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15.状況の確認は重要よ
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「家族会議を始めよう」
重々しく話すお父様には悪いけれど、部屋の状況がおかしい。私を膝に乗せたレオポルド兄様、お母様に頭を抱き寄せられ、甘える姿勢のお父様。
穏やかな笑みを浮かべながら、軽く殺意を振り撒く叔母様。お相手を早く見つけないと、私達の身が危ないわ。
「会議になりませんわ」
だって、内容はほぼ確定していますもの。私の指摘に、お母様が指折り数え始めた。
「ジョルジュ王子は王族籍剥奪で、追放でしたわね。この辺はルフォルの貴族に任せましょう」
絶対にレオが奪うと思う。貴族の手で間接的に処理して、満足できる人じゃないもの。婚約時だって、作戦だと言い聞かせて我慢させるのは大変だった。ジョルジュ元王子、後どのくらい生きられるかしら。頭が軽いとはいえ、お気の毒だわ。
「俺がやる」
やる? 殺るの間違いよね。お母様はあっさりと「そう、任せるわ」と流してしまった。指が一本倒れる。
「国王陛下は……庶出の王女殿下を迎え入れるそうよ。ジュアン公爵家が庇っていたんですって」
叔母様が溜め息を吐いた。
「自称恋人の忘れ形見ね」
オータン子爵家の未婚令嬢は、王の愛人として子を成していた。出産時期としてはギリギリだ。王女だったが、次の子を産もうとしなかったのは、命を優先したためだろう。
王に愛されようと、嫁ぐことなく残った未婚令嬢に違いない。さらに彼女は父親不明とされる子を産んだ。醜聞でしかないが、それが王女となれば人の見る目は変わる。
叔母様は穏やかな笑みで、こう付け加えた。
「忘れ形見が、宝物である証拠などないのに」
意味ありげな一言は、不吉な響きで室内に落ちる。この部屋の五人は正確に意味を理解していた。母親と赤子の関係は確定だが、父親とされる男性は?
「私の仕掛けがうまくいきましたね」
死人に口なし。王の愛人はもう言い訳も嘆願もできない。ジュアン公爵家に預けられた子爵家の私生児が、王の血を引いているかどうか。真実を知る当事者はいなかった。
「そろそろ、騒ぎが起きます」
予言するように呟く私に、お母様はおっとりと笑顔を向けた。その指先は、お父様の頬を撫でている。
「オータン子爵家は、周囲から絶縁を言い渡されたのよね。貴族として終わりですし、きっと……」
濁した後半は「命も終わり」と続くはずだった。
「オータン子爵なら、逃走したぞ。まあ、包囲網が敷かれていたので、問題なく捕獲した」
膝に座らせた私の肩に顎を載せて、レオはぼそぼそと顛末を話し始めた。絶縁だけでなく、娘を失い孫を奪われた。身の危険を感じて、さっさと逃げたらしい。どうして悪党は、危険察知能力が高いのかしら。
ちらりと視線を向ける先で、お父様は満足そうだった。お母様はいつもの微笑みで、真意が読めない。
「捕獲、では動物みたいですわね」
おほほと笑って、使われた言葉を確認する。レオは平然と肯定した。
「動物? そんな上等な扱いはしていないぞ」
どんな扱いをしているのよ、と言いかけて呑み込んだ。世の中、知らない方がいいこともあるわ。
重々しく話すお父様には悪いけれど、部屋の状況がおかしい。私を膝に乗せたレオポルド兄様、お母様に頭を抱き寄せられ、甘える姿勢のお父様。
穏やかな笑みを浮かべながら、軽く殺意を振り撒く叔母様。お相手を早く見つけないと、私達の身が危ないわ。
「会議になりませんわ」
だって、内容はほぼ確定していますもの。私の指摘に、お母様が指折り数え始めた。
「ジョルジュ王子は王族籍剥奪で、追放でしたわね。この辺はルフォルの貴族に任せましょう」
絶対にレオが奪うと思う。貴族の手で間接的に処理して、満足できる人じゃないもの。婚約時だって、作戦だと言い聞かせて我慢させるのは大変だった。ジョルジュ元王子、後どのくらい生きられるかしら。頭が軽いとはいえ、お気の毒だわ。
「俺がやる」
やる? 殺るの間違いよね。お母様はあっさりと「そう、任せるわ」と流してしまった。指が一本倒れる。
「国王陛下は……庶出の王女殿下を迎え入れるそうよ。ジュアン公爵家が庇っていたんですって」
叔母様が溜め息を吐いた。
「自称恋人の忘れ形見ね」
オータン子爵家の未婚令嬢は、王の愛人として子を成していた。出産時期としてはギリギリだ。王女だったが、次の子を産もうとしなかったのは、命を優先したためだろう。
王に愛されようと、嫁ぐことなく残った未婚令嬢に違いない。さらに彼女は父親不明とされる子を産んだ。醜聞でしかないが、それが王女となれば人の見る目は変わる。
叔母様は穏やかな笑みで、こう付け加えた。
「忘れ形見が、宝物である証拠などないのに」
意味ありげな一言は、不吉な響きで室内に落ちる。この部屋の五人は正確に意味を理解していた。母親と赤子の関係は確定だが、父親とされる男性は?
「私の仕掛けがうまくいきましたね」
死人に口なし。王の愛人はもう言い訳も嘆願もできない。ジュアン公爵家に預けられた子爵家の私生児が、王の血を引いているかどうか。真実を知る当事者はいなかった。
「そろそろ、騒ぎが起きます」
予言するように呟く私に、お母様はおっとりと笑顔を向けた。その指先は、お父様の頬を撫でている。
「オータン子爵家は、周囲から絶縁を言い渡されたのよね。貴族として終わりですし、きっと……」
濁した後半は「命も終わり」と続くはずだった。
「オータン子爵なら、逃走したぞ。まあ、包囲網が敷かれていたので、問題なく捕獲した」
膝に座らせた私の肩に顎を載せて、レオはぼそぼそと顛末を話し始めた。絶縁だけでなく、娘を失い孫を奪われた。身の危険を感じて、さっさと逃げたらしい。どうして悪党は、危険察知能力が高いのかしら。
ちらりと視線を向ける先で、お父様は満足そうだった。お母様はいつもの微笑みで、真意が読めない。
「捕獲、では動物みたいですわね」
おほほと笑って、使われた言葉を確認する。レオは平然と肯定した。
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