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第6章 狙われた同胞を救え
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※吸血行為があります。
***************************************
吸血鬼にとって、何よりも効果的な薬――――不死の民の血。
甘く感じる香りに誘われたのか、リスキアの瞳がうっすらと開く。差し出された手首から零れる血が顔に滴るのを、無意識に舌で舐め取る。その表情はまだ夢現を彷徨っていて、ぼんやりとしていた。普段の勝気な光がない艶消しの瞳が、何度か瞬いた。
考えるより先に、本能が彼の体を動かす。目の前の手首を引き寄せて、唇を押し当てると啜り始めた。おそらくリスキアに意識があったなら、絶対に拒んだだろう。血を貰うことではなく、浅ましく啜る行為を……。
塞がり始めた傷へ名残惜しそうに舌を這わせたリスキアが、ほぅと溜め息をついた。再び横たわる彼の姿に、シリルが痛々しそうに目を細める。
「シリル……」
小声で呼びかけるライアンが送った合図に、頷いて一緒に部屋の隅へ移動した。
「もう大丈夫だと思うけど」
「ああ、助かった」
「……あのさ、どうしてアイザックが一緒にいないんだと思う?」
リスキアのパートナーであり、不死の血を混血としてその身に宿す青年。長身でブラウンの髪と優しそうな緑の瞳を持つ彼が、ケガをしたリスキアの傍を離れる筈がない。
……嫌な予感に、2人は顔を見合わせて溜め息をついた。
体を染め上げる赤い血を、たいした感慨もなく見つめる。鎖で吊るされ、こうして血を流してからどのくらい経ったのだろうか。ぼんやりとした意識は、すでに時間を考えることを放棄していた。
気に掛かることがあるとすれば、己が身の安全ではなく……美しく気高い魂の持ち主の安否だけだ。長い前髪が隠す緑の瞳を、薄く開いた。
リスキアは無事だろうか。
知りたいのはそれだけだった。しかし知る術なく、再びアイザックの瞳は伏せられる。
ぽたり、ぽたり、音を立てて滴る雫は命の証であり、同時に拘束された青年が人外であることを証明していた。
「不死の民というのは、便利だな」
くくっ、喉の奥で笑った男は溜まった血を一瞥し、手にしたナイフをひけらかす。何度も行われた残虐な行為が始まると知りながら、アイザックは顔を上げることすらしなかった。
項垂れたまま、手首に食い込む鎖の痛みを噛み締める。足元は僅かに浮いていて、完全に吊り上げられた形は拷問に近かった。
だが、明らかに拷問と違う部分がある。それは相手の求める物が――この体を流れる血だという事実。不老不死を誇る一族の血を得る為に、ここに吊るされているのだ。つまり死ねない彼にとって、これは永遠に終わらない苦行だった。
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吸血鬼にとって、何よりも効果的な薬――――不死の民の血。
甘く感じる香りに誘われたのか、リスキアの瞳がうっすらと開く。差し出された手首から零れる血が顔に滴るのを、無意識に舌で舐め取る。その表情はまだ夢現を彷徨っていて、ぼんやりとしていた。普段の勝気な光がない艶消しの瞳が、何度か瞬いた。
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塞がり始めた傷へ名残惜しそうに舌を這わせたリスキアが、ほぅと溜め息をついた。再び横たわる彼の姿に、シリルが痛々しそうに目を細める。
「シリル……」
小声で呼びかけるライアンが送った合図に、頷いて一緒に部屋の隅へ移動した。
「もう大丈夫だと思うけど」
「ああ、助かった」
「……あのさ、どうしてアイザックが一緒にいないんだと思う?」
リスキアのパートナーであり、不死の血を混血としてその身に宿す青年。長身でブラウンの髪と優しそうな緑の瞳を持つ彼が、ケガをしたリスキアの傍を離れる筈がない。
……嫌な予感に、2人は顔を見合わせて溜め息をついた。
体を染め上げる赤い血を、たいした感慨もなく見つめる。鎖で吊るされ、こうして血を流してからどのくらい経ったのだろうか。ぼんやりとした意識は、すでに時間を考えることを放棄していた。
気に掛かることがあるとすれば、己が身の安全ではなく……美しく気高い魂の持ち主の安否だけだ。長い前髪が隠す緑の瞳を、薄く開いた。
リスキアは無事だろうか。
知りたいのはそれだけだった。しかし知る術なく、再びアイザックの瞳は伏せられる。
ぽたり、ぽたり、音を立てて滴る雫は命の証であり、同時に拘束された青年が人外であることを証明していた。
「不死の民というのは、便利だな」
くくっ、喉の奥で笑った男は溜まった血を一瞥し、手にしたナイフをひけらかす。何度も行われた残虐な行為が始まると知りながら、アイザックは顔を上げることすらしなかった。
項垂れたまま、手首に食い込む鎖の痛みを噛み締める。足元は僅かに浮いていて、完全に吊り上げられた形は拷問に近かった。
だが、明らかに拷問と違う部分がある。それは相手の求める物が――この体を流れる血だという事実。不老不死を誇る一族の血を得る為に、ここに吊るされているのだ。つまり死ねない彼にとって、これは永遠に終わらない苦行だった。
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