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第三章
126.魔王復活の狼煙を
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魔族が人質に取られた今、彼らに脱出を促す最良な方法を思いついた。犠牲者が出るかも知れないが、これ以上の案が出て来ない。魔王だけが持つとされ、オレは想像力でカバーした魔法だ。
大地を揺らす。地震がある日本で育ったから、オレには簡単に仕組みが想像できたし再現できた。この魔法は膨大な魔力量を吸い取られる上に、魔術では不可能らしい。オレの魔力はよく知る魔族にとって、別の魔力が引き起こす地震は魔王復活の兆しだった。
向かい合ってがっちり手を握り、作戦の成功を誓う。
「魔力は供給しようか?」
「いらん」
弱ってるくせに、そんな言葉で茶化すと首を横に振る。黒髪がさらさらと揺れて、精悍な顔立ちがわずかに歪んだ。魔力が揺らぐように立ち上る。陽炎が近いだろうか。通してみる向こう側がゆらりと現実感を失い、そして大地へ触れる手のひらを通して注がれていく。
ぐらりと全体が揺れた。続いて小刻みに揺れた後でどんと縦に落ちる揺れが襲う。咄嗟に足を踏ん張った物の、カッコつけずに座ってりゃ良かったと自嘲した。エイシェットは平然としているが、よく見ると少し浮いている。それはズルだぞ。
長い揺れが落ち着くと、呼応するように魔力の高まりを感じた。己の魔力を狼煙代わりに返事をしたように思える。にやりと笑った魔王イヴリースが長い髪を掴んで、乱暴に首の長さで切り捨てた。
「何を?」
「同一人物だと分からなくする方が、混乱を招くであろう?」
顔は同じじゃねえかと指摘する前に、彼は己の体を魔力で包んだ。するすると身長が縮んで10歳ほど若返って見える。今ならオレより年下だと言っても通じるだろう。
「魔王って、規格外だな」
蘇った挙句、年齢操作も出来るのかよ。羨むより呆れた。イヴリースの説明によれば、ずっと死んだことはないのらしい。何度も年老いては新しい体に移動する方法を使用したため、首を刎ねられても別の体で蘇る予定だった。あっさりオレに首を斬らせた理由がわかり、安心するより脱力した。
「くそ、あんたを殺した後、オレは本気で悔やんで泣いたんだぞ。心を痛めた5年間を返せ」
「お前は我が首を落としたくせに、文句を言う気か?」
ずばっと痛いところを突いてくる。でも彼の言葉に棘はなくて、笑ってしまった。そうだ、魔族はいつもこんな感じだよ。口は悪いが悪気はない。気のいい連中ばかりで、常に本気で接してくれた。憎むときも受け入れる時も、表裏がない。王侯貴族みたいにオレを騙そうとしなかった。
大笑いするオレとイヴリースを交互を見た後、エイシェットが頬を膨らませて突進してきた。受け止め損ねて尻餅をつく。痛いが我慢だ。
「どうした?」
「取られた」
「浮気じゃないからな」
銀髪を撫でて先回りすると、エイシェットは「わかってる」と言いながら唇を尖らせる。愛らしい番の様子に目を細めると、若返った青年姿のイヴリースが肩を竦めた。
「そういうのは、戦いが終わってからにしてくれ」
大地を揺らす。地震がある日本で育ったから、オレには簡単に仕組みが想像できたし再現できた。この魔法は膨大な魔力量を吸い取られる上に、魔術では不可能らしい。オレの魔力はよく知る魔族にとって、別の魔力が引き起こす地震は魔王復活の兆しだった。
向かい合ってがっちり手を握り、作戦の成功を誓う。
「魔力は供給しようか?」
「いらん」
弱ってるくせに、そんな言葉で茶化すと首を横に振る。黒髪がさらさらと揺れて、精悍な顔立ちがわずかに歪んだ。魔力が揺らぐように立ち上る。陽炎が近いだろうか。通してみる向こう側がゆらりと現実感を失い、そして大地へ触れる手のひらを通して注がれていく。
ぐらりと全体が揺れた。続いて小刻みに揺れた後でどんと縦に落ちる揺れが襲う。咄嗟に足を踏ん張った物の、カッコつけずに座ってりゃ良かったと自嘲した。エイシェットは平然としているが、よく見ると少し浮いている。それはズルだぞ。
長い揺れが落ち着くと、呼応するように魔力の高まりを感じた。己の魔力を狼煙代わりに返事をしたように思える。にやりと笑った魔王イヴリースが長い髪を掴んで、乱暴に首の長さで切り捨てた。
「何を?」
「同一人物だと分からなくする方が、混乱を招くであろう?」
顔は同じじゃねえかと指摘する前に、彼は己の体を魔力で包んだ。するすると身長が縮んで10歳ほど若返って見える。今ならオレより年下だと言っても通じるだろう。
「魔王って、規格外だな」
蘇った挙句、年齢操作も出来るのかよ。羨むより呆れた。イヴリースの説明によれば、ずっと死んだことはないのらしい。何度も年老いては新しい体に移動する方法を使用したため、首を刎ねられても別の体で蘇る予定だった。あっさりオレに首を斬らせた理由がわかり、安心するより脱力した。
「くそ、あんたを殺した後、オレは本気で悔やんで泣いたんだぞ。心を痛めた5年間を返せ」
「お前は我が首を落としたくせに、文句を言う気か?」
ずばっと痛いところを突いてくる。でも彼の言葉に棘はなくて、笑ってしまった。そうだ、魔族はいつもこんな感じだよ。口は悪いが悪気はない。気のいい連中ばかりで、常に本気で接してくれた。憎むときも受け入れる時も、表裏がない。王侯貴族みたいにオレを騙そうとしなかった。
大笑いするオレとイヴリースを交互を見た後、エイシェットが頬を膨らませて突進してきた。受け止め損ねて尻餅をつく。痛いが我慢だ。
「どうした?」
「取られた」
「浮気じゃないからな」
銀髪を撫でて先回りすると、エイシェットは「わかってる」と言いながら唇を尖らせる。愛らしい番の様子に目を細めると、若返った青年姿のイヴリースが肩を竦めた。
「そういうのは、戦いが終わってからにしてくれ」
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