【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

文字の大きさ
15 / 321

14.もっと名前を呼んで

しおりを挟む
 セティと並んで朝のご飯を食べた。昨日と違うのは、スープとパンと草が並んだこと。緑の草をセティが食べてから、同じように僕の口に押し込んだ。昔お腹すいて齧った時は苦かったけど、この草は苦くなくて驚く。スープは僕が知ってるのと味が違う。とろりとして、もっとたくさん食べたくなった。

「この街に何日かいる予定だから、買い物に行こう」

 よくわからないので頷く。買い物って何だろう? 抱っこされて移動が固定になりつつある僕は、腕をセティの首に回す。向かい合うこの抱っこは好きだ。いつでもセティにキスが出来るから。そう言ったら、くすくす笑って唇に指が押し当てられた。

「あちこちにキスすると、襲っちゃうぞ」

 怒られてるのかと思ったけど、首や額、顔中にキスがいっぱい降ってきた。たぶん怒られてない。外へ出るからと、布を掛けられた。毛布じゃないけど柔らかい。なんか甘い匂いがする布だった。

 外はいろんな匂いがした。食べ物、獣、花? 顔を布で半分隠せば、外を見ていても平気だった。何も言われないのを確かめてから、いろんな人や物を眺める。白い服の人はやっぱり少なくて、皆違う色の服を着ていた。

 街の中をあちこち歩いた後、セティが家に入っていく。いっぱい服が並んでいた。すごい、花畑みたい。目を輝かせた僕に、この店から出ちゃいけないと言って降ろしてくれた。ここはお店という場所で、さっき言ってた買い物をするんだ。簡単な説明でも僕に話しかけてくれる声が嬉しくて、笑顔で頷いた。

 この部屋から出ない、買い物する。僕はセティが見える場所にいればいいと理解した。降ろしてもらうと洋服を着た人形がいっぱいで怖くなり、セティの袖を掴んで見上げる。どうしよう、セティに抱っこされてないと何も見えない。すぐに抱き上げてもらい、しっかりしがみついた。

 怖い。セティがいなくなるかと思った。そんな僕の頭の上で知らない言葉が飛び交い、いくつもの布を押し当てられる。いきなり手が触れるのが嫌で、顔をセティの首筋に埋めた。両手をしっかり回して動かない。これなら怖くない。

「疲れちゃったか? 途中でお昼買って帰ろうな」

 さっきまで知らない言葉を話してたセティに頭を撫でられた。ぐりぐり揺らす行為の名前を知って、キスを知って、僕の世界は広がっていく。外へ出ると道の両側にいろんな店があった。食べ物が並んでいる。みたことがある果物もあるし、知らない塊から煙が出てる店もあって、セティは慣れた様子でいくつかの店から買い物をした。

 宿ではお昼ご飯は出ないのだと説明される。ベッドの上に座る僕は、頭に巻いた布を外してもらった。苦しくないけど、やっぱりない方がいい。

「こっちにおいで、イシス」

「セティ」

 大急ぎで走って近づいた。イシスって名前を呼んでくれるのが嬉しい。だから僕も呼ぶ。一緒にご飯を食べた。手で掴んで食べられる物だと言われ、棒に刺さった塊を齧る。昨日食べたやつに味が似ていた。その日は買い物で行った店の服を着て、ずっと窓から外を見て過ごす。

「楽しいか?」

「うん」

 これだけたくさんの人間がいて、同じ人間がいないなんてすごい。頬を緩めて足を揺らしながら、ずっと窓の外を見続けた。

「構わないと拗ねるぞ」

 難しいことを言って、セティの手が僕を振り向かせる。顎に触った手にキスすると、笑いながらベッドの上に寝転んだ。まだ寝る時間じゃないのに、たくさんキスをくれて、セティが笑うから僕も笑った。ずっと……セティといられたらいいのに。
しおりを挟む
感想 63

あなたにおすすめの小説

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

自己肯定感低めの不幸な義弟が完璧な義兄と大揉めに揉める話

あと
BL
「こんな僕をお兄ちゃんは嫌ってるだろうな」 トップ俳優な完璧超人の義理の兄×不幸な自己肯定感低めのネガティブ義理の弟です。 お金ない受けが追い詰められて変なアルバイトしようとしたら、攻めと再会して……?みたいな話です。 攻めがヤンデレ気味で、受けがマジで卑屈なので苦手な人はブラウザバックで。 兄弟は親が離婚してるため、苗字が違います。 攻め:水瀬真広 受け:神崎彼方 ⚠️作者は芸能界にもお葬式ににもエアプなので、気にしないでください。 途中でモブおじが出てきます。 義理とはいえ兄弟なので、地雷の人はブラウザバックで。 初投稿です。 初投稿がちょっと人を選ぶ作品なので不安です。 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 内容も時々サイレント修正するかもです。 定期的にタグ整理します。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー AI比較企画作品

新年に余り物でおせちを作ったら、冷酷と噂の騎士団長様に「運命の番」だと求婚されました

水凪しおん
BL
料理人だった俺が転生したのは、男性オメガというだけで家族に虐げられる不遇の青年カイ。 新年くらいはと前世の記憶を頼りに作ったのは、この世界にはない『おせち料理』だった。 それを偶然口にしたのは、氷のように冷酷と噂される最強の騎士団長リアム。 「お前は俺の運命の番だ」 彼の屋敷に保護され、俺の作る料理が彼の心を溶かしていく。 不器用で、だけどまっすぐな愛情を注いでくれる彼と、美味しい料理で紡ぐ、甘くて温かい異世界スローライフ。

この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!

ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。 ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。 これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。 ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!? ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19) 公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年BLです。

六年目の恋、もう一度手をつなぐ

高穂もか
BL
幼なじみで恋人のつむぎと渉は互いにオメガ・アルファの親公認のカップルだ。 順調な交際も六年目――最近の渉はデートもしないし、手もつながなくなった。 「もう、おればっかりが好きなんやろか?」 馴ればっかりの関係に、寂しさを覚えるつむぎ。 そのうえ、渉は二人の通う高校にやってきた美貌の転校生・沙也にかまってばかりで。他のオメガには、優しく甘く接する恋人にもやもやしてしまう。 嫉妬をしても、「友達なんやから面倒なこというなって」と笑われ、遂にはお泊りまでしたと聞き…… 「そっちがその気なら、もういい!」 堪忍袋の緒が切れたつむぎは、別れを切り出す。すると、渉は意外な反応を……? 倦怠期を乗り越えて、もう一度恋をする。幼なじみオメガバースBLです♡

【完結】僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。 ⭐︎表紙イラストは針山糸様に描いていただきました

【本編完結済】神子は二度、姿を現す

江多之折(エタノール)
BL
1/7外伝含め完結 ファンタジー世界で成人し、就職しに王城を訪れたところ異世界に転移した少年が転移先の世界で神子となり、壮絶な日々の末、自ら命を絶った前世を思い出した主人公。 死んでも戻りたかった元の世界には戻ることなく異世界で生まれ変わっていた事に絶望したが 神子が亡くなった後に取り残された王子の苦しみを知り、向き合う事を決めた。 戻れなかった事を恨み、死んだことを後悔し、傷付いた王子を助けたいと願う少年の葛藤。 王子様×元神子が転生した侍従の過去の苦しみに向き合い、悩みながら乗り越えるための物語。 ※小説家になろうに掲載していた作品を改修して投稿しています。 描写はキスまでの全年齢BL

処理中です...