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第2章 学校のお披露目が近づいて
19.褒め殺しで仕事が捗る執務室
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新たに創立する学校の開校日が近づき、シトリーやルーサルカが忙しく駆け回る。その補佐に入ったルーシアも休日返上の忙しさだった。レライエとアムドゥスキアスは各地へ飛び回り、入学する生徒の準備を確認していく。大公女がこの忙しさとなれば、上司の大公達も当然仕事に追われていた。
大公女達から上がる報告書や必要経費の申請を確認し、手早く処理した。そこにルシファーが署名し、イヴを抱くリリスが押印する。いつの間にか分業しているが、この点は特に問題ないのでアスタロト達も口を出さなかった。魔王妃リリスが隣にいる時のルシファーのやる気は凄いのだ。勢いをそぐ必要はない。
魔王一家の温泉旅行計画も延期が決定した。開校関連の行事が終わったら、数日の休暇を与えると伝えた時のルシファーは嬉しそうだった。今は大人しく仕事をこなしている。やれば出来る癖に手を抜いたりサボる魔王は、珍しく頑張っていた。
「すごいわ、ルシファー。さすがはイヴのパパね」
「っ! そうだろう。それに可愛くて綺麗なリリスの旦那さんだからな」
「それはもちろんよ」
リリスが手放しで褒める。その後ろでアスタロトがそっと頷いた。これは策士アスタロトによる計画で、リリスが賛同したことで実現している。溜まる書類の所為でイヴと過ごす時間が減ると嘆く魔王を働かせることは、友人である大公女達を助ける行為だった。
「ルシファー、これ……優先で見てくれる?」
「どれだ? ああ、緊急扱いだな。署名するから押印してくれ」
「ふふっ、凄くカッコいいわ」
照れながら署名を終えた書類を回す。リリスが押印した途端、横からアスタロトが回収した。普段なら面倒だと逃げ回るルシファーが机に向かっている間に、とにかく数をこなしてもらう作戦なのだ。リリスに悪気はなく、ただ「友人の助けになる」と言われて素直に応じただけ。
気づけばイヴはすやすやと眠っていた。
「ルシファー、イヴをベッドに寝かせるわね」
「ん? オレが抱いてるぞ。この位の頃は寝かせると泣きだすんだ」
リリスがそうだった。懐かしみながら、己の膝の上にイヴを横たえる。落ちないよう結界で作った揺籃におくるみごと寝かせた。少しむずがるが、すぐにまた寝息が聞こえてくる。
「慣れてるのね」
「リリスの時は眠らずに起きてたこともあったぞ。夜泣きが凄くてな、大変だが楽しかった」
本当に幸せそうに呟くルシファーの純白の髪がくいっと引っ張られる。素直に近づいた魔王の唇に、リリスはキスをした。触れるだけの軽い、挨拶のような口付けだ。膝の上のイヴを咄嗟に左手で支えたルシファーは目を見開き、アスタロトはさりげなく後ろを向いた。
書類整理をする側近が目を逸らしたのを確かめると、離れた唇にもう一度触れる。啄むように重ねてから「ふふっ」と笑うリリスが「もう一度」と小声で強請った。ささやかで嬉しい願いはすぐに叶えられ、何もなかったように離れる。
もぞもぞする膝に気づいたルシファーが視線を向けると、イヴは大きな瞳をぱちりと開いていた。親のキスシーンを間近で目撃した赤子に苦笑し、銀の瞳を隠すように手で覆う。
残った書類はさほど多くない。急いで片付け、アスタロトを部屋から追い出した。護衛のヤンも執務室に残し、さっさと自室に引っ込む。イヴを抱いたリリスを膝の上に乗せ、ルシファーはご機嫌だった。
「終わったら温泉でゆっくりしよう」
「いいわね。でもイヴのお披露目があるって聞いたわ」
「誰に?」
「ベルちゃんだったかしら」
知らない間に次の行事が増えていた。温泉旅行は予定通り、数日で手短に過ごすしかなさそうだ。本当は月単位で遊ぶつもりだったが、我が子のお披露目が優先だ。頷いたところで、ルシファーが首をかしげる。
「魔族の子どものお披露目って、5歳じゃなかったっけ?」
大公女達から上がる報告書や必要経費の申請を確認し、手早く処理した。そこにルシファーが署名し、イヴを抱くリリスが押印する。いつの間にか分業しているが、この点は特に問題ないのでアスタロト達も口を出さなかった。魔王妃リリスが隣にいる時のルシファーのやる気は凄いのだ。勢いをそぐ必要はない。
魔王一家の温泉旅行計画も延期が決定した。開校関連の行事が終わったら、数日の休暇を与えると伝えた時のルシファーは嬉しそうだった。今は大人しく仕事をこなしている。やれば出来る癖に手を抜いたりサボる魔王は、珍しく頑張っていた。
「すごいわ、ルシファー。さすがはイヴのパパね」
「っ! そうだろう。それに可愛くて綺麗なリリスの旦那さんだからな」
「それはもちろんよ」
リリスが手放しで褒める。その後ろでアスタロトがそっと頷いた。これは策士アスタロトによる計画で、リリスが賛同したことで実現している。溜まる書類の所為でイヴと過ごす時間が減ると嘆く魔王を働かせることは、友人である大公女達を助ける行為だった。
「ルシファー、これ……優先で見てくれる?」
「どれだ? ああ、緊急扱いだな。署名するから押印してくれ」
「ふふっ、凄くカッコいいわ」
照れながら署名を終えた書類を回す。リリスが押印した途端、横からアスタロトが回収した。普段なら面倒だと逃げ回るルシファーが机に向かっている間に、とにかく数をこなしてもらう作戦なのだ。リリスに悪気はなく、ただ「友人の助けになる」と言われて素直に応じただけ。
気づけばイヴはすやすやと眠っていた。
「ルシファー、イヴをベッドに寝かせるわね」
「ん? オレが抱いてるぞ。この位の頃は寝かせると泣きだすんだ」
リリスがそうだった。懐かしみながら、己の膝の上にイヴを横たえる。落ちないよう結界で作った揺籃におくるみごと寝かせた。少しむずがるが、すぐにまた寝息が聞こえてくる。
「慣れてるのね」
「リリスの時は眠らずに起きてたこともあったぞ。夜泣きが凄くてな、大変だが楽しかった」
本当に幸せそうに呟くルシファーの純白の髪がくいっと引っ張られる。素直に近づいた魔王の唇に、リリスはキスをした。触れるだけの軽い、挨拶のような口付けだ。膝の上のイヴを咄嗟に左手で支えたルシファーは目を見開き、アスタロトはさりげなく後ろを向いた。
書類整理をする側近が目を逸らしたのを確かめると、離れた唇にもう一度触れる。啄むように重ねてから「ふふっ」と笑うリリスが「もう一度」と小声で強請った。ささやかで嬉しい願いはすぐに叶えられ、何もなかったように離れる。
もぞもぞする膝に気づいたルシファーが視線を向けると、イヴは大きな瞳をぱちりと開いていた。親のキスシーンを間近で目撃した赤子に苦笑し、銀の瞳を隠すように手で覆う。
残った書類はさほど多くない。急いで片付け、アスタロトを部屋から追い出した。護衛のヤンも執務室に残し、さっさと自室に引っ込む。イヴを抱いたリリスを膝の上に乗せ、ルシファーはご機嫌だった。
「終わったら温泉でゆっくりしよう」
「いいわね。でもイヴのお披露目があるって聞いたわ」
「誰に?」
「ベルちゃんだったかしら」
知らない間に次の行事が増えていた。温泉旅行は予定通り、数日で手短に過ごすしかなさそうだ。本当は月単位で遊ぶつもりだったが、我が子のお披露目が優先だ。頷いたところで、ルシファーが首をかしげる。
「魔族の子どものお披露目って、5歳じゃなかったっけ?」
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