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71.僕は間違ったの?(SIDEアトゥム)
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*****SIDE アトゥム
醜いゲリュオンに殴られそうになった。振りかぶった拳から逃げようにも、自慢の長い金髪を掴まれている。必死で顔を逸らしながら、折られた腕で頭を抱えた。痛みを耐えようと瞑った目の裏で、痛みが爆発する。激痛で何も考えられなかった。
美しい豊穣の神とは思えない叫び声が、荒れ地に響き渡る。下から蹴られたと気づいたがもう遅い。僕は戦いなんて野蛮な行為は嫌いだった。でも、戦う手段は持っていた方がよかったみたい。反撃する手もなく、ただ泣き叫ぶだけ。
歯が数本口の中で砕け、鼻は詰まって呼吸も出来ない。顔面のいたるところが痛くて、もうどこにケガしたのか分からなくなった。野蛮な戦いの神相手に、どうやって逃げられるだろう。僕にそんな能力はない。
掴んだ金髪で引きずり回されるたび、短く切っておけばよかったと思う。美しい外見を最大限に生かすため、小細工して顔を整えた。その美貌が役に立たない。足首の骨が砕け、足の指先からゲリュオンに食われた。
神々の戦いに終焉はない。なぜなら倒されても頭を砕かれても再生するからだ。だから絶対に再生不可能な状態が、神の死と定義されていた。他の神による吸収だ。ごりごりと骨を砕き、すり潰した肉が消えていく。直接噛む必要はなかった。
互いの神力がせめぎあい、弱い方が強い方へ吸収される。この身も魂も神力によって支えられた物だから、力を食われれば消滅する未来しかなかった。
「い、や……だ、ぁぐぅ」
悲鳴と苦痛の声が混じって、荒れ地に聞き苦しい声が響く。ゲリュオンに跪く気はなくて、タイフォンへ手を伸ばした。折れた腕は痺れて感触がない。両足はとっくに食われ、内臓を食む湿った音が気力を奪った。それでも諦めきれない。
タイフォンが大切そうに抱くその子供が、すべての元凶だ。誰の手にも落ちず、気高い孤高の存在として君臨する破壊神に、安らぎなんていらないんだ。僕達の上に立つタイフォンが甘い顔で、優しい声で、人間の子供に愛情を注ぐなんて……。
だから狙わせた。殺せと命じた。信者を名乗る薄汚い連中に神託を下ろし、贄の子供をより残酷に生きたまま獣に食わせろと――。なのに、なぜ。
「なぜ? お前がイシスにしようとしたことと、今の状況はそっくりじゃないか」
くすっと笑ったタイフォンの視線が僕を捉える。ようやく僕を見てくれた。ずっと、ずっと憧れて……僕の側に居て欲しかった。たまに出会ったときに会話できるだけで嬉しくて、焦がれてきたのに。こんな仕打ちは酷い。僕は神、豊穣の神なんだ。そこの野良犬みたいな贄とは違う。
「イシスはオレの嫁だ。お前程度の下級神が、並び立てるわけないだろ」
吐き捨てたタイフォンの言葉に呼応したように、背骨がかみ砕かれる音がした。げほっと赤い血が口から溢れ、僕の左手が腹へ伸びる。引き千切られた腸や胃が大地に撒き散らされていた。撫でた指先も食われて消える。
「ぐぁ、ああ」
「全部食うとガイアがうるさいか」
ゲリュオンに半分譲るんじゃなかった、そんなタイフォンの呟きが聞こえた。だが容赦なく、彼も腹から胸にかけて食らう。両腕も肘より先は消えた。
ああ、もう痛みすら感じなくなってきたな。僕は間違ったの? 何を? どこで?
醜いゲリュオンに殴られそうになった。振りかぶった拳から逃げようにも、自慢の長い金髪を掴まれている。必死で顔を逸らしながら、折られた腕で頭を抱えた。痛みを耐えようと瞑った目の裏で、痛みが爆発する。激痛で何も考えられなかった。
美しい豊穣の神とは思えない叫び声が、荒れ地に響き渡る。下から蹴られたと気づいたがもう遅い。僕は戦いなんて野蛮な行為は嫌いだった。でも、戦う手段は持っていた方がよかったみたい。反撃する手もなく、ただ泣き叫ぶだけ。
歯が数本口の中で砕け、鼻は詰まって呼吸も出来ない。顔面のいたるところが痛くて、もうどこにケガしたのか分からなくなった。野蛮な戦いの神相手に、どうやって逃げられるだろう。僕にそんな能力はない。
掴んだ金髪で引きずり回されるたび、短く切っておけばよかったと思う。美しい外見を最大限に生かすため、小細工して顔を整えた。その美貌が役に立たない。足首の骨が砕け、足の指先からゲリュオンに食われた。
神々の戦いに終焉はない。なぜなら倒されても頭を砕かれても再生するからだ。だから絶対に再生不可能な状態が、神の死と定義されていた。他の神による吸収だ。ごりごりと骨を砕き、すり潰した肉が消えていく。直接噛む必要はなかった。
互いの神力がせめぎあい、弱い方が強い方へ吸収される。この身も魂も神力によって支えられた物だから、力を食われれば消滅する未来しかなかった。
「い、や……だ、ぁぐぅ」
悲鳴と苦痛の声が混じって、荒れ地に聞き苦しい声が響く。ゲリュオンに跪く気はなくて、タイフォンへ手を伸ばした。折れた腕は痺れて感触がない。両足はとっくに食われ、内臓を食む湿った音が気力を奪った。それでも諦めきれない。
タイフォンが大切そうに抱くその子供が、すべての元凶だ。誰の手にも落ちず、気高い孤高の存在として君臨する破壊神に、安らぎなんていらないんだ。僕達の上に立つタイフォンが甘い顔で、優しい声で、人間の子供に愛情を注ぐなんて……。
だから狙わせた。殺せと命じた。信者を名乗る薄汚い連中に神託を下ろし、贄の子供をより残酷に生きたまま獣に食わせろと――。なのに、なぜ。
「なぜ? お前がイシスにしようとしたことと、今の状況はそっくりじゃないか」
くすっと笑ったタイフォンの視線が僕を捉える。ようやく僕を見てくれた。ずっと、ずっと憧れて……僕の側に居て欲しかった。たまに出会ったときに会話できるだけで嬉しくて、焦がれてきたのに。こんな仕打ちは酷い。僕は神、豊穣の神なんだ。そこの野良犬みたいな贄とは違う。
「イシスはオレの嫁だ。お前程度の下級神が、並び立てるわけないだろ」
吐き捨てたタイフォンの言葉に呼応したように、背骨がかみ砕かれる音がした。げほっと赤い血が口から溢れ、僕の左手が腹へ伸びる。引き千切られた腸や胃が大地に撒き散らされていた。撫でた指先も食われて消える。
「ぐぁ、ああ」
「全部食うとガイアがうるさいか」
ゲリュオンに半分譲るんじゃなかった、そんなタイフォンの呟きが聞こえた。だが容赦なく、彼も腹から胸にかけて食らう。両腕も肘より先は消えた。
ああ、もう痛みすら感じなくなってきたな。僕は間違ったの? 何を? どこで?
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