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53.お腹が満ちれば怒りも薄れる
伯父様の尻を蹴飛ばし、ご先祖様の遺した手記を奪う。いいえ、表現が悪いわね。ちょっとお借りしたの。いずれ返すわ……数十年くらい借りるだけよ。
古代語で記された内容の半分は、意味不明だった。ルフォルの先祖はロマンチストだったのか、何かと詩的な表現を好む。そのため魔法道具の絵の隣に書かれた説明が、抽象的だった。雨を降らせた魔法道具の形も不明なので、片っ端から目を通す。
途中でうんざりして読むのをやめた。ル・ベル公爵家の分家、ル・メール侯爵が手記を解読し始めた。こういった古文書の研究が趣味なんですって。目を輝かせる彼に任せ、私達は壊れた門の外側で休憩を始めた。
まずは腹ごしらえだ。ドラゴン達が張り切って狩りに向かったので、野営料理に決まった。商人が運ばせた食材を前に、民が得意な得物で捌いていく。漁師は手際よく魚を、飯屋の女将さんは肉を切った。その脇で、農家の一団が賑やかに切った野菜と肉を串刺しにしていく。
「その串はどこからきたの?」
「あっちの小屋さ」
猟師のおじさんが豪快に笑って指さしたのは、武器を保管する小屋だと思うの。ということは、これ……元は矢だったんじゃない? 太い串に豪快に塊肉や野菜が突き刺さり、巨人用の料理に仕上がっていく。
人数も多いし、焼いてから分ければいいわね。私も手伝いを申し出たが、渡されたのはハーブ塩の瓶だった。これを少量ずつ串の食材に振っていく係だ。ドラゴンが仕留めた獲物は、騎士が剣で豪快に捌いていく。
その剣、まさか人を斬った経験はないでしょうね。聞きたいが、人前では口にしづらい質問だ。どこからか見つけた酒を、お父様が剣にかけていく。あれで消毒したつもりなんですもの……まあ、やらないよりマシでしょうか。
お母様達がいたら止めてくれただろう。でも私は止める気がないし、貴族も可能な範囲で協力している。このまま食事会にしましょう。全身ボコボコの伯父様は、腫れが酷くなって呻いている。農家のおばさんが、うるさいと眉を寄せて、傷口に薄切りの野菜を貼り付けた。それ、火傷の手当て方法じゃなかったかしら?
騒ぎながらも焼けた肉を分配し、野菜を齧り、高揚していた気分を落ち着ける。腹が空くと怒りやすくなるっていうし。
「食べさせてあげるよ、シャル」
「お断りするわ」
笑顔で串焼きを運んできたレオに、首を横に振って断る。手元の皿に盛られた、大量の料理の消費で忙しいの。貴族の接待なのか、挨拶がてら運ばれる肉や魚に少しずつ手をつける。全部食べるのは無理なので、手をつけた残りはリュシーに渡した。仲間と仲良く分けあって食べている。
「シャルリーヌ姫! わかりました」
さきほど手記を渡したル・メール侯爵が、頬を紅潮させて駆け寄る。さっと間に入ったレオに遮られるも、隙間から顔を覗かせた。変態を押し退ける研究者の熱意も、ちょっと怖いわね。
「あれは気象を変更するのではなく、ただ雨を降らせる道具です」
「つまり?」
「本国で作動させれば、雨が降りますよ。この手記によれば……」
そこからの話は長すぎて、聞き流してしまった。要は過去に本国で使用したけれど、何らかの理由で海を渡った先祖が持っていったのね。お年寄りと研究者って話が長いのよ。
古代語で記された内容の半分は、意味不明だった。ルフォルの先祖はロマンチストだったのか、何かと詩的な表現を好む。そのため魔法道具の絵の隣に書かれた説明が、抽象的だった。雨を降らせた魔法道具の形も不明なので、片っ端から目を通す。
途中でうんざりして読むのをやめた。ル・ベル公爵家の分家、ル・メール侯爵が手記を解読し始めた。こういった古文書の研究が趣味なんですって。目を輝かせる彼に任せ、私達は壊れた門の外側で休憩を始めた。
まずは腹ごしらえだ。ドラゴン達が張り切って狩りに向かったので、野営料理に決まった。商人が運ばせた食材を前に、民が得意な得物で捌いていく。漁師は手際よく魚を、飯屋の女将さんは肉を切った。その脇で、農家の一団が賑やかに切った野菜と肉を串刺しにしていく。
「その串はどこからきたの?」
「あっちの小屋さ」
猟師のおじさんが豪快に笑って指さしたのは、武器を保管する小屋だと思うの。ということは、これ……元は矢だったんじゃない? 太い串に豪快に塊肉や野菜が突き刺さり、巨人用の料理に仕上がっていく。
人数も多いし、焼いてから分ければいいわね。私も手伝いを申し出たが、渡されたのはハーブ塩の瓶だった。これを少量ずつ串の食材に振っていく係だ。ドラゴンが仕留めた獲物は、騎士が剣で豪快に捌いていく。
その剣、まさか人を斬った経験はないでしょうね。聞きたいが、人前では口にしづらい質問だ。どこからか見つけた酒を、お父様が剣にかけていく。あれで消毒したつもりなんですもの……まあ、やらないよりマシでしょうか。
お母様達がいたら止めてくれただろう。でも私は止める気がないし、貴族も可能な範囲で協力している。このまま食事会にしましょう。全身ボコボコの伯父様は、腫れが酷くなって呻いている。農家のおばさんが、うるさいと眉を寄せて、傷口に薄切りの野菜を貼り付けた。それ、火傷の手当て方法じゃなかったかしら?
騒ぎながらも焼けた肉を分配し、野菜を齧り、高揚していた気分を落ち着ける。腹が空くと怒りやすくなるっていうし。
「食べさせてあげるよ、シャル」
「お断りするわ」
笑顔で串焼きを運んできたレオに、首を横に振って断る。手元の皿に盛られた、大量の料理の消費で忙しいの。貴族の接待なのか、挨拶がてら運ばれる肉や魚に少しずつ手をつける。全部食べるのは無理なので、手をつけた残りはリュシーに渡した。仲間と仲良く分けあって食べている。
「シャルリーヌ姫! わかりました」
さきほど手記を渡したル・メール侯爵が、頬を紅潮させて駆け寄る。さっと間に入ったレオに遮られるも、隙間から顔を覗かせた。変態を押し退ける研究者の熱意も、ちょっと怖いわね。
「あれは気象を変更するのではなく、ただ雨を降らせる道具です」
「つまり?」
「本国で作動させれば、雨が降りますよ。この手記によれば……」
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