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第三章
114.お前しか頼れない
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獲物を見つけて急降下するエイシェットの手綱をしっかり握り、捕まえた魔物を捌く手伝いをする。手足や関節が激しく痛むが、かなり慣れてきた。オレ自身が騎士や戦士のような戦い方をするなら、この痛みは致命的だった。魔法なのでイメージと短い詠唱で済むのは幸いだ。
「風、足を切り裂け」
駆ける牛らしき四つ足の動物を狙う。すぱっと足を切った風が舞い戻り、追いかけていたフェンリルが獲物に噛みついた。転がった牛の急所を噛んで仕留めたカインの横で、アベルは猪を生け捕りにして誇らしげに胸を張る。
生け捕りを混ぜるのは、吸血蝙蝠達への土産だった。死んだ動物の血を飲ませるわけにいかない。あれだけ長く巣穴を占拠してしまったのだから、詫びのひとつも必要だろう。地上に降りたエイシェットが、ついでとばかり、尻尾で小型の獲物を叩く。兎に似た動物と小型の鹿だった。
失神した鹿や兎を蔓で縛り上げ、猪の背中に括りつける。それを纏めて爪で掴んだエイシェットの背中から声を掛けた。
「先に行く。悪いが、牛は持ってきてくれ」
自分の獲物はしっかり確保したエイシェットは、ふわりと舞い上がる。左右の足に生け捕りと自分の食事を握り、彼女はご機嫌だった。ぐるると喉を鳴らしながら二周ほど旋回して洞窟へ向かう。洞窟は崖の中腹に穴を開いており、反対側は森の中に抜けていると聞いた。中で二股になり、ヴラゴが安置されたのは行き止まりの左側だ。
「……妙だな」
蝙蝠は昼間は動かない。ほとんどは洞窟などの暗がりで過ごし、睡眠時間に当てるのだ。それが洞窟の入り口であたふたしている数匹の姿が見られた。近づくドラゴンに威嚇し、攻撃を仕掛けようとする。エイシェットに対して、だ。普段なら考えられない状況に、オレは嫌な汗が背中を伝うのを感じた。
「急げ! 蝙蝠はオレが散らす。中に飛び込んでくれ!」
ぐぁああ! 大きな声で威嚇した後、エイシェットは言葉通りに突っ込んだ。蝙蝠の攻撃は鱗を通さない。風の膜を作って弾くオレとエイシェットは、無傷で洞窟に到着した。ふわりと舞うエイシェットが困惑した声を上げる。足元に落ちた蝙蝠の群れ……中にはまだ生きている者もいた。
蝙蝠の上に獲物を置くわけにいかず、ひとまず洞窟の入り口へ積んだ。まだ生きていた獲物にはトドメを差しておく。エイシェットは蝙蝠を踏まないよう、気を遣って浮いている。その背から飛び降り、すぐに人化するよう指示した。
嫌な予感どころじゃない。確実に酷い状況だった。双子が追いつくまで時間がある。
「エイシェット、双子を連れてきてくれ。獲物は諦めてもらえ」
「やだ」
「頼む! お前しか頼れない」
頼られた嬉しさや離れたくない感情、複雑な恐怖心が鬩ぎ合うが、エイシェットはオレの言葉を聞いてくれた。すぐに戻ると言い置いて飛び出す。近くにいる蝙蝠に話を聞こうとするが、ほとんどが重傷か死体だった。
まとめて癒せるか? 今の魔力が満ちた状態で、大量に魔力消費をする治癒を使うことに躊躇う。だが覚悟は出来ていたはず。最悪、痛みでのたうち回る時間ができるくらいだ。魔力はオレが生きている間に使い切ると決めた。全員一緒にこの世界で生まれ変わるのだから。
ひとつ息を吐いて、ずきずきと痛む右手を前に差し出す。魔力を洞窟の空間内に流し、治癒に集中するために目を閉じた。
「風、足を切り裂け」
駆ける牛らしき四つ足の動物を狙う。すぱっと足を切った風が舞い戻り、追いかけていたフェンリルが獲物に噛みついた。転がった牛の急所を噛んで仕留めたカインの横で、アベルは猪を生け捕りにして誇らしげに胸を張る。
生け捕りを混ぜるのは、吸血蝙蝠達への土産だった。死んだ動物の血を飲ませるわけにいかない。あれだけ長く巣穴を占拠してしまったのだから、詫びのひとつも必要だろう。地上に降りたエイシェットが、ついでとばかり、尻尾で小型の獲物を叩く。兎に似た動物と小型の鹿だった。
失神した鹿や兎を蔓で縛り上げ、猪の背中に括りつける。それを纏めて爪で掴んだエイシェットの背中から声を掛けた。
「先に行く。悪いが、牛は持ってきてくれ」
自分の獲物はしっかり確保したエイシェットは、ふわりと舞い上がる。左右の足に生け捕りと自分の食事を握り、彼女はご機嫌だった。ぐるると喉を鳴らしながら二周ほど旋回して洞窟へ向かう。洞窟は崖の中腹に穴を開いており、反対側は森の中に抜けていると聞いた。中で二股になり、ヴラゴが安置されたのは行き止まりの左側だ。
「……妙だな」
蝙蝠は昼間は動かない。ほとんどは洞窟などの暗がりで過ごし、睡眠時間に当てるのだ。それが洞窟の入り口であたふたしている数匹の姿が見られた。近づくドラゴンに威嚇し、攻撃を仕掛けようとする。エイシェットに対して、だ。普段なら考えられない状況に、オレは嫌な汗が背中を伝うのを感じた。
「急げ! 蝙蝠はオレが散らす。中に飛び込んでくれ!」
ぐぁああ! 大きな声で威嚇した後、エイシェットは言葉通りに突っ込んだ。蝙蝠の攻撃は鱗を通さない。風の膜を作って弾くオレとエイシェットは、無傷で洞窟に到着した。ふわりと舞うエイシェットが困惑した声を上げる。足元に落ちた蝙蝠の群れ……中にはまだ生きている者もいた。
蝙蝠の上に獲物を置くわけにいかず、ひとまず洞窟の入り口へ積んだ。まだ生きていた獲物にはトドメを差しておく。エイシェットは蝙蝠を踏まないよう、気を遣って浮いている。その背から飛び降り、すぐに人化するよう指示した。
嫌な予感どころじゃない。確実に酷い状況だった。双子が追いつくまで時間がある。
「エイシェット、双子を連れてきてくれ。獲物は諦めてもらえ」
「やだ」
「頼む! お前しか頼れない」
頼られた嬉しさや離れたくない感情、複雑な恐怖心が鬩ぎ合うが、エイシェットはオレの言葉を聞いてくれた。すぐに戻ると言い置いて飛び出す。近くにいる蝙蝠に話を聞こうとするが、ほとんどが重傷か死体だった。
まとめて癒せるか? 今の魔力が満ちた状態で、大量に魔力消費をする治癒を使うことに躊躇う。だが覚悟は出来ていたはず。最悪、痛みでのたうち回る時間ができるくらいだ。魔力はオレが生きている間に使い切ると決めた。全員一緒にこの世界で生まれ変わるのだから。
ひとつ息を吐いて、ずきずきと痛む右手を前に差し出す。魔力を洞窟の空間内に流し、治癒に集中するために目を閉じた。
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