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本編
180.クラウスを信じているから知りたい
ローヴァイン侯爵家を調査するか迷う。クラウスに聞けば簡単よ、彼はきっと隠さないわ。でも……土足で踏み込んでいい場所かどうか。妻になるんだから構わないと考えるか、家族でも聖域は荒らせないと思うべきか。
婚約式にクラウスの家族は出席しなかった。それ以前から、クラウスは家族の話をしない。私が兄達やジルヴィアの話をしても、微笑んで聞くだけ。相槌は打つけれど、彼の家族について聞いた記憶はないの。加えて、ジルヴィアへの反応……。
一族の当主ならば、親族が集まれば赤子と触れ合う機会もあるでしょう? 抱き上げる必要はなくても、幼子を撫でるくらいは珍しくない。親しくなくとも、一族の子に祝福を与えることがあるはず。そういった雰囲気が全くなかった。
初めて見る未知の生き物……そんな対応は滅多に見ないわ。きっと誰の子が相手でも同じでしょう。普段はスマートにあれこれこなす男だから、余計に気になった。
「ルヴィ兄様だったら、どうなさいます?」
「真っすぐ正面から問う。人伝てに知られるよりマシだろう」
「私もそう考えるぞ。聞いてくれたら答えたのに……と思わせれば、関係がこじれる。クラウスが口を濁すなら、陰で調べればよい」
ガブリエラ様が付け足した。マルグリットのドレスを決める場に紛れ込んだ私は、兄と義母の意見に頷いた。黙って聞いていたマルグリットが口を開く。
「逆の立場でお考えになれば、答えが出るのではありませんか? もし家族の話で秘密があって、ローヴァイン侯爵様が裏でこそこそ調べたら……」
「ありがとう、マルグリット。そうね、私ならきっと腹を立てるわ」
不信感を持つかもしれない。私に聞けばいいのに、裏で調べるなんて! と怒って距離を取るわ。話してくれると信じなかった、悪く考えればそんな意味になるから。悪いほうへ考えるでしょうね。
「直接尋ねることにするわ。だから、今夜は彼を泊めるわね」
「いや、それは話が別だろ」
ルヴィ兄様が慌てて止めるけれど、別に私の部屋に寝かせるとは言ってないわよ? 婚約中だから、奥の宮で寝かせればいいと肩を竦める。
「構わん。私が許可しよう、奥の宮で預かってもよいぞ」
「客間に泊まることが問題なのですか?」
純粋すぎて、何も心配していないマルグリット。いえ、わかっていて口にしたみたいね。貴族に揚げ足を取られるような私ではない、と信じてくれたの?
「ルヴィ兄様はクラウスを獣のようにお考えなのね。覚えておきます」
「違う、違うぞ、そうじゃなくて……」
慌ててもごもごと言い訳を並べる。周囲から見た目がどうとか、噂になったら辛いのは女性である私のほうだとか。ぷんと顔を逸らした私が怒っていると思ったのね。ふふっと笑って、ルヴィ兄様へお礼を告げた。
「わかっておりますわ。ご心配ありがとうございます」
「……っ、心臓に悪い。トリアに嫌われたら泣くぞ」
見てみたいと笑うマルグリットに、ガブリエラ様は「泣くと面倒だぞ」と忠告する。昔喧嘩して泣かせたことがあったわね。思い出して天井を見つめてしまった。何か知っていると踏んで、マルグリットが問いかけの眼差しを向ける。
「クラウスを呼んでいますので、私はこれで」
にっこりと微笑み、追及するマルグリットの視線から逃げた。ルヴィ兄様の威厳や今後の夫婦生活に関わる話は、まだ秘密でよさそう。いつか、夫婦喧嘩したら教えて差し上げますわ。
婚約式にクラウスの家族は出席しなかった。それ以前から、クラウスは家族の話をしない。私が兄達やジルヴィアの話をしても、微笑んで聞くだけ。相槌は打つけれど、彼の家族について聞いた記憶はないの。加えて、ジルヴィアへの反応……。
一族の当主ならば、親族が集まれば赤子と触れ合う機会もあるでしょう? 抱き上げる必要はなくても、幼子を撫でるくらいは珍しくない。親しくなくとも、一族の子に祝福を与えることがあるはず。そういった雰囲気が全くなかった。
初めて見る未知の生き物……そんな対応は滅多に見ないわ。きっと誰の子が相手でも同じでしょう。普段はスマートにあれこれこなす男だから、余計に気になった。
「ルヴィ兄様だったら、どうなさいます?」
「真っすぐ正面から問う。人伝てに知られるよりマシだろう」
「私もそう考えるぞ。聞いてくれたら答えたのに……と思わせれば、関係がこじれる。クラウスが口を濁すなら、陰で調べればよい」
ガブリエラ様が付け足した。マルグリットのドレスを決める場に紛れ込んだ私は、兄と義母の意見に頷いた。黙って聞いていたマルグリットが口を開く。
「逆の立場でお考えになれば、答えが出るのではありませんか? もし家族の話で秘密があって、ローヴァイン侯爵様が裏でこそこそ調べたら……」
「ありがとう、マルグリット。そうね、私ならきっと腹を立てるわ」
不信感を持つかもしれない。私に聞けばいいのに、裏で調べるなんて! と怒って距離を取るわ。話してくれると信じなかった、悪く考えればそんな意味になるから。悪いほうへ考えるでしょうね。
「直接尋ねることにするわ。だから、今夜は彼を泊めるわね」
「いや、それは話が別だろ」
ルヴィ兄様が慌てて止めるけれど、別に私の部屋に寝かせるとは言ってないわよ? 婚約中だから、奥の宮で寝かせればいいと肩を竦める。
「構わん。私が許可しよう、奥の宮で預かってもよいぞ」
「客間に泊まることが問題なのですか?」
純粋すぎて、何も心配していないマルグリット。いえ、わかっていて口にしたみたいね。貴族に揚げ足を取られるような私ではない、と信じてくれたの?
「ルヴィ兄様はクラウスを獣のようにお考えなのね。覚えておきます」
「違う、違うぞ、そうじゃなくて……」
慌ててもごもごと言い訳を並べる。周囲から見た目がどうとか、噂になったら辛いのは女性である私のほうだとか。ぷんと顔を逸らした私が怒っていると思ったのね。ふふっと笑って、ルヴィ兄様へお礼を告げた。
「わかっておりますわ。ご心配ありがとうございます」
「……っ、心臓に悪い。トリアに嫌われたら泣くぞ」
見てみたいと笑うマルグリットに、ガブリエラ様は「泣くと面倒だぞ」と忠告する。昔喧嘩して泣かせたことがあったわね。思い出して天井を見つめてしまった。何か知っていると踏んで、マルグリットが問いかけの眼差しを向ける。
「クラウスを呼んでいますので、私はこれで」
にっこりと微笑み、追及するマルグリットの視線から逃げた。ルヴィ兄様の威厳や今後の夫婦生活に関わる話は、まだ秘密でよさそう。いつか、夫婦喧嘩したら教えて差し上げますわ。
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