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番外編
06.俺らしく勝手にする ***フォルクハルト
マルグリット義姉上と約束がある。そう言って、アデリナが出かけて行った。今日は一緒に鍛錬しようと思っていたのに……がっかりしながら、部下達の元へ足を運ぶ。呆れ顔のハイノに「だから言ったでしょう。もう忘れたんですか」と叱られた。
数日前に聞いていたが、今日だと思わなかったんだ。ぼやいたら、やれやれと首を横に振る。無礼だの不敬だの。そんな雑音は昔から無視してきた。ハイノは俺の手伝いをしてくれ、足りない部分を補ってくれる。大切にしなさいと言ったのは、義母上か……トリアだったかもしれない。
「仕方ない。お前らと打ち合うか」
宣言した途端、数人がさっと武器を構えた。騎士団は基本的に剣が多いが、個々に得意な武器がある場合は別だ。鞭や槍、弓など。好きな武器を扱うことが許された。その理由は……強ければいいからだ。逆に苦手な武器で命のやり取りをする意味はない。
殺されたら終わりなんだぞ? 戦場へ向かうのに、なぜ苦手な武器を扱うのか。元帥になってすぐの頃、剣は苦手とぼやく部下に言い聞かせた。好きなものを持って来いと命じたら、鞭を扱うらしい。戦ってみれば、剣とは比べ物にならないほど扱い慣れていた。
普段相手にしない武器だったこともあり、非常に戦いづらい。それがいいと気に入り、皆に自由にさせた。都でふんぞり返っている貴族からは、見栄えが悪いと指摘された。だからなんだ? 戦いに行くのは俺達だ。戦わない人間が、なぜ意見する!
俺が吠える前に、トリアが遣り込めた。優秀で美しく、誰より優しい妹だ。もし血が繋がってなければ、惚れていたかもしれない。強さも申し分なかったし。
アデリナと出会った今になればわかる。俺の妻はアデリナしかいない。泥をかぶる戦場を走り、一緒に笑い合う。そんな関係が夫婦なら、俺のアデリナが最高だろう。妹のトリアは俺をよく理解していたってことだ。何しろ、アデリナを連れてきたのは女傑二人だからな。
兄上達は二人揃って頭がよく、俺は会話に入れない。それでも馬鹿にされなかった。かみ砕いて話すエック兄、お前はそれでいいと認めてくれるルヴィ兄。戦いでしか返せないから、攻め込む敵を容赦なく屠った。
元帥は軍の最高位らしいが、強さの証なら悪くない。妙な書類への署名が増えたのは不満だが、義務だと押し切られた。書類の整理や手伝いで、ハイノには世話になっている。将軍職を得たときは喜んでくれると思ったのに「まだお守りですか!」と叫ばれたっけ。
ハイノは砦や城で俺の手伝いをする。傍らには妻のアデリナが並び、肩を並べて戦った。背を預けられる存在がいるのは、安心する。ハイノと同じ将軍になったティムは、驚くほど強くなった。部下達を統率し、俺より上手に運用する。
皇族の一員に生まれたが、俺には戦う以外の能がない。それを許してくれた家族がいるから、俺は腐らずに済んだ。今になれば運が良かったな。
鞭をかわして絡め捕り、引っ張って倒す。横から突き出された槍の穂を、手甲で逸らした。考え事をしていても動く体は、部下達との鍛錬を楽しんでいる。息が切れるまで戦い、皆で木陰に転がった。見上げた空は曇っている。
「雨が降らなければいいな」
ふとこぼれた言葉に、部下達が驚いた顔をする。なんだ? 尋ねる意味でそちらを向けば「いや……ボスらしくないと思って」と返ってきた。俺らしくない、か?
「雨も上等! って突っ走る人ですから」
げらげら笑うティムの額を小突いて、ふと思いつきで叫んだ。
「アデリナを追いかけるぞ!」
部下が口々に「やめたほうが」「ボス、それは重いです」などと止めに入るが、関係ない。俺が迎えに行くと決めたんだ。それに、義母上や父上の顔も見たいからな。
数日前に聞いていたが、今日だと思わなかったんだ。ぼやいたら、やれやれと首を横に振る。無礼だの不敬だの。そんな雑音は昔から無視してきた。ハイノは俺の手伝いをしてくれ、足りない部分を補ってくれる。大切にしなさいと言ったのは、義母上か……トリアだったかもしれない。
「仕方ない。お前らと打ち合うか」
宣言した途端、数人がさっと武器を構えた。騎士団は基本的に剣が多いが、個々に得意な武器がある場合は別だ。鞭や槍、弓など。好きな武器を扱うことが許された。その理由は……強ければいいからだ。逆に苦手な武器で命のやり取りをする意味はない。
殺されたら終わりなんだぞ? 戦場へ向かうのに、なぜ苦手な武器を扱うのか。元帥になってすぐの頃、剣は苦手とぼやく部下に言い聞かせた。好きなものを持って来いと命じたら、鞭を扱うらしい。戦ってみれば、剣とは比べ物にならないほど扱い慣れていた。
普段相手にしない武器だったこともあり、非常に戦いづらい。それがいいと気に入り、皆に自由にさせた。都でふんぞり返っている貴族からは、見栄えが悪いと指摘された。だからなんだ? 戦いに行くのは俺達だ。戦わない人間が、なぜ意見する!
俺が吠える前に、トリアが遣り込めた。優秀で美しく、誰より優しい妹だ。もし血が繋がってなければ、惚れていたかもしれない。強さも申し分なかったし。
アデリナと出会った今になればわかる。俺の妻はアデリナしかいない。泥をかぶる戦場を走り、一緒に笑い合う。そんな関係が夫婦なら、俺のアデリナが最高だろう。妹のトリアは俺をよく理解していたってことだ。何しろ、アデリナを連れてきたのは女傑二人だからな。
兄上達は二人揃って頭がよく、俺は会話に入れない。それでも馬鹿にされなかった。かみ砕いて話すエック兄、お前はそれでいいと認めてくれるルヴィ兄。戦いでしか返せないから、攻め込む敵を容赦なく屠った。
元帥は軍の最高位らしいが、強さの証なら悪くない。妙な書類への署名が増えたのは不満だが、義務だと押し切られた。書類の整理や手伝いで、ハイノには世話になっている。将軍職を得たときは喜んでくれると思ったのに「まだお守りですか!」と叫ばれたっけ。
ハイノは砦や城で俺の手伝いをする。傍らには妻のアデリナが並び、肩を並べて戦った。背を預けられる存在がいるのは、安心する。ハイノと同じ将軍になったティムは、驚くほど強くなった。部下達を統率し、俺より上手に運用する。
皇族の一員に生まれたが、俺には戦う以外の能がない。それを許してくれた家族がいるから、俺は腐らずに済んだ。今になれば運が良かったな。
鞭をかわして絡め捕り、引っ張って倒す。横から突き出された槍の穂を、手甲で逸らした。考え事をしていても動く体は、部下達との鍛錬を楽しんでいる。息が切れるまで戦い、皆で木陰に転がった。見上げた空は曇っている。
「雨が降らなければいいな」
ふとこぼれた言葉に、部下達が驚いた顔をする。なんだ? 尋ねる意味でそちらを向けば「いや……ボスらしくないと思って」と返ってきた。俺らしくない、か?
「雨も上等! って突っ走る人ですから」
げらげら笑うティムの額を小突いて、ふと思いつきで叫んだ。
「アデリナを追いかけるぞ!」
部下が口々に「やめたほうが」「ボス、それは重いです」などと止めに入るが、関係ない。俺が迎えに行くと決めたんだ。それに、義母上や父上の顔も見たいからな。
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