【完結】虐待された幼子は魔皇帝の契約者となり溺愛される

綾雅(りょうが)今月は2冊出版!

文字の大きさ
114 / 214

112.ミカエルからお魚をもらったよ

しおりを挟む
 お魚を入れるのは何日も後になると聞いた。まずはお水を入れて、外に漏れないか確認する。漏れてたら直さないといけないよ。全部終わったら、今度は魚用の草と土を入れるんだ。餌になる物がないと死んじゃうと言われて、僕も頷いた。

 僕は今ご飯を食べてるけど、昔も餌がなかったら死んでた。美味しくないし痛かった餌は、それでも僕がパパに会うまで必要だったんだね。プルソンとお勉強した中に「世の中に無駄なものはない」という考え方があったの。僕は好きだよ。

 お前なんか嫌いと言ってたけど、奥様がいなければ僕は死んでた。それは分かる。どうして育てたのか知らないけど、僕は奥様に感謝してる。パパやアガレス達と出会うまで生きてられたんだもん。

「本当に天使そのものの考え方だよな」

 突然聞こえた声に振り返ると、パパが嫌そうに眉を寄せた。顔に皺が出来ちゃったよ? 撫でる僕の前に、白い翼を見せる天使が立ってる。ミカエルだ。でももう一人いて、ガブリエルじゃなかった。誰、この人。

「ウリエルだ。心を読む能力があるから、聞かれたくない時は「ダメ」と強く願ってくれ」

 ウリエル。新しい天使で、ミカエルのお友達みたい。どうしても僕に会いたいと言って、無理やり付いてきたんだって。もしかしてお友達になりたいのかな?

「お友達……そうだな、友達になりたい」

「図々しい奴め」

 ミカエルが文句言ってるけど、仲悪くないみたい。

「好き勝手騒ぐな。ここは俺の領地だぞ。さっさと去れ」

 むっとした顔でパパが注意するけど、二人は気にしない。顔を見合わせてから首を傾げた。

「しょうがないだろ、天使はどこでも入れるし」

「そうそう。僕は君達が魚を飼うというから、これを届けに来たんだ。もっと歓迎してくれ」

 ミカエルが取り出したのは、お水の塊だった。丸い大きなお水の中に、知らないお魚が泳いでる。きらきらして色が虹色なの。

「僕とパパにくれるの?」

「ああ、君にあげるよ」

 やっぱり天使は僕の名前を呼ばない。悪い人に僕が意地悪されないように、だっけ? 僕はミカエル達を呼んでも平気なのかな。

「この子……心を全く閉ざさないんだけど、逆に心配だな」

「俺と契約で繋がっているから、それが日常なのだ」

 パパが説明する。そう、僕とパパは仲良しで一緒にいる約束をしたから、僕の気持ちがパパに伝わるんだよ。凄いでしょ。

「僕はパパが大好きだから、いいの」

 全部聞こえてもいいの。悪いことはパパがダメだと教えてくれる。何も怖いことなんてないよ。胸を張る僕に、ミカエルがふふっと笑った。天使の人は顔が黒く見えるけど、ミカエルとガブリエルとウリエルは、ちゃんと人の顔だった。綺麗な顔だよ。

「そっか、ありがとうな」

 ウリエルが僕の髪をくしゃっと撫でる。パパが文句を言ってる横で、僕は虹色の魚に夢中だった。初めて見たよ、綺麗だね。

「こんにちは、僕と仲良くしてね」

 お水のボールに触れると、ぽよんと揺れた。お魚が寄ってきて、僕の手を突くみたいに顔を向ける。

「ひとまず……風呂場だな」

 お魚の池がまだ完成してないから、もらった虹色の魚はお風呂に入れてもらった。泳いでる姿を上から覗いて、ミカエルにお礼を言う。

「ありがとう、ミカエル。嬉しい!」

「喜んでくれてよかった。あ、そうだった! 近々、ガブリエルも来るからよろしく」

「来るな!!」

 パパが怒鳴ると、天使二人は首をすくめて消えちゃった。パパはあの二人が嫌いなの? 僕はお魚くれたから好きだけど。
しおりを挟む
感想 493

あなたにおすすめの小説

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

英雄の可愛い幼馴染は、彼の真っ黒な本性を知らない

百門一新
恋愛
男の子の恰好で走り回る元気な平民の少女、ティーゼには、見目麗しい完璧な幼馴染がいる。彼は幼少の頃、ティーゼが女の子だと知らず、怪我をしてしまった事で責任を感じている優しすぎる少し年上の幼馴染だ――と、ティーゼ自身はずっと思っていた。 幼馴染が半魔族の王を倒して、英雄として戻って来た。彼が旅に出て戻って来た目的も知らぬまま、ティーゼは心配症な幼馴染離れをしようと考えていたのだが、……ついでとばかりに引き受けた仕事の先で、彼女は、恋に悩む優しい魔王と、ちっとも優しくないその宰相に巻き込まれました。 ※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

所詮、わたしは壁の花 〜なのに辺境伯様が溺愛してくるのは何故ですか?〜

しがわか
ファンタジー
刺繍を愛してやまないローゼリアは父から行き遅れと罵られていた。 高貴な相手に見初められるために、とむりやり夜会へ送り込まれる日々。 しかし父は知らないのだ。 ローゼリアが夜会で”壁の花”と罵られていることを。 そんなローゼリアが参加した辺境伯様の夜会はいつもと雰囲気が違っていた。 それもそのはず、それは辺境伯様の婚約者を決める集まりだったのだ。 けれど所詮”壁の花”の自分には関係がない、といつものように会場の隅で目立たないようにしているローゼリアは不意に手を握られる。 その相手はなんと辺境伯様で——。 なぜ、辺境伯様は自分を溺愛してくれるのか。 彼の過去を知り、やがてその理由を悟ることとなる。 それでも——いや、だからこそ辺境伯様の力になりたいと誓ったローゼリアには特別な力があった。 天啓<ギフト>として女神様から賜った『魔力を象るチカラ』は想像を創造できる万能な能力だった。 壁の花としての自重をやめたローゼリアは天啓を自在に操り、大好きな人達を守り導いていく。

理想の男性(ヒト)は、お祖父さま

たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。 そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室? 王太子はまったく好みじゃない。 彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。 彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。 そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった! 彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。 そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。 恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。 この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?  ◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。 本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。 R-Kingdom_1 他サイトでも掲載しています。

ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。

光子
恋愛
ーーー両親の愛情は、全て、可愛い妹の物だった。 昔から、私のモノは、妹が欲しがれば、全て妹のモノになった。お菓子も、玩具も、友人も、恋人も、何もかも。 逆らえば、頬を叩かれ、食事を取り上げられ、何日も部屋に閉じ込められる。 でも、私は不幸じゃなかった。 私には、幼馴染である、カインがいたから。同じ伯爵爵位を持つ、私の大好きな幼馴染、《カイン=マルクス》。彼だけは、いつも私の傍にいてくれた。 彼からのプロポーズを受けた時は、本当に嬉しかった。私を、あの家から救い出してくれたと思った。 私は貴方と結婚出来て、本当に幸せだったーーー 例え、私に子供が出来ず、義母からハズレ嫁と罵られようとも、義父から、マルクス伯爵家の事業全般を丸投げされようとも、私は、貴方さえいてくれれば、それで幸せだったのにーーー。 「《ルエル》お姉様、ごめんなさぁい。私、カイン様との子供を授かったんです」 「すまない、ルエル。君の事は愛しているんだ……でも、僕はマルクス伯爵家の跡取りとして、どうしても世継ぎが必要なんだ!だから、君と離婚し、僕の子供を宿してくれた《エレノア》と、再婚する!」 夫と妹から告げられたのは、地獄に叩き落とされるような、残酷な言葉だった。 カインも結局、私を裏切るのね。 エレノアは、結局、私から全てを奪うのね。 それなら、もういいわ。全部、要らない。 絶対に許さないわ。 私が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、全部返さないと気がすまないーー! 覚悟していてね? 私は、絶対に貴方達を許さないから。 「私、貴方と離婚出来て、幸せよ。 私、あんな男の子供を産まなくて、幸せよ。 ざまぁみろ」 不定期更新。 この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。

処理中です...