17 / 21
17.誰を選ぶかですって?
しおりを挟む
誰も選ばないのに、全員諦めてくれない。どれだけ強力な魅了魔法でしょうか――現実逃避したい。魔法なんて生まれてから使えたことないじゃない、と自分に突っ込んだ。どっと疲れたが、まだ昼過ぎなのですよ。お客様はまだ控えていますので、先に休憩いたしましょう。
食堂へ戻り、スープから順番に手を付けます。サラダ、パン、メインはお魚ですね。姿のまま香草焼きにされた魚を、手際よくばらして口に放り込みました。この辺はもう身に着いたマナーなので、考えるより先に手が動くのは助かります。こんな時にナイフやフォークの順番に悩んでいたら、気が休まりませんもの。
「セラはずっとお嫁に行かず、僕と暮らせばいいよ」
お兄様、妙なフラグを立てるのはおやめください。あなたも一応、一応は攻略対象なのですから。ゲーム補正が働いたらどうするんですか。血が繋がった双子なので、結婚する心配がないのは安心できますが。ゲームの中で多少ヤンデレ発言があったのが気になります。
「お嫁には行きますわ。お相手はゆっくり選びますけれど」
べきっとフラグを勢いよく蹴倒して、食後の紅茶を楽しみます。不安そうなお母様が頷いておられました。息子が娘に固執していれば、それは不安でしょう。なぜかお父様はしょげてますね。まさかお兄様と同じ意見ではありませんよね?
胡乱気な目を向ける私をよそに、お母様はデザートの桃を剥きながら尋ねました。というか、丸ごと出たんですの? 私の前の桃は剥いてありますけれど。刃物を持ったお母様は迫力満点でした。
「先ほどの方々の中に、よい方はいらっしゃらないの?」
「アーサー王子殿下は論外です」
「「賛成」」
我が家の男性2名の賛同を得ました。お母様も声はあげないものの、反論はないようです。まあ婚約解消した翌日によりを戻しに来るような男は、我が家では受け入れられません。
「魔王陛下に関しては、あの方の運命の乙女は別にいらっしゃいますので……。竜帝陛下も同じですわね」
「結婚後に現れたら困るわね」
そうなのです。うっかり惚れて結婚した後で、本物が現れたら困ります。当然私は悪役令嬢の立ち位置に戻されてしまいますし、陛下方も困惑するでしょう。運命の乙女であるヒロインにとっては、隕石落下くらいの衝撃がありますね。
「精霊王様は?」
「無理ですわ。だって私は人間ですもの。それにあの方にもおそらく運命の乙女がいますわ」
別ゲームだし、私が死んでから発売されたストーリーは存じませんが。ヒロイン以外にも悪役令嬢に当たる姫君や精霊がいそうな気がしませんか? お邪魔するのは嫌です。何度でも言いますが、私は壁や天井になってニヤニヤしたい派のファンですのよ。
「隣国の王太子殿下はどうしてダメなんだい?」
お父様は一番まともそうな方のお名前を出してきました。一般的な消去法でいくと、イアン様は問題ないと思われます。ただ、あの方には大きな問題がありました。
「イアン様って……変な趣味があるのよ」
「「「え?」」」
最後まで攻略しないと出て来ない部分だから、誰も知らないと思ったらやっぱり……。私は大きく開いた口に桃を放り込みました。
食堂へ戻り、スープから順番に手を付けます。サラダ、パン、メインはお魚ですね。姿のまま香草焼きにされた魚を、手際よくばらして口に放り込みました。この辺はもう身に着いたマナーなので、考えるより先に手が動くのは助かります。こんな時にナイフやフォークの順番に悩んでいたら、気が休まりませんもの。
「セラはずっとお嫁に行かず、僕と暮らせばいいよ」
お兄様、妙なフラグを立てるのはおやめください。あなたも一応、一応は攻略対象なのですから。ゲーム補正が働いたらどうするんですか。血が繋がった双子なので、結婚する心配がないのは安心できますが。ゲームの中で多少ヤンデレ発言があったのが気になります。
「お嫁には行きますわ。お相手はゆっくり選びますけれど」
べきっとフラグを勢いよく蹴倒して、食後の紅茶を楽しみます。不安そうなお母様が頷いておられました。息子が娘に固執していれば、それは不安でしょう。なぜかお父様はしょげてますね。まさかお兄様と同じ意見ではありませんよね?
胡乱気な目を向ける私をよそに、お母様はデザートの桃を剥きながら尋ねました。というか、丸ごと出たんですの? 私の前の桃は剥いてありますけれど。刃物を持ったお母様は迫力満点でした。
「先ほどの方々の中に、よい方はいらっしゃらないの?」
「アーサー王子殿下は論外です」
「「賛成」」
我が家の男性2名の賛同を得ました。お母様も声はあげないものの、反論はないようです。まあ婚約解消した翌日によりを戻しに来るような男は、我が家では受け入れられません。
「魔王陛下に関しては、あの方の運命の乙女は別にいらっしゃいますので……。竜帝陛下も同じですわね」
「結婚後に現れたら困るわね」
そうなのです。うっかり惚れて結婚した後で、本物が現れたら困ります。当然私は悪役令嬢の立ち位置に戻されてしまいますし、陛下方も困惑するでしょう。運命の乙女であるヒロインにとっては、隕石落下くらいの衝撃がありますね。
「精霊王様は?」
「無理ですわ。だって私は人間ですもの。それにあの方にもおそらく運命の乙女がいますわ」
別ゲームだし、私が死んでから発売されたストーリーは存じませんが。ヒロイン以外にも悪役令嬢に当たる姫君や精霊がいそうな気がしませんか? お邪魔するのは嫌です。何度でも言いますが、私は壁や天井になってニヤニヤしたい派のファンですのよ。
「隣国の王太子殿下はどうしてダメなんだい?」
お父様は一番まともそうな方のお名前を出してきました。一般的な消去法でいくと、イアン様は問題ないと思われます。ただ、あの方には大きな問題がありました。
「イアン様って……変な趣味があるのよ」
「「「え?」」」
最後まで攻略しないと出て来ない部分だから、誰も知らないと思ったらやっぱり……。私は大きく開いた口に桃を放り込みました。
37
あなたにおすすめの小説
ドレスが似合わないと言われて婚約解消したら、いつの間にか殿下に囲われていた件
ぽぽよ
恋愛
似合わないドレスばかりを送りつけてくる婚約者に嫌気がさした令嬢シンシアは、婚約を解消し、ドレスを捨てて男装の道を選んだ。
スラックス姿で生きる彼女は、以前よりも自然体で、王宮でも次第に評価を上げていく。
しかしその裏で、爽やかな笑顔を張り付けた王太子が、密かにシンシアへの執着を深めていた。
一方のシンシアは極度の鈍感で、王太子の好意をすべて「親切」「仕事」と受け取ってしまう。
「一生お仕えします」という言葉の意味を、まったく違う方向で受け取った二人。
これは、男装令嬢と爽やか策士王太子による、勘違いから始まる婚約(包囲)物語。
悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。
香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。
皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。
さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。
しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。
それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?
悪役令嬢の私、計画通り追放されました ~無能な婚約者と傾国の未来を捨てて、隣国で大商人になります~
希羽
恋愛
「ええ、喜んで国を去りましょう。――全て、私の計算通りですわ」
才色兼備と謳われた公爵令嬢セラフィーナは、卒業パーティーの場で、婚約者である王子から婚約破棄を突きつけられる。聖女を虐げた「悪役令嬢」として、満座の中で断罪される彼女。
しかし、その顔に悲壮感はない。むしろ、彼女は内心でほくそ笑んでいた――『計画通り』と。
無能な婚約者と、沈みゆく国の未来をとうに見限っていた彼女にとって、自ら悪役の汚名を着て国を追われることこそが、完璧なシナリオだったのだ。
莫大な手切れ金を手に、自由都市で商人『セーラ』として第二の人生を歩み始めた彼女。その類まれなる才覚は、やがて大陸の経済を揺るがすほどの渦を巻き起こしていく。
一方、有能な彼女を失った祖国は坂道を転がるように没落。愚かな元婚約者たちが、彼女の真価に気づき後悔した時、物語は最高のカタルシスを迎える――。
婚約破棄を突き付けてきた貴方なんか助けたくないのですが
夢呼
恋愛
エリーゼ・ミレー侯爵令嬢はこの国の第三王子レオナルドと婚約関係にあったが、当の二人は犬猿の仲。
ある日、とうとうエリーゼはレオナルドから婚約破棄を突き付けられる。
「婚約破棄上等!」
エリーゼは喜んで受け入れるが、その翌日、レオナルドは行方をくらました!
殿下は一体どこに?!
・・・どういうわけか、レオナルドはエリーゼのもとにいた。なぜか二歳児の姿で。
王宮の権力争いに巻き込まれ、謎の薬を飲まされてしまい、幼児になってしまったレオナルドを、既に他人になったはずのエリーゼが保護する羽目になってしまった。
殿下、どうして私があなたなんか助けなきゃいけないんですか?
本当に迷惑なんですけど。
拗らせ王子と毒舌令嬢のお話です。
※世界観は非常×2にゆるいです。
文字数が多くなりましたので、短編から長編へ変更しました。申し訳ありません。
カクヨム様にも投稿しております。
レオナルド目線の回は*を付けました。
断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる
葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。
アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。
アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。
市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。
残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは六歳の誕生日までは天使のように可愛らしい子供だった。ところが突然、ロバのような顔になってしまう。残念な姿に成長した『残念姫』と呼ばれるアンジェリカ。友達は男爵家のウォルターただ一人。そんなある日、隣国から素敵な王子様が留学してきて……
【完結】前世の記憶があっても役に立たないんですが!
kana
恋愛
前世を思い出したのは階段からの落下中。
絶体絶命のピンチも自力で乗り切ったアリシア。
ここはゲームの世界なのか、ただの転生なのかも分からない。
前世を思い出したことで変わったのは性格だけ。
チートともないけど前向きな性格で我が道を行くアリシア。
そんな時ヒロイン?登場でピンチに・・・
ユルい設定になっています。
作者の力不足はお許しください。
お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!
にのまえ
恋愛
すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。
公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。
家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。
だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、
舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる