【完結】獅子の威を借る子猫は爪を研ぐ

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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100.貴族の数が多すぎて

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 広間に集まった貴族達は乾杯を済ませると、行儀正しく皇帝陛下に拝謁の列を作った。爵位や力関係を確認しながら、自分達で順番を決めて並ぶ。多少のいざこざはあったが、すぐに別の貴族が介入して収めていた。昨年の祝賀会と違い、今回はほぼすべての貴族が揃っている。行列は長かった。

「いい子だよね」

 うんうんと頷くシェンは、隣の玉座でのんびり果物を摘んでるけど……エリュは驚いて手を叩いた。

「すごい! 皆、立派なんだね」

 その言葉になぜか照れる大人達。ナイジェルやリンカは笑って、玉座のある壇上に用意された席に腰掛けた。一緒に挨拶を受けてしまえば、一度で終わる。ベリアルなりの策だった。

 シェンがいる場所なら、余計なちょっかいを掛けられる心配はない。揉めてもシェンが解決するだろう。ある意味丸投げなのだが、シェン自身が引き受ける気なので丸く収まった。

 公爵家から始まり、順番に名乗っていく。エリュは侯爵の途中から分からなくなり、泣きそうな顔になり慰められた。後日、貴族名鑑を見て顔を確認するから大丈夫。今日は挨拶してくれてありがとう、だけでいい。シェンやベリアルに説得され、現在は笑顔で挨拶を受けていた。

 一度に覚えるには、あまりに人数が多く種族が複雑すぎる。王族として教育を受けたナイジェルやリンカさえ、途中で匙を投げた。貴族の数自体が多いのだ。そもそも人族は肌や髪の色こそ違え単一民族だし、妖精族はほぼ同じ外見をしている。貴族の数を増やす理由がなかった。

 魔族は魔獣だけでも数十種類と言われ、各種族から代表を出している。それが貴族という形になれば、暗記するのも一苦労だった。そのため、他国にはない風習がある。

 貴族同士は、会うたびに毎回家名と種族を名乗ること。この慣習は皇族に対しても適用されるが、逆に皇族は毎回名乗る必要がない。人数が少ないので、相手側が確実に覚えてくれるからだった。ベリアルやリリンは側近なので、名乗りが免除される。

「へえ、考えられてるな」

「というより、苦肉の策だよね。実際、僕も覚えられなくて名前を呼ばないまま、会話を終了させた過去があるから」

 顔は覚えていて、貴族なのだと判断したが、会話が終わるまでに名前が出てこなかった。思い出せたのは数日後という、あまりにお粗末な状況だ。その後、シェーシャが鶴の一声でルールを定めた。

「失敗は成功の母という。それもまた成功例のひとつだろう」

 リンカはふふっと笑い、うちの国にも取り入れようかなと呟く。何か考えがあるようだ。対してナイジェルは羨ましそうだった。

「人族もその習慣を取り入れてくれたら、名鑑を暗記しなくて済むんだよな。自国はまだしも、他国の貴族なんか無理だよ」

 苦労して覚えている最中のようだ。王族同士は顔を覚える必要はあるが、他国の貴族となれば「やらなくてもいいじゃん」とナイジェルが嘆くのも当然だった。魔族や妖精族と違って、国が複数あるのだ。

 今回はプレゼント禁止令が出ていたので、それぞれに挨拶だけで済んだ。事前の根回しって役立つんだな。ぼんやりとそんなことを考えながら、手を繋いだエリュの楽しそうな様子にシェンは目を細めた。
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