヴィルの気遣いに甘えることにした。彼と二人きりで夜を過ごすには、覚悟が足りないから。それに興奮してしまって、きっと朝まで話し続けてしまうわ。聞き上手なアンネでも根を上げそうなほど、たくさん言葉と感情が溢れていた。
「ありがとう、ヴィル。そうさせていただくわ」
「失礼いたします。旦那様」
アンネの呼び方に、執事が満足げに頷くのを見て悟る。そうよね、リヒテンシュタイン公爵家から引き取られたアンネの雇い主は、現在大公家なんだもの。旦那様で間違いないわ。私の侍女でもあるけれど。
部屋に向かう途中で思い出し、足を止めた。振り返ると、玄関ホールに入って来たヴィルと目が合う。どうしたのかと問う瞳に微笑み、駆け寄って抱き着いた。
「今日は本当にありがとうございました。必ずお礼をします」
「……お礼なら今の抱擁で十分です」
ヴィルの柔らかい声と温かい腕に、胸が熱くなる。こんな気持ちは前世も含めて覚えがないわ。すべての重石が消えて軽くなった私を、さらなる高みへ舞い上がらせようとする。何度もお礼を言って、与えてもらった部屋へ帰った。
「聞かせてください」
ドレスを緩めて着替えたところで、アンネの一言。もう止まらなかった。我慢してきた過去の愚痴も、夜会でどれだけスッキリしたか。元家族が消えて、本当に気持ちが楽になったことも。王妃様と親しくなったことまで。夜空が濃紺から紫になり、白くなって赤く染まる頃、ようやく私は落ち着いた。
寝不足の目を擦り、一緒にベッドへ横たわる。過去が清算されて、これから先へ進めるの。私とアンネの記憶を合わせて、前世を整理したいわ。私が何度死んだのか、それも確かめなくちゃ。死に方が違うのは、何度も時間を戻った影響だと思う。
精霊って、そういう事例を知ってるかも知れないから尋ねてみたい。侯爵の地位を得て離婚すれば終わり、と考えた過去の私に教えてあげたいわ。ここからが本当に忙しくなるのよって。
朝日が沁みるベッドで手を繋いで眠る。私が手を離さなければ、アンネが寝坊しても怒られることはないはず。徹夜したのは私のせいだから、叱られるなら一緒に……。
76
あなたにおすすめの小説
全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。
彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。
真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください
LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。
伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。
真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。
(他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…)
(1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)
壊れた心はそのままで ~騙したのは貴方?それとも私?~
志波 連
恋愛
バージル王国の公爵令嬢として、優しい両親と兄に慈しまれ美しい淑女に育ったリリア・サザーランドは、貴族女子学園を卒業してすぐに、ジェラルド・パーシモン侯爵令息と結婚した。
政略結婚ではあったものの、二人はお互いを信頼し愛を深めていった。
社交界でも仲睦まじい夫婦として有名だった二人は、マーガレットという娘も授かり、順風満帆な生活を送っていた。
ある日、学生時代の友人と旅行に行った先でリリアは夫が自分でない女性と、夫にそっくりな男の子、そして娘のマーガレットと仲よく食事をしている場面に遭遇する。
ショックを受けて立ち去るリリアと、追いすがるジェラルド。
一緒にいた子供は確かにジェラルドの子供だったが、これには深い事情があるようで……。
リリアの心をなんとか取り戻そうと友人に相談していた時、リリアがバルコニーから転落したという知らせが飛び込んだ。
ジェラルドとマーガレットは、リリアの心を取り戻す決心をする。
そして関係者が頭を寄せ合って、ある破天荒な計画を遂行するのだった。
王家までも巻き込んだその作戦とは……。
他サイトでも掲載中です。
コメントありがとうございます。
タグのコメディに反対意見が多かったので修正しました。
必ず完結させますので、よろしくお願いします。
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした
ましゅぺちーの
恋愛
王国の名門公爵家の出身であるエレンは幼い頃から婚約者候補である第一王子殿下に全てを捧げて生きてきた。
彼を数々の悪意から守り、彼の敵を排除した。それも全ては愛する彼のため。
しかし、王太子となった彼が最終的には選んだのはエレンではない平民の女だった。
悲しみに暮れたエレンだったが、家族や幼馴染の公爵令息に支えられて元気を取り戻していく。
その一方エレンを捨てた王太子は着々と破滅への道を進んでいた・・・
代わりはいると言われた私は出て行くと、代わりはいなかったようです
天宮有
恋愛
調合魔法を扱う私エミリーのポーションは有名で、アシェル王子との婚約が決まるほどだった。
その後、聖女キアラを婚約者にしたかったアシェルは、私に「代わりはいる」と婚約破棄を言い渡す。
元婚約者と家族が嫌になった私は、家を出ることを決意する。
代わりはいるのなら問題ないと考えていたけど、代わりはいなかったようです。
完結 やっぱり貴方は、そちらを選ぶのですね
ポチ
恋愛
卒業式も終わり
卒業のお祝い。。
パーティーの時にソレは起こった
やっぱり。。そうだったのですね、、
また、愛する人は
離れて行く
また?婚約者は、1人目だけど。。。
9番と呼ばれていた妻は執着してくる夫に別れを告げる
風見ゆうみ
恋愛
幼い頃から言いたいことを言えずに、両親の望み通りにしてきた。
結婚だってそうだった。
良い娘、良い姉、良い公爵令嬢でいようと思っていた。
夫の9番目の妻だと知るまでは――
「他の妻たちの嫉妬が酷くてね。リリララのことは9番と呼んでいるんだ」
嫉妬する側妃の嫌がらせにうんざりしていただけに、ターズ様が側近にこう言っているのを聞いた時、私は良い妻であることをやめることにした。
※最後はさくっと終わっております。
※独特の異世界の世界観であり、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる