127 / 135
第三章
127.召喚に使われなかった魔力
しおりを挟む
懐かしい気配がする。イヴリースが、遠方で揺らめく大きな魔力に目を細めた。あれは……カインとアベルか。双子の魔力はほぼ同じ色で、僅かに濃淡が違う。そんな印象だった。同時に混ぜて使用すると、どちらの魔力か区別が付かなくなる。
「フェンリルの双子だよ」
「足元で遊んでいた、あの子らか! なんと、立派に成長したことよ」
新高校生に見える年齢で、その口調はおかしいだろ。それに誰だかバレる。
「イヴリース、口調と名前は直しといた方がいいんじゃねえ?」
「名前は問題ない。ずっと同じ名を使い続けているからな」
代々イヴリースなのか? それでいいのか、中身が同じだから問題ないとした可能性もあるけど。イヴリースの説明では、魔王は生まれながらに魔王であり、先代までの記憶を引き継ぐ者と認識されてきた。実際に同一人物だと知っているのは、各種族でも数えるほどだとか。
「隠したわけではないが」
いつの間にか話が混じって、こういう認識に落ち着いていた。苦笑いする魔王や周囲が、まあいいかと考えた結果だろう。元が創造主である神の一部なら、死なないのも理解できる。
「なあ、女神の魔術なんだけど……法則や制限が多すぎるよな」
「この世界の理は我が創った。組み上げる基礎が、女神と違うのであろう」
あれか。パソコンだ。OSが違えば、アプリの開発も変わってくる。一番下のDOS部分が同じだから機能しているが、無理やり変換したり別のコマンドに置き換えるから、不具合が起きやすい。
「気になってたんだ。オレの召喚方法をリリィが人間に伝授したとして、発動時の魔力はこちら側が供給する。その後の道を開いてオレを呼び寄せ変換する魔力は……オレの家族や友人の生命力を使った」
一瞬だけ痛みが走った気がして、胸を押さえた。深呼吸して、なんでもない顔を作って続ける。
「ならば、どうして日本という国全体を消滅させて魔力にする必要があった? 実際にこの世界で、オレは魔術を使えなかった。あんたと戦うのに使えない魔力だ。持ってきた意味は? 女神の復活にも使ってないんだろ」
手元に残っている魔力の一部が利用された可能性はあるが、ほとんどが使用されていない。消費しない魔力をわざわざ異世界へ持ってきた理由は何だ? オレの疑問に、イヴリースは目を伏せた。
迷うような仕草の後、再び地面に胡座をかく。説明してくれる気はあるみたいだな。正面に胡座をかいたオレの膝に、エイシェットが横向きに座り首に手を回す。顔を上げたイヴリースがふっと笑った。
「緊張感の欠片もないな」
「仕方ない。番だぞ?」
エイシェットが嬉しそうに頬を擦り寄せる。それを抱き寄せながら、異常な軽さの理由に気づいた。体重をかけないよう、少し浮いている。触れるぎりぎりの位置で調整された魔法の見事さに、思わず頬が緩んだ。
「そなたの召喚に使われた魔力は膨大だが、殺された異世界の人間の一割ほどで足りていた。残りは……女神を維持するために消費され続けている」
緩んだ気を引き締めるように、イヴリースの声は冷たかった。
「フェンリルの双子だよ」
「足元で遊んでいた、あの子らか! なんと、立派に成長したことよ」
新高校生に見える年齢で、その口調はおかしいだろ。それに誰だかバレる。
「イヴリース、口調と名前は直しといた方がいいんじゃねえ?」
「名前は問題ない。ずっと同じ名を使い続けているからな」
代々イヴリースなのか? それでいいのか、中身が同じだから問題ないとした可能性もあるけど。イヴリースの説明では、魔王は生まれながらに魔王であり、先代までの記憶を引き継ぐ者と認識されてきた。実際に同一人物だと知っているのは、各種族でも数えるほどだとか。
「隠したわけではないが」
いつの間にか話が混じって、こういう認識に落ち着いていた。苦笑いする魔王や周囲が、まあいいかと考えた結果だろう。元が創造主である神の一部なら、死なないのも理解できる。
「なあ、女神の魔術なんだけど……法則や制限が多すぎるよな」
「この世界の理は我が創った。組み上げる基礎が、女神と違うのであろう」
あれか。パソコンだ。OSが違えば、アプリの開発も変わってくる。一番下のDOS部分が同じだから機能しているが、無理やり変換したり別のコマンドに置き換えるから、不具合が起きやすい。
「気になってたんだ。オレの召喚方法をリリィが人間に伝授したとして、発動時の魔力はこちら側が供給する。その後の道を開いてオレを呼び寄せ変換する魔力は……オレの家族や友人の生命力を使った」
一瞬だけ痛みが走った気がして、胸を押さえた。深呼吸して、なんでもない顔を作って続ける。
「ならば、どうして日本という国全体を消滅させて魔力にする必要があった? 実際にこの世界で、オレは魔術を使えなかった。あんたと戦うのに使えない魔力だ。持ってきた意味は? 女神の復活にも使ってないんだろ」
手元に残っている魔力の一部が利用された可能性はあるが、ほとんどが使用されていない。消費しない魔力をわざわざ異世界へ持ってきた理由は何だ? オレの疑問に、イヴリースは目を伏せた。
迷うような仕草の後、再び地面に胡座をかく。説明してくれる気はあるみたいだな。正面に胡座をかいたオレの膝に、エイシェットが横向きに座り首に手を回す。顔を上げたイヴリースがふっと笑った。
「緊張感の欠片もないな」
「仕方ない。番だぞ?」
エイシェットが嬉しそうに頬を擦り寄せる。それを抱き寄せながら、異常な軽さの理由に気づいた。体重をかけないよう、少し浮いている。触れるぎりぎりの位置で調整された魔法の見事さに、思わず頬が緩んだ。
「そなたの召喚に使われた魔力は膨大だが、殺された異世界の人間の一割ほどで足りていた。残りは……女神を維持するために消費され続けている」
緩んだ気を引き締めるように、イヴリースの声は冷たかった。
11
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる