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本編
151.意外な人の驚くべき助言
噂をなかったことにするため、夜会で盛り上がる大広間へコルネリアは顔を出した。襲われた事実などなかったと、エック兄様が笑顔で否定していく。言葉に出さなければ、嘘をついたことにならないわ。逆に私とクラウスは控え室から出なかった。
何かあったと誤解されるのが目的よ。本来、控の間なのだから休む場所なの。そこで長時間過ごそうと、問題はないのよ。ただ社交を放棄しているだけ。たいていの貴族は社交目的で夜会に参加するから、引っ込んでいるなんておかしい、と勘繰る人もいる。
「情報戦でさえ、あなた様に勝てる気がしませんよ」
クラウスが困ったように肩を竦める。私の右側に座るクラウスの仕草に、ふふっと笑いが漏れた。最上級の褒め言葉ね。
「トリア、すごく綺麗だ」
クラウス以上にうっとりしているのは、向かいに腰掛けるアデリナだった。着飾ったお人形が好きな彼女にとって、夜会仕様の私は見惚れる対象よ。銀髪に青い瞳も、褐色よりの肌も、アデリナの好みらしい。白すぎる肌は触れるのが怖いとか。
力が強く逞しいアデリナらしい感想だった。フォルト兄様は満足げに、そうだろうと頷いている。婚約者というより、同じ価値観の友人同士に見えた。そういう関係もありだと思うわ。ガブリエラ様も最初はそうだと聞いたから。きっといい夫婦になれるはず。
「ところで、トリア。なぜ夜会に戻らないんだ?」
先ほどの説明をもう忘れたのね。いえ……聞いていなかった?
「私が襲われたと勘違いさせるためですわ。噂で貴族を篩にかけます」
「よくわからんが、エック兄の案だろ」
「ルヴィ兄様も賛同しております」
ふーんと考えるフォルト兄様の唇が尖って、不満そうに顔をしかめる。
「やらかした連中を派手につるし上げるだけでいいだろ」
驚いて私の動きが止まる。カップに伸ばしかけた手を止めて、今の言葉を嚙み締めた。私がここで隠れるより、表にいる状態で犯人を目立つように連れていく。何かあったと勘違いさせ、そのうえで私やコルネリアが無事だと吹聴する。一般的にはこれも効果が高いわ。
問題なかったから夜会の広間に顔を出したのに……と強調したほうが、後々つつきやすいかもしれない。隣のクラウスも「なるほど」と納得していた。有効な策だわ。
「フォルト兄様の直感、本能かしら? 馬鹿にできないわね」
聞こえないよう小声で口にしたのに、野生動物のような兄には聞こえたらしい。にやっと笑って、胸を張った。
「せっかくですもの、皆で広間に戻りましょうか」
提案すれば、フォルト兄様が一番に立ち上がった。私に手を差し伸べようとして、クラウスに視線を向ける。婚約者がいるから兄の手を借りない、そう判断したようで引っ込めた。迷ったあと、隣のアデリナに腕を貸す。
「こう、か?」
先に立って腕を絡めたクラウスと私を見て、アデリナが真似をした。まだぎこちなさが残るものの、長の娘であったアデリナもそれなりの教育は受けている。作法に詳しくはないが、他国での振る舞いは知っていた。
控えの間を出た途端、驚いた顔の侍従が避ける。扉に耳をつけて、中の様子を窺っていたみたい。クラウスが頷くので、顔は覚えたようね。ライフアイゼン公爵家に相応しくない使用人は、処分していただきましょう。どこかの貴族に金を掴まされた可能性が高いもの。
微笑みを浮かべ、優雅に足を進める。広間へ入ると、一瞬で人々の視線が集まった。
何かあったと誤解されるのが目的よ。本来、控の間なのだから休む場所なの。そこで長時間過ごそうと、問題はないのよ。ただ社交を放棄しているだけ。たいていの貴族は社交目的で夜会に参加するから、引っ込んでいるなんておかしい、と勘繰る人もいる。
「情報戦でさえ、あなた様に勝てる気がしませんよ」
クラウスが困ったように肩を竦める。私の右側に座るクラウスの仕草に、ふふっと笑いが漏れた。最上級の褒め言葉ね。
「トリア、すごく綺麗だ」
クラウス以上にうっとりしているのは、向かいに腰掛けるアデリナだった。着飾ったお人形が好きな彼女にとって、夜会仕様の私は見惚れる対象よ。銀髪に青い瞳も、褐色よりの肌も、アデリナの好みらしい。白すぎる肌は触れるのが怖いとか。
力が強く逞しいアデリナらしい感想だった。フォルト兄様は満足げに、そうだろうと頷いている。婚約者というより、同じ価値観の友人同士に見えた。そういう関係もありだと思うわ。ガブリエラ様も最初はそうだと聞いたから。きっといい夫婦になれるはず。
「ところで、トリア。なぜ夜会に戻らないんだ?」
先ほどの説明をもう忘れたのね。いえ……聞いていなかった?
「私が襲われたと勘違いさせるためですわ。噂で貴族を篩にかけます」
「よくわからんが、エック兄の案だろ」
「ルヴィ兄様も賛同しております」
ふーんと考えるフォルト兄様の唇が尖って、不満そうに顔をしかめる。
「やらかした連中を派手につるし上げるだけでいいだろ」
驚いて私の動きが止まる。カップに伸ばしかけた手を止めて、今の言葉を嚙み締めた。私がここで隠れるより、表にいる状態で犯人を目立つように連れていく。何かあったと勘違いさせ、そのうえで私やコルネリアが無事だと吹聴する。一般的にはこれも効果が高いわ。
問題なかったから夜会の広間に顔を出したのに……と強調したほうが、後々つつきやすいかもしれない。隣のクラウスも「なるほど」と納得していた。有効な策だわ。
「フォルト兄様の直感、本能かしら? 馬鹿にできないわね」
聞こえないよう小声で口にしたのに、野生動物のような兄には聞こえたらしい。にやっと笑って、胸を張った。
「せっかくですもの、皆で広間に戻りましょうか」
提案すれば、フォルト兄様が一番に立ち上がった。私に手を差し伸べようとして、クラウスに視線を向ける。婚約者がいるから兄の手を借りない、そう判断したようで引っ込めた。迷ったあと、隣のアデリナに腕を貸す。
「こう、か?」
先に立って腕を絡めたクラウスと私を見て、アデリナが真似をした。まだぎこちなさが残るものの、長の娘であったアデリナもそれなりの教育は受けている。作法に詳しくはないが、他国での振る舞いは知っていた。
控えの間を出た途端、驚いた顔の侍従が避ける。扉に耳をつけて、中の様子を窺っていたみたい。クラウスが頷くので、顔は覚えたようね。ライフアイゼン公爵家に相応しくない使用人は、処分していただきましょう。どこかの貴族に金を掴まされた可能性が高いもの。
微笑みを浮かべ、優雅に足を進める。広間へ入ると、一瞬で人々の視線が集まった。
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