【完結】紅く染まる夜の静寂に ~吸血鬼はハンターに溺愛される~

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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第7章 吸血鬼の集う城

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「アイザックの様子見てくる」

 笑顔で告げたライアンがリスキアと姿を消してから、シリルは自室で微睡まどろんでいた。甘い血がもたした倦怠感けんたいかん陶酔とうすいに似て心地よく、シーツの海で揺蕩たゆたう意識を引き上げる気になれない。

 軽いノックと控えめな声が聞こえた時も、シリルの瞳は開かなかった。その気配が馴染んだものであり、吸血鬼の本拠地である城にいることも影響しているのだろう。普段のシリルの鋭敏さを知る者が驚くほど、今の彼は無防備だった。

 ふわりと前髪に指が触れる感触に、赤い唇が動く。

「……ライアン?」

 声にならない問いかけに、指はびくりと強張った。だが何もなかったように離れ、傍らの気配も遠ざかる。ぼんやりとした意識の端で感じたのを最後に、シリルは眠りの腕に意識を委ねた。




 青ざめた友人の顔色に、「よっ!」と明るい挨拶も溜め息に変わる。ベッドで横になっているとリスキアから聞いていたが、どうやら勝手に起き出したのだろう。リスキアが鋭い声で叱咤した。

「アイザック、まだ起きるなと」

「平気だ。せっかくライアンが来てくれたのに、ベッドの上では失礼だろう」

 遮ったアイザックの声は穏やかで、呼吸は苦しさを滲ませていない。緑の瞳は澄んで、顔色の悪ささえなければ平常時に見えた。無言のライアンが「呆れた」と顔に滲ませながら歩み寄り、ソファに座るアイザックの頬に手の甲を当てる。

「病人を起こすほど、オレは偉くないけどね」

 悪態をつきつつも、触れた肌の冷たさに声は強張った。ここまで生命力が低下していることに、背筋に冷たいものが流れる。

 リスキアが助けを求めに来るのも当然だ。このまま放置していたら、薄まった血は命を支えきれなくなる。結果の見えた現状に、どうしてもっと早く声を掛けてくれなかったのかと唇を噛んだ。

「それで……血を与える方法は?」

 吸血鬼なら、血をそのままエネルギーに変換できる。口から飲んでも、吸っても、傷口から流し込んでも効果を得られた。だがヴェネゲル同士ではどうすればいいのか……同族の中で育たなかったライアンに知識はなく、元が人間のアイザックも知らない。

 助けを求めたからには、リスキアが何か知っているのだろうと踏んだライアンは正しかった。
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