【完結】妻ではなく他人ですわ【書籍化決定】

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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番外編

03.個性的な三人の我が子 ***皇妃マルグリット

 皇妃マルグリット、この名は私には重い。けれど、私を認めてくれた人と歩んでいけるのなら……悪くないと思えるの。友人も家族も増えて、濃密な毎日を過ごしてきた。三人に増えた可愛い子供達も、久しぶりの外出に大はしゃぎね。

「お母様、本当におじい様達に会いにいくの?」

「そうよ」

 末のゲアリンデに頷く。嬉しそうに準備するトランクに、なぜぬいぐるみが大量に詰め込まれているのかしら? 理由を聞いたら、普段一緒に暮らせないから私達の代わりらしい。

「このウサギが私、お姉様はこっちの猫ちゃん。お兄様はネズミ、お父様とお母様は熊にしたのよ」

 他にもトリア叔母様だの、アデリナ叔母様だの。名前を並べながら十数体のぬいぐるみを箱に押し込む。好きにさせてあげましょう。

 長男のレオンハルトは絵の道具を前に唸っていた。どれを持っていくかで迷っているのね。

「リンデが大量の人形を担いでいくと聞いたから、僕は少し減らそうと思って」

「あらあら。男の子は荷物が少ないから、全部積めると思うわ」

 アドバイスをして、絵の具や筆をすべて持っていくよう手配した。周囲をよく見て判断するのはいいけれど、自分を後回しにするのはダメなところ。でもレオンハルトらしいわ。

 一番安心な長女ジルヴィアは、すでに荷造りを終えていた。さすがに書類は置いていくみたい。机の上へ綺麗に積み上げられていた。何気なく上の一枚を手に取ったら、既に処理済み? もしかして……山を崩さないように二つに分けたら、下のほうまで署名や押印が終わっていた。

「……全部、終わったの?」

「はい。出かけるので処理しないと困りますし」

 にっこりと笑顔で告げる顔をじっと見つめる。隈はなさそう。ならば、夜に無理したわけじゃないのね。ほっとしながら、嫡子であるジルヴィアの頬に触れた。

「睡眠を削るくらいなら、書類を陛下に戻してね」

「大丈夫ですわ、マルグリットお母様。私、有能ですもの」

 実母であるヴィクトーリアにそっくり。外見だけでなく、こういった口調や出来の良さまで……きっと立派な女帝になるわ。当代のルートヴィッヒ陛下に続き、有能な皇帝が続くことになる。リヒター帝国の未来は安泰ね。

「本当にそうね。リンデの荷造りを手伝ってくれる? 人形が箱に入らないんですって」

「またですか? 前回も大量に持って行ったのに」

 懲りない子。そんなニュアンスで笑い合い、長女を末っ子の元へ送り出す。皇帝と皇妃が揃って宮殿を留守にするわけにいかないので、出かけるのは私と子供達だけ。ああ、途中でアデリナが合流して護衛をしてくれるのよね。お土産に可愛いリボンでも贈りましょう。

 宝石類より、可愛い小物を好む。圧倒的な強さを持つのに、愛らしい義妹への土産を探しに行くため踵を返した。




 揺れる馬車の中、はしゃいでいたのは最初だけ。酔ったレオンハルトが横になり、ジルヴィアの膝に頭を乗せている。しらっとした顔で「お兄様は図々しい」と唇を尖らせるゲアリンデも、顔色が悪かった。二人揃って馬車酔い?

「リンデ、顔色が悪いわ。辛かったら私に寄り掛かっていいのよ」

「……お姉様のお膝がいいです」

 驚いて目を丸くする。え? 私、母親なのに断られちゃったの? 続いて口元が緩んだ。

「困ったわね。ジルヴィアの膝は複数ないわよ?」

「順番待ちします」

 譲らない末っ子の言葉に、今度こそ我慢できずに大笑いした。声を立てて笑ったのなんて、どのくらいぶりかしら? 先代皇帝夫妻によい土産話が出来たわ。アデリナの合流まで、退屈しなくて済みそう。
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