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17.誰を選ぶかですって?

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 誰も選ばないのに、全員諦めてくれない。どれだけ強力な魅了魔法でしょうか――現実逃避したい。魔法なんて生まれてから使えたことないじゃない、と自分に突っ込んだ。どっと疲れたが、まだ昼過ぎなのですよ。お客様はまだ控えていますので、先に休憩いたしましょう。

 食堂へ戻り、スープから順番に手を付けます。サラダ、パン、メインはお魚ですね。姿のまま香草焼きにされた魚を、手際よくばらして口に放り込みました。この辺はもう身に着いたマナーなので、考えるより先に手が動くのは助かります。こんな時にナイフやフォークの順番に悩んでいたら、気が休まりませんもの。

「セラはずっとお嫁に行かず、僕と暮らせばいいよ」

 お兄様、妙なフラグを立てるのはおやめください。あなたも一応、一応は攻略対象なのですから。ゲーム補正が働いたらどうするんですか。血が繋がった双子なので、結婚する心配がないのは安心できますが。ゲームの中で多少ヤンデレ発言があったのが気になります。

「お嫁には行きますわ。お相手はゆっくり選びますけれど」

 べきっとフラグを勢いよく蹴倒して、食後の紅茶を楽しみます。不安そうなお母様が頷いておられました。息子が娘に固執していれば、それは不安でしょう。なぜかお父様はしょげてますね。まさかお兄様と同じ意見ではありませんよね?

 胡乱気な目を向ける私をよそに、お母様はデザートの桃を剥きながら尋ねました。というか、丸ごと出たんですの? 私の前の桃は剥いてありますけれど。刃物を持ったお母様は迫力満点でした。

「先ほどの方々の中に、よい方はいらっしゃらないの?」

「アーサー王子殿下は論外です」

「「賛成」」

 我が家の男性2名の賛同を得ました。お母様も声はあげないものの、反論はないようです。まあ婚約解消した翌日によりを戻しに来るような男は、我が家では受け入れられません。

「魔王陛下に関しては、あの方の運命の乙女は別にいらっしゃいますので……。竜帝陛下も同じですわね」

「結婚後に現れたら困るわね」

 そうなのです。うっかり惚れて結婚した後で、本物が現れたら困ります。当然私は悪役令嬢の立ち位置に戻されてしまいますし、陛下方も困惑するでしょう。運命の乙女であるヒロインにとっては、隕石落下くらいの衝撃がありますね。

「精霊王様は?」

「無理ですわ。だって私は人間ですもの。それにあの方にもおそらく運命の乙女がいますわ」

 別ゲームだし、私が死んでから発売されたストーリーは存じませんが。ヒロイン以外にも悪役令嬢に当たる姫君や精霊がいそうな気がしませんか? お邪魔するのは嫌です。何度でも言いますが、私は壁や天井になってニヤニヤしたい派のファンですのよ。

「隣国の王太子殿下はどうしてダメなんだい?」

 お父様は一番まともそうな方のお名前を出してきました。一般的な消去法でいくと、イアン様は問題ないと思われます。ただ、あの方には大きな問題がありました。

「イアン様って……変な趣味があるのよ」

「「「え?」」」

 最後まで攻略しないと出て来ない部分だから、誰も知らないと思ったらやっぱり……。私は大きく開いた口に桃を放り込みました。
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