【完結】召喚された勇者は贄として、魔王に美味しく頂かれました

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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31.心細い時の心音は手離せない

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 久しぶりの外出を楽しんだ翌日、俺は体調を崩した。原因不明だが、全身の関節が悲鳴を上げ高熱が出ている。高熱が出る前に肘や膝が痛くなるけど、どっちが先だったのか。

 詰まった鼻を啜り、痛む喉で咳き込む。俺が知る病のイメージとしては、インフルエンザか酷い風邪だった。だからあまり心配してないし、数日で熱も引くと思う。しかしアザゼルは違った。顔色を変えて俺に寄り添う。

「そんな、平気だから」

「平気なはずがない。そもそもハヤトが体調を崩すなど、おかしいのだ」

 言い切られて何の話かと問い返す。思わぬ答えが返ってきた。魔王と寿命を分かち合うために贄にされた俺は、すでにアザゼルの精を体内に受けて変質している。魔族と変わらぬ寿命と体質を得ていた。その俺が、こんな人間の風邪のような症状に冒されるなど、考えられない。

「本当に?」

「ああ、そなたは余と同じ。魔王と同等の生命力を保持している。よほどの病でなければ、体を蝕むはずがない」

 それで青い顔してたのか。怠い腕を伸ばし、アザゼルの頬に触れる。触れた肌がびっくりするくらい冷たかった。逆だ、俺の手が熱いんだ。数回撫でると腕が重くて、がくりと力が抜けた。途中で掴んだアザゼルの手が気持ちいい。掴んで導き、額に押し当てた。

「冷たい方が良いのか」

「うん。冷たくすると楽だな」

 頷いた途端、上掛けを持ち上げたアザゼルが隣に滑り込む。ぼんやりする頭は働かず、その行動を見守った。あっという間に服を消した彼の肌が、ぴたりと体に合わさる。ひんやりしたアザゼルの肌が心地よくて、自分から擦り寄った。

 ぐいっと抱き寄せられ、ぴたりと体を添わせる。何だろう、こういう時って人の鼓動に安心する。アザゼルの胸元に顔を埋め、髪を撫でる手に目を閉じた。

「少し眠れ」

 言葉に誘われて、全身の力を抜いた。俺はいつからコイツを信頼し始めたんだろう。首で鎖がちゃりと音を立てる。この鎖にも慣れた。首輪があるうちは、アザゼルは俺に執着してる。その証拠だろ? だから外される方が怖い。

 おずおずと伸ばした手を背中に回す。さらに密着した肌はしっとりと冷たくて、高すぎる熱を奪ってくれる。冷たい抱き枕みたいだ。口元が自然と緩んだ。病気になると気が弱くなるって聞くけど、今の状態がそうなのかな。

 何が原因か知らないが、具合が悪い時に誰がいてくれるのはほっとする。一人じゃないと実感できた。背中に回した手がざらりと鱗に触れる。鱗があるから体温が低いのか? 余計なことを考えて、さらに腕に力を込めた。熱のせいですぐ緩んでしまう。逃げられちゃうだろ。取り留めもなく考えが定まらず踊った。

「安心しろ、起きるまで離さぬ」

 起きても離さないくせに。心の中で悪態をつく。一度落ちた目蓋は重くて、開こうとしない。ぼんやりとした意識がぐるぐると吸い込まれるように回り、突然途切れた。
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