385 / 386
外伝
外伝・第4話 お前のためだ
しおりを挟む
じっくりと下から見られると、あれこれ気になってしまう。薄い胸元はきっと膨らみが足りないだろうし、足もそんなに長い方じゃないと思う。内心で混乱していると、ジルは整った顔に満面の笑みを浮かべた。
「今日はこれを買いに行ったんだな。すごく似合ってる。ドレス姿も素敵だけど……こっちもドキドキするぜ」
膝をついたまま、そっと伸ばした手が夜着のリボンにかかった。しゅるりと優しい音を立てて、絹のリボンは解ける。見た目以上に防御力が低くて、ルリアージェは赤面した。
そんなつもり……あるにはあるが、いきなり展開が早くないだろうか。この頼りない恰好にこれほど威力があると思わなかった。ジルに聞こえそうなほど高鳴る鼓動を抑えるように、胸元を両手で隠す。
「ねえ、リア」
立ち上がったジルの腕にすっぽり包まれた。気づけば背に回った腕が、いやらしく背中を撫でる。しまったはずの翼の付け根を辿る指に、ぞくりと背筋に何かが走った。未知の感覚に、反射的に身を竦める。
自分が望んだ展開なのに、怖いし恥ずかしい。耳まで真っ赤になったルリアージェの銀髪を、指先でかき上げたジルが唇を寄せた。耳の下、首筋に触れる吐息に腰の辺りがじんわりと重くなる。
膝から力が抜けそうな美女を抱き上げて、後ろのベッドに横たえる。閉じ込めるように顔の両側に手をつき、ジルはすこし低い声で尋ねた。
「この恰好、誰に見せるために買ったの?」
「……っ」
「答えられない?」
惚れた男が耳もとで囁く声は、腰を直接刺激する。身体の奥がジンと痺れて、感情が溢れ出すような……むず痒い感覚で首を逸らした。それを抵抗と見てとったジルが、首筋に顔を埋める。ぺろりと舌で舐めてから、わざと歯を立てた。
傷にはしない。しかし歯の形を残す程度の強さで、じわりと力をかけた。びくっと揺れた肩は細くて、象牙の肌に欲望は掻き立てられた。このまま押し倒して、自分の思うままに抱いて壊したい。そう思う反面、リアに嫌われる可能性がちらりと過ぎった。
どんな男に見せるために買ったの? どうしてその姿をオレに見せる? 嫉妬が渦を巻いてジルを包む。リシュアやリオネルが聞いたら崩れ落ちそうな、見当違いの感情で愛しい人の肌を暴いた。
抵抗がないのを了承と判断し、絹の夜着をずらして露わにした肌を唇で辿る。背を滑り落ちた黒髪が、檻の格子みたいに2人の間に影を作った。顔の見えなくなったジルは、震えている気がした。
「リア、答えてくれないの?」
その声に滲んだ不安そうな子供の感情に、リアは眉をひそめた。何かおかしい。ライラやパウリーネから聞いた話だと、この恰好で誘惑すればジルは喜ぶのではなかったか? 男なら放っておかないと言われたのに……。
襲う側のジルの様子が、想像と違う。
胸元に顔を埋めたジルの黒髪を引っ張って、それから顎に手をかけて頬を両手で包んだ。無理やり視線を合わせると、紫水晶の瞳を覗き込む。揺れる眼差しに、わずかに首をかしげた。
「何を答えて欲しいのだ。私がお前のため以外に、こんな……恥ずかしい恰好するわけないだろう」
「え? オレ、の……ため」
驚いたジルが目を見開く。ふわりと風が黒髪を揺らした。彼の感情の揺れに、精霊が反応したらしい。火照る肌に心地よい風に、ルリアージェは青い瞳を細めた。
「そうだ」
肯定するルリアージェの顔は赤く、両手で頬を包んだ以外の動きはない。つまり襲って欲しいと誘っただけで、抵抗する仕草はなかった。
「今日はこれを買いに行ったんだな。すごく似合ってる。ドレス姿も素敵だけど……こっちもドキドキするぜ」
膝をついたまま、そっと伸ばした手が夜着のリボンにかかった。しゅるりと優しい音を立てて、絹のリボンは解ける。見た目以上に防御力が低くて、ルリアージェは赤面した。
そんなつもり……あるにはあるが、いきなり展開が早くないだろうか。この頼りない恰好にこれほど威力があると思わなかった。ジルに聞こえそうなほど高鳴る鼓動を抑えるように、胸元を両手で隠す。
「ねえ、リア」
立ち上がったジルの腕にすっぽり包まれた。気づけば背に回った腕が、いやらしく背中を撫でる。しまったはずの翼の付け根を辿る指に、ぞくりと背筋に何かが走った。未知の感覚に、反射的に身を竦める。
自分が望んだ展開なのに、怖いし恥ずかしい。耳まで真っ赤になったルリアージェの銀髪を、指先でかき上げたジルが唇を寄せた。耳の下、首筋に触れる吐息に腰の辺りがじんわりと重くなる。
膝から力が抜けそうな美女を抱き上げて、後ろのベッドに横たえる。閉じ込めるように顔の両側に手をつき、ジルはすこし低い声で尋ねた。
「この恰好、誰に見せるために買ったの?」
「……っ」
「答えられない?」
惚れた男が耳もとで囁く声は、腰を直接刺激する。身体の奥がジンと痺れて、感情が溢れ出すような……むず痒い感覚で首を逸らした。それを抵抗と見てとったジルが、首筋に顔を埋める。ぺろりと舌で舐めてから、わざと歯を立てた。
傷にはしない。しかし歯の形を残す程度の強さで、じわりと力をかけた。びくっと揺れた肩は細くて、象牙の肌に欲望は掻き立てられた。このまま押し倒して、自分の思うままに抱いて壊したい。そう思う反面、リアに嫌われる可能性がちらりと過ぎった。
どんな男に見せるために買ったの? どうしてその姿をオレに見せる? 嫉妬が渦を巻いてジルを包む。リシュアやリオネルが聞いたら崩れ落ちそうな、見当違いの感情で愛しい人の肌を暴いた。
抵抗がないのを了承と判断し、絹の夜着をずらして露わにした肌を唇で辿る。背を滑り落ちた黒髪が、檻の格子みたいに2人の間に影を作った。顔の見えなくなったジルは、震えている気がした。
「リア、答えてくれないの?」
その声に滲んだ不安そうな子供の感情に、リアは眉をひそめた。何かおかしい。ライラやパウリーネから聞いた話だと、この恰好で誘惑すればジルは喜ぶのではなかったか? 男なら放っておかないと言われたのに……。
襲う側のジルの様子が、想像と違う。
胸元に顔を埋めたジルの黒髪を引っ張って、それから顎に手をかけて頬を両手で包んだ。無理やり視線を合わせると、紫水晶の瞳を覗き込む。揺れる眼差しに、わずかに首をかしげた。
「何を答えて欲しいのだ。私がお前のため以外に、こんな……恥ずかしい恰好するわけないだろう」
「え? オレ、の……ため」
驚いたジルが目を見開く。ふわりと風が黒髪を揺らした。彼の感情の揺れに、精霊が反応したらしい。火照る肌に心地よい風に、ルリアージェは青い瞳を細めた。
「そうだ」
肯定するルリアージェの顔は赤く、両手で頬を包んだ以外の動きはない。つまり襲って欲しいと誘っただけで、抵抗する仕草はなかった。
0
あなたにおすすめの小説
異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』
アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた
【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。
カクヨム版の
分割投稿となりますので
一話が長かったり短かったりしています。
黄金の魔導書使い -でも、騒動は来ないで欲しいー
志位斗 茂家波
ファンタジー
‥‥‥魔導書(グリモワール)。それは、不思議な儀式によって、人はその書物を手に入れ、そして体の中に取り込むのである。
そんな魔導書の中に、とんでもない力を持つものが、ある時出現し、そしてある少年の手に渡った。
‥‥うん、出来ればさ、まだまともなのが欲しかった。けれども強すぎる力故に、狙ってくる奴とかが出てきて本当に大変なんだけど!?責任者出てこぉぉぉぃ!!
これは、その魔導書を手に入れたが故に、のんびりしたいのに何かしらの騒動に巻き込まれる、ある意味哀れな最強の少年の物語である。
「小説家になろう」様でも投稿しています。作者名は同じです。基本的にストーリー重視ですが、誤字指摘などがあるなら受け付けます。
ひ弱な竜人 ~周りより弱い身体に転生して、たまに面倒くさい事にも出会うけど家族・仲間・植物に囲まれて二度目の人生を楽しんでます~
白黒 キリン
ファンタジー
前世で重度の病人だった少年が、普人と変わらないくらい貧弱な身体に生まれた竜人族の少年ヤーウェルトとして転生する。ひたすらにマイペースに前世で諦めていたささやかな幸せを噛み締め、面倒くさい奴に絡まれたら鋼の精神力と図太い神経と植物の力を借りて圧倒し、面倒事に巻き込まれたら頼れる家族や仲間と植物の力を借りて撃破して、時に周囲を振り回しながら生きていく。
タイトルロゴは美風慶伍 様作で副題無し版です。
小説家になろうでも公開しています。
https://ncode.syosetu.com/n5715cb/
カクヨムでも公開してします。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054887026500
●現状あれこれ
・2021/02/21 完結
・2020/12/16 累計1000000ポイント達成
・2020/12/15 300話達成
・2020/10/05 お気に入り700達成
・2020/09/02 累計ポイント900000達成
・2020/04/26 累計ポイント800000達成
・2019/11/16 累計ポイント700000達成
・2019/10/12 200話達成
・2019/08/25 お気に入り登録者数600達成
・2019/06/08 累計ポイント600000達成
・2019/04/20 累計ポイント550000達成
・2019/02/14 累計ポイント500000達成
・2019/02/04 ブックマーク500達成
[完]異世界銭湯
三園 七詩
ファンタジー
下町で昔ながらの薪で沸かす銭湯を経営する一家が住んでいた。
しかし近くにスーパー銭湯が出来てから客足が激減…このままでは店を畳むしかない、そう思っていた。
暗い気持ちで目覚め、いつもの習慣のように準備をしようと外に出ると…そこは見慣れた下町ではなく見たことも無い場所に銭湯は建っていた…
悪役令嬢、休職致します
碧井 汐桜香
ファンタジー
そのキツい目つきと高飛車な言動から悪役令嬢として中傷されるサーシャ・ツンドール公爵令嬢。王太子殿下の婚約者候補として、他の婚約者候補の妨害をするように父に言われて、実行しているのも一因だろう。
しかし、ある日突然身体が動かなくなり、母のいる領地で療養することに。
作中、主人公が精神を病む描写があります。ご注意ください。
作品内に登場する医療行為や病気、治療などは創作です。作者は医療従事者ではありません。実際の症状や治療に関する判断は、必ず医師など専門家にご相談ください。
【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます
なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。
過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。
魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。
そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。
これはシナリオなのかバグなのか?
その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。
【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる