【完結】紅く染まる夜の静寂に ~吸血鬼はハンターに溺愛される~

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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第7章 吸血鬼の集う城

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※流血表現があります。
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「ライアンの血に『これ』を溶かして飲ませれば、直接吸収できる筈だ」

 そう言って指し示されたのは、ソファテーブルに置かれた小箱だった。見覚えのある箱は、先日シリルがリスキアに渡したものだ。使い道は沢山ありそうだが、今回の方法もそのひとつに過ぎないのだろう。

「それだけか?」

 頷いたリスキアに、肩を竦めてライアンが箱を手に取った。あければ、魔力の結晶である紅い宝石が並んでいる。その数7つ、多いのか少ないのか。

「宝石の体積の5倍の血で溶けるらしい」

 示された方法に、ライアンが食器棚からグラスを取り出した。腰のベルトから愛用のナイフを抜くと、左手首を切り裂く。骨まで届きそうな勢いで切られた肌が、見る間に血を滴らせた。痛々しい光景だが、ライアンは顔を顰めただけで呻きを殺した。

「……すまない」

 謝罪するアイザックにウィンクして、箱から一番大きな宝石を摘む。鮮血を満たしたグラスに、宝石を滑らせて入れた。からんと氷のような音を立てた紅い石が、見る間に小さくなっていく。

 完全に溶けたのを見計らって、アイザックへ手渡した。

「吐くなよ、もったいないから」

 ウィンクして茶目っ気たっぷりに揶揄からかえば、アイザックは緑の目を瞬かせた後、意味ありげに笑った。

「努力しよう」

 呟いた唇がグラスの縁に触れる。ごくりと喉が動き、赤い液体が飲み干された。

 本来、血液には嘔吐作用がある。鉄錆びた臭いの鮮血は、シリルの紅い宝石によって変化していたのだろう。アイザックが吐き気に襲われることはなく、舌と喉を潤す甘さに目を瞠った。香りも芳醇で、ワインのような酔いさえ感じる。

「……甘い……?」

 意外だと滲ませたアイザックの声に、リスキアがさもありなんと頷いた。

「吸血鬼と同じ効果が得られる。一時的だが、味覚も感覚も近づく」

 吸血鬼がヴェネゲルの血を好むのは、その甘くて芳醇な香りと味、濃い生命力に酔うからだった。吸血鬼にとって、ライアンの血は極上のワインや麻薬に匹敵する。心地よさだけでなく、己の生命力を強めるのだ。

 どんな作用か知らないが、シリルの魔力が一時的にアイザックの体を吸血鬼に近づけたのだろう。それ故に、嘔吐することなく嚥下し、体内に成分を吸収できる。
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