80 / 80
80.もう結構ですわ(最終話)
大きくなったお腹を撫でながら、私は溜め息を吐く。今年も旅行を計画していたのに、すぐに身籠るなんて。嬉しいから否定はしないけれど、これってレオのミスよね。興奮しすぎて暴発し、ヒットさせた彼が悪い。
睨みつけると、うっとりとした顔で頬を差し出す。ぱちんと叩けば、反対の頬が出てきた。もちろん、そちらも音を立てて引っ叩く。
「反省しているの?」
「もちろんだ、シャルの平手をもらえたんだから」
罰じゃなく、完全にご褒美になっているわ。
結婚式直後にお父様に後を押し付け、叔母様達と四人で逃げた。侍女も騎士も置いて、途中で二手に分かれる。街の奥さん達が協力してくれたので、追っ手を撒くのも難しくなかった。やはり味方につけるのは、奥さん達に限るわね。
逃げた先で、自堕落な生活を楽しむ。好きな時間に起きて、疲れたら寝て、お腹が空いたら食べる。その間に愛し合った。盛りのついた犬を相手に、時々命の危機を感じたけれど……概ね満足している。
もう一度旅行に行きたいと言ったのに、あの旅行でこの子を宿した。孫が楽しみなお父様とお母様は、ぴたりと旅行をやめた。私の仕事も分業して片付けてくれる。快適なのだけれど、窓から見える風景が同じなのが……。
「外出したいわ」
「シャルは俺の息の根を止めたいのかな?」
「散歩なら」
「万が一にも転んだら危ないだろう?」
疑問系なのに圧を感じるわ。お風呂に入るのも一人では許されなくて、レオがついてくるの。大きくなったお腹を撫でまわし、身体や髪を洗う。丁寧で助かるけれど、はあはあと息が荒いのはなぜかしら。
「産むときも立ち会いたい」
「いやよ」
この会話は毎夜の恒例だ。産む姿を目に焼き付けたい変態と、拒みたい私。平行線で交わる先はない。今は拒絶されて引き下がるけれど、そのうち根負けしそう。お腹に耳を当てて、幸せそうに目を閉じる……顔は美形の変態。
呆れちゃう時もあるけれど、この男を愛したのは私自身だわ。押し付けられた政略結婚ではなく、私が選んだ。
愛の重いユーグ叔父様を受け入れたセレーヌ叔母様のように。お父様がいないと死にたくなるお母様のように。私がいないと、息もできない夫がいてもいいじゃない。
「男の子と女の子、どちらがいい?」
「どちらでも……君に似ていたら最高だ」
あら、私は逆であなたに似た子が欲しいわ。外見の話で、愛の重さはお腹の中に忘れていいけれど。皆に「大きいな」と感心されるお腹を横にして、ベッドに寝転がる。明日は早かった……うっ!
「痛っ、いたいぃ……」
唸るように訴えた。寝転がる私を支えていたレオが、慌てて扉を開け放つ。
「であぇえええ! 産まれるぞ」
その合言葉、他に何かなかったの? 笑ったら、ずきんとお腹に抗議される。冷や汗が出て、何かが溢れてくる。もうだめ……痛みに転がり続けて数時間。夜明け前にようやく産まれた。
「早かったわね」
「おめでとう、シャルリーヌ」
「シャル、ありがとう」
たくさんかかる声に返事もできず、私は気を失うように眠った。しばらく起こさないで頂戴。どうせ起きたら忙しいんでしょう? 少しの間、眠らせてほしい。
目が覚めて、大量の名前が書かれたリストを突きつけられるのも。うんざりするほど訪問者が駆けつけ、お祝いの返信で手が痛くなるのも。幸せの延長だと思ったら、耐えられる……わけないでしょう! もう結構ですわ、放っておいてくださいませ。
終わり
*********************
完結です。お付き合いありがとうございました(o´-ω-)o)ペコッ
最近、タイトルを最後に持ってくるのがマイブームでして( ̄ー ̄)ニヤ... としてもらえたら嬉しいです。
睨みつけると、うっとりとした顔で頬を差し出す。ぱちんと叩けば、反対の頬が出てきた。もちろん、そちらも音を立てて引っ叩く。
「反省しているの?」
「もちろんだ、シャルの平手をもらえたんだから」
罰じゃなく、完全にご褒美になっているわ。
結婚式直後にお父様に後を押し付け、叔母様達と四人で逃げた。侍女も騎士も置いて、途中で二手に分かれる。街の奥さん達が協力してくれたので、追っ手を撒くのも難しくなかった。やはり味方につけるのは、奥さん達に限るわね。
逃げた先で、自堕落な生活を楽しむ。好きな時間に起きて、疲れたら寝て、お腹が空いたら食べる。その間に愛し合った。盛りのついた犬を相手に、時々命の危機を感じたけれど……概ね満足している。
もう一度旅行に行きたいと言ったのに、あの旅行でこの子を宿した。孫が楽しみなお父様とお母様は、ぴたりと旅行をやめた。私の仕事も分業して片付けてくれる。快適なのだけれど、窓から見える風景が同じなのが……。
「外出したいわ」
「シャルは俺の息の根を止めたいのかな?」
「散歩なら」
「万が一にも転んだら危ないだろう?」
疑問系なのに圧を感じるわ。お風呂に入るのも一人では許されなくて、レオがついてくるの。大きくなったお腹を撫でまわし、身体や髪を洗う。丁寧で助かるけれど、はあはあと息が荒いのはなぜかしら。
「産むときも立ち会いたい」
「いやよ」
この会話は毎夜の恒例だ。産む姿を目に焼き付けたい変態と、拒みたい私。平行線で交わる先はない。今は拒絶されて引き下がるけれど、そのうち根負けしそう。お腹に耳を当てて、幸せそうに目を閉じる……顔は美形の変態。
呆れちゃう時もあるけれど、この男を愛したのは私自身だわ。押し付けられた政略結婚ではなく、私が選んだ。
愛の重いユーグ叔父様を受け入れたセレーヌ叔母様のように。お父様がいないと死にたくなるお母様のように。私がいないと、息もできない夫がいてもいいじゃない。
「男の子と女の子、どちらがいい?」
「どちらでも……君に似ていたら最高だ」
あら、私は逆であなたに似た子が欲しいわ。外見の話で、愛の重さはお腹の中に忘れていいけれど。皆に「大きいな」と感心されるお腹を横にして、ベッドに寝転がる。明日は早かった……うっ!
「痛っ、いたいぃ……」
唸るように訴えた。寝転がる私を支えていたレオが、慌てて扉を開け放つ。
「であぇえええ! 産まれるぞ」
その合言葉、他に何かなかったの? 笑ったら、ずきんとお腹に抗議される。冷や汗が出て、何かが溢れてくる。もうだめ……痛みに転がり続けて数時間。夜明け前にようやく産まれた。
「早かったわね」
「おめでとう、シャルリーヌ」
「シャル、ありがとう」
たくさんかかる声に返事もできず、私は気を失うように眠った。しばらく起こさないで頂戴。どうせ起きたら忙しいんでしょう? 少しの間、眠らせてほしい。
目が覚めて、大量の名前が書かれたリストを突きつけられるのも。うんざりするほど訪問者が駆けつけ、お祝いの返信で手が痛くなるのも。幸せの延長だと思ったら、耐えられる……わけないでしょう! もう結構ですわ、放っておいてくださいませ。
終わり
*********************
完結です。お付き合いありがとうございました(o´-ω-)o)ペコッ
最近、タイトルを最後に持ってくるのがマイブームでして( ̄ー ̄)ニヤ... としてもらえたら嬉しいです。
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(115件)
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫(9/10受賞作発売中!)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
【完結】え、別れましょう?
須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」
「は?え?別れましょう?」
何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。
ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?
だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。
※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。
ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。
真実の愛を見つけた婚約者(殿下)を尊敬申し上げます、婚約破棄致しましょう
さこの
恋愛
「真実の愛を見つけた」
殿下にそう告げられる
「応援いたします」
だって真実の愛ですのよ?
見つける方が奇跡です!
婚約破棄の書類ご用意いたします。
わたくしはお先にサインをしました、殿下こちらにフルネームでお書き下さいね。
さぁ早く!わたくしは真実の愛の前では霞んでしまうような存在…身を引きます!
なぜ婚約破棄後の元婚約者殿が、こんなに美しく写るのか…
私の真実の愛とは誠の愛であったのか…
気の迷いであったのでは…
葛藤するが、すでに時遅し…
お姉さまが家を出て行き、婚約者を譲られました
さこの
恋愛
姉は優しく美しい。姉の名前はアリシア私の名前はフェリシア
姉の婚約者は第三王子
お茶会をすると一緒に来てと言われる
アリシアは何かとフェリシアと第三王子を二人にしたがる
ある日姉が父に言った。
アリシアでもフェリシアでも婚約者がクリスタル伯爵家の娘ならどちらでも良いですよね?
バカな事を言うなと怒る父、次の日に姉が家を、出た
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
〈完結〉八年間、音沙汰のなかった貴方はどちら様ですか?
詩海猫(9/10受賞作発売中!)
恋愛
私の家は子爵家だった。
高位貴族ではなかったけれど、ちゃんと裕福な貴族としての暮らしは約束されていた。
泣き虫だった私に「リーアを守りたいんだ」と婚約してくれた侯爵家の彼は、私に黙って戦争に言ってしまい、いなくなった。
私も泣き虫の子爵令嬢をやめた。
八年後帰国した彼は、もういない私を探してるらしい。
*文字数的に「短編か?」という量になりましたが10万文字以下なので短編です。この後各自のアフターストーリーとか書けたら書きます。そしたら10万文字超えちゃうかもしれないけど短編です。こんなにかかると思わず、「転生王子〜」が大幅に滞ってしまいましたが、次はあちらに集中予定(あくまで予定)です、あちらもよろしくお願いします*
王太子殿下から婚約破棄されたのは冷たい私のせいですか?
ねーさん
恋愛
公爵令嬢であるアリシアは王太子殿下と婚約してから十年、王太子妃教育に勤しんで来た。
なのに王太子殿下は男爵令嬢とイチャイチャ…諫めるアリシアを悪者扱い。「アリシア様は殿下に冷たい」なんて男爵令嬢に言われ、結果、婚約は破棄。
王太子妃になるため自由な時間もなく頑張って来たのに、私は駒じゃありません!
ん?サムネに転生した自称聖女ってあるけど、転生者も聖女も作中では出てこなかったような・・・
あえていうなら、ヒロインのご先祖さま(海を干上がらさせそうになったり、塩抜きの埴輪作った古代人)が転生者かな?くらいw
_( _*´ ꒳ `*)_あれ? サムネってタグですか? 確認しますね
80話 もう結構ですわ👋😞レオ君がて目覚めていた⁉️(>_<)ヒットって(*/□\*)アレ!レオ君の進化❓が目についてしまった😅こうなると子供の結婚や婚約にレオ君がどう反応するのか(゚∀゚*)(*゚∀゚)ワクワク!完結お疲れ様です❗😃🎵。
レオの野生が/(^o^)\荒ぶって昂って暴走したようです。子供が生まれたら、絶対にまた暴走しますね_( _*´ ꒳ `*)_奥様を休ませてあげてくださいな。完結までありがとうございました
79.結婚式の準備が早すぎて🚙💨レースでオーバードレスも作れた⁉️お父様とお母様の間に合ったのね😵💨。
これ以上結婚式が遅れたら、ドレスもレースのドレープ付きそうでしたね/(^o^)\たーいへん