21 / 530
第2章 学校のお披露目が近づいて
20.飾り立てることは大粒の宝石と同じ
しおりを挟む
魔族の子どものお披露目は5歳前後である。その理由に、赤子の生存率が低いことが挙げられた。5歳頃から生存率が高まるため、即位記念祭に合わせて、子ども達の年齢を四捨五入してお祝いするのが恒例だった。回数が限られるお祝いの席は、3歳の子もいれば8歳になった子もいる。
リリス自身も4歳の時に、通っていた保育園を会場とした祝いを受けていた。
「今回はルシファーの子どもだから、顔見せですって」
言われた通りに伝えるリリスは、我が子の頬を撫でた。まだ手のひらで包めるほど小さな頬は温かい。ぷにぷにと手触りを楽しむリリスが笑う。親の顔を見て笑う月齢ではないが、銀の大きな瞳は確かに母親のリリスを見つめていた。
「顔見せ? そんな慣習はないが、まあいいか」
行事が好きな民は喜ぶだろう。各地から駆け付ける魔族も転移魔法陣があるため、移動が容易だ。ここ2年ほど祭りもなかったし、まあいいか。深く考えずにルシファーは頷いた。
以前は不定期に人族が勇者と称して襲ってきたが、そういった騒動もなくなった。魔族は基本的にお祭り好きで、屋台や行商も多い。公共事業もちょうど一段落したので、ここらで金を使う理由が必要だった。税を集めるだけで散財しない執政者として罵られるわけにいかない。
大公が認める理由が出来たなら、それに乗っかって騒ぐのが正しい。開校日に「顔見せイベント」を告知すればいいか。
「それなら、可愛いイヴをさらに飾らないといけないな」
「私はピンクがいいわ」
「宝石類は重いか? でも飾りたいから……砕くのも有りだな」
「なしです」
ぼそっと即答で否定される。私室に移動した途端、思わぬ反論がありルシファーは眉を寄せた。膝に乗せた嫁リリスと我が子イヴを守るような態勢で振り返る。
「ベール?」
「宝石を砕くのはおやめください。イメージが悪いです」
遠回しに成り上がり者のようで感じが悪いと指摘された。むっとした顔でルシファーが「じゃあどうするんだよ」と意見を求める。
「イヴリース姫はお可愛らしいのですから、素のままでよいでしょう?」
一般的な社交辞令に近い言葉だが、ベールの提案にルシファーは顔を綻ばせた。視線を向けた先に、愛らしく美しい妻リリス。穏やかな笑みを浮かべた彼女の腕に抱かれ、可愛い愛娘イヴが大きな瞳で見上げてくる。
「可愛い……」
威厳も何もない魔王の本音に、リリスがにっこり笑う。釣られたようにイヴの顔も緩んだ。まるで笑ったようなタイミングと表情に、めろめろの魔王が抱き着いた。苦しいくらい抱き締めて頬ずりし、機嫌よくリリスの黒髪にキスを降らせる。
同じ黒髪のイヴは感染予防で結界を重ねているため、その上からのキスで落ち着いた。
「衣装に宝石を散りばめたらどうか」
どうしても飾りつけと言うと宝石から離れないルシファーに、ベールは呻いた。この厄介な思い込みを生んだ原因に心当たりがある。それも痛いほどに、自分の胸を突き刺す。魔王らしくを目標に育てたアスタロトとベールが、まだ若いルシファーに威厳を持たせるため飾り立てたことがある。
動けない重いと不満を漏らすが、ルシファーは顔がいい。魔力量を表す純白の外見も手伝い、色がついた宝石が映える存在だった。必要以上に飾り物を乗せ、絡め、嵌めた。その結果が、この勘違いである。祭りなど目立つ催事では、必ず宝石をぎらぎらに飾るものと覚えてしまった。
今まではそれで弊害はなかった。飾り立てる対象はルシファー本人だけなのだから。側近は主君より目立たないためと理由付けし、地味にしていたから余計に……隣に立つ妻リリスを飾り立てることに目覚めた。それでも制御しながら誤魔化してきたが、ここに娘イヴリースが加わると……。
「一度方向性を検討した方がいいでしょうか」
過去の過ちを認めるのは勇気がいる。それでも今後の弊害と天秤にかけた上で、幹部会議の招集を決めたベールであった。
リリス自身も4歳の時に、通っていた保育園を会場とした祝いを受けていた。
「今回はルシファーの子どもだから、顔見せですって」
言われた通りに伝えるリリスは、我が子の頬を撫でた。まだ手のひらで包めるほど小さな頬は温かい。ぷにぷにと手触りを楽しむリリスが笑う。親の顔を見て笑う月齢ではないが、銀の大きな瞳は確かに母親のリリスを見つめていた。
「顔見せ? そんな慣習はないが、まあいいか」
行事が好きな民は喜ぶだろう。各地から駆け付ける魔族も転移魔法陣があるため、移動が容易だ。ここ2年ほど祭りもなかったし、まあいいか。深く考えずにルシファーは頷いた。
以前は不定期に人族が勇者と称して襲ってきたが、そういった騒動もなくなった。魔族は基本的にお祭り好きで、屋台や行商も多い。公共事業もちょうど一段落したので、ここらで金を使う理由が必要だった。税を集めるだけで散財しない執政者として罵られるわけにいかない。
大公が認める理由が出来たなら、それに乗っかって騒ぐのが正しい。開校日に「顔見せイベント」を告知すればいいか。
「それなら、可愛いイヴをさらに飾らないといけないな」
「私はピンクがいいわ」
「宝石類は重いか? でも飾りたいから……砕くのも有りだな」
「なしです」
ぼそっと即答で否定される。私室に移動した途端、思わぬ反論がありルシファーは眉を寄せた。膝に乗せた嫁リリスと我が子イヴを守るような態勢で振り返る。
「ベール?」
「宝石を砕くのはおやめください。イメージが悪いです」
遠回しに成り上がり者のようで感じが悪いと指摘された。むっとした顔でルシファーが「じゃあどうするんだよ」と意見を求める。
「イヴリース姫はお可愛らしいのですから、素のままでよいでしょう?」
一般的な社交辞令に近い言葉だが、ベールの提案にルシファーは顔を綻ばせた。視線を向けた先に、愛らしく美しい妻リリス。穏やかな笑みを浮かべた彼女の腕に抱かれ、可愛い愛娘イヴが大きな瞳で見上げてくる。
「可愛い……」
威厳も何もない魔王の本音に、リリスがにっこり笑う。釣られたようにイヴの顔も緩んだ。まるで笑ったようなタイミングと表情に、めろめろの魔王が抱き着いた。苦しいくらい抱き締めて頬ずりし、機嫌よくリリスの黒髪にキスを降らせる。
同じ黒髪のイヴは感染予防で結界を重ねているため、その上からのキスで落ち着いた。
「衣装に宝石を散りばめたらどうか」
どうしても飾りつけと言うと宝石から離れないルシファーに、ベールは呻いた。この厄介な思い込みを生んだ原因に心当たりがある。それも痛いほどに、自分の胸を突き刺す。魔王らしくを目標に育てたアスタロトとベールが、まだ若いルシファーに威厳を持たせるため飾り立てたことがある。
動けない重いと不満を漏らすが、ルシファーは顔がいい。魔力量を表す純白の外見も手伝い、色がついた宝石が映える存在だった。必要以上に飾り物を乗せ、絡め、嵌めた。その結果が、この勘違いである。祭りなど目立つ催事では、必ず宝石をぎらぎらに飾るものと覚えてしまった。
今まではそれで弊害はなかった。飾り立てる対象はルシファー本人だけなのだから。側近は主君より目立たないためと理由付けし、地味にしていたから余計に……隣に立つ妻リリスを飾り立てることに目覚めた。それでも制御しながら誤魔化してきたが、ここに娘イヴリースが加わると……。
「一度方向性を検討した方がいいでしょうか」
過去の過ちを認めるのは勇気がいる。それでも今後の弊害と天秤にかけた上で、幹部会議の招集を決めたベールであった。
51
あなたにおすすめの小説
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~
柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。
家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。
そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。
というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。
けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。
そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。
ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。
それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。
そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。
一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。
これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。
他サイトでも掲載中。
ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい
空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。
孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。
竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。
火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜?
いやいや、ないでしょ……。
【お知らせ】2018/2/27 完結しました。
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!
昭和生まれお局様は、異世界転生いたしましたとさ
蒼あかり
ファンタジー
局田舞子(つぼたまいこ)43歳、独身。
とある事故をきっかけに、彼女は異世界へと転生することになった。
どうしてこんなことになったのか、訳もわからぬままに彼女は異世界に一人放り込まれ、辛い日々を過ごしながら苦悩する毎日......。
など送ることもなく、なんとなく順応しながら、それなりの日々を送って行くのでありました。
そんな彼女の異世界生活と、ほんの少しのラブロマンスっぽい何かを織り交ぜながらすすむ、そんな彼女の生活を覗いてみませんか?
毎日投稿はできないと思います。気長に更新をお待ちください。
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
【完結】追放された元聖女は、冒険者として自由に生活します!
夏灯みかん
ファンタジー
生まれながらに強い魔力を持つ少女レイラは、聖女として大神殿の小部屋で、祈るだけの生活を送ってきた。
けれど王太子に「身元不明の孤児だから」と婚約を破棄され、国外追放されてしまう。
「……え、もうお肉食べていいの? 白じゃない服着てもいいの?」
追放の道中で出会った冒険者のステファンと狼男ライガに拾われ、レイラは初めて外の世界で暮らし始める。
冒険者としての仕事、初めてのカフェでのお茶会。
隣国での生活の中で、レイラは少しずつ自分の居場所を作っていく。
一方、レイラが去った王国では魔物が発生し、大神殿の大司教は彼女を取り戻そうと動き出していた。
――私はなんなの? どこから来たの?
これは、救う存在として利用されてきた少女が、「自分のこれから」を選び直していく物語。
※表紙イラストはレイラを月塚彩様に描いてもらいました。
【2025.09.02 全体的にリライトしたものを、再度公開いたします。】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる