【完結】妻ではなく他人ですわ【書籍化決定】

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

文字の大きさ
50 / 222
本編

49.皇帝陛下のお見合いを打診

しおりを挟む
 他国から血を入れるため、ルヴィお兄様はプロイス王国ベランジェール王女との婚約を受け入れた。妻となる女性に多少の難があっても、支える家族がいる。エック兄様が政の面を、フォルト兄様は武力で。裏切らぬ家族の支えが、ルヴィ兄様の根底にあった。

 子を産む妻を、さほど重要視しなかったのは弊害の一つね。他のすべてが満たされていたから、ここは欠けていても構わないと妥協させてしまった。けれど、私が他国の血を取り入れる。薄まった血を持つ直系皇女が誕生したことで、状況は一変した。

 ルヴィ兄様が政略結婚をする意味、そのものが消えたの。国力を強化する必要はないし、他国との争いも表面上はない。水面下の話は、いつだって存在するけれど。どこの国もそれは同じ。表立って理由がなければ、国内貴族から選ぶのが順当だった。

 エック兄様と貴族名鑑を開き、真剣に検討する。皇妃になれる教育水準と考えるなら、侯爵家以上だわ。その上で、公爵家は今回除いた。理由は二つあり、一つは血が近いこと。もう一つが、公爵家が二つ消えること。

 騒動を起こしたノイベルト家とギーレン家は候補から除外、ルーベンス公爵家は現状維持だけれど年頃のご令嬢がいなかった。ライフアイゼン公爵家は、当主であるじぃの孫になるけれど、すでにエック兄様と婚約中で仲が良い。引き離すのは気の毒だった。

 消去法で浮かんできたのが、七つある侯爵家なの。ルヴィ兄様が二十五歳、年上はすべて結婚済みだった。年下も結婚していたり、婚約済みよ。当然ね、高位貴族のご令嬢で残っていたら、問題ありと公言するようなものだから。

 ところが、今回……思わぬ傑物があぶれたの。ノイベルト公爵家の嫡男に嫁ぐ予定だった、ザックス侯爵令嬢よ。名をオリーヴィア、年齢は二十一歳だった。年齢差も申し分ない上、数世代遡っても公爵家との婚姻歴がない。

「最高の人材だわ」

「都合が良すぎて嘘のようですが……。問題は、彼女が婚約者へ愛情を抱いていた可能性ですね」

 領地が近い二つの家は、政略結婚で互いの利益を図った。ごく当たり前の婚約だが、もし互いの間に感情があったら? 愛している人と結婚寸前に引き裂かれ、仇に嫁がされる。そんな考えに陥る危険があった。

「調査させるわ」

 口にした直後、待っていた人物が顔を見せた。まだ陞爵の儀を行っていない、ローヴァイン侯爵クラウスよ。

「我が麗しの姫に、ご挨拶させてください。ヴィクトーリア姫」

 礼儀に従い、手の甲を捧げ持ち唇を寄せる。だが触れる手前で離した。婚約者なら触れても構わないのだけれど、正式な発表前なので触れなかったみたいね。賢い人だわ。

「呼び立ててごめんなさいね、クラウス。このご令嬢についての情報が欲しいのよ」

「おや、艶のあるお誘いではなかったとは。非常に残念です。ザックス侯爵家は非常に真面目な一族で、外交に長けています。オリーヴィア嬢も、数カ国語を操る才女ですよ。婚約は完全な政略で、婚約者のに悩んでいるとか」

「つまり、婚約段階で浮気をされていたのね? 最低だわ」

「さすがはローヴァイン侯爵ですね。僕より情報が詳細です」

 感心しているのか、噂好きと嫌悪しているのか。エック兄様の声は硬い。クラウスは「恐縮です」と微笑んで受け流した。

「直接見極めましょう。エック兄様の指示で、ルヴィ兄様の婚約を打診して頂戴」

 王侯貴族の結婚は、国や家のため。政略結婚は当たり前だけれど……家族としては幸せになってほしいもの。歩み寄れる人かどうか、直接会って判断したいわ。
しおりを挟む
感想 145

あなたにおすすめの小説

欠席魔の公爵令嬢、冤罪断罪も欠席す 〜メイリーン戦記〜

水戸直樹
ファンタジー
王太子との婚約――それは、彼に恋したからでも、権力のためでもなかった。 魔王乱立の時代。 王も公爵も外征に出ている王都で、公爵令嬢メイリーンは“地味な婚約者”として王城に現れる。 だが、王太子は初顔合わせに現れなかった。 にもかかわらず、記録に残ったのは「公爵令嬢の欠席」。 抗議はしない。 訂正もしない。 ただ一つ、欠席という事実だけを積み上げていく。 ――それが、誰にとっての不合格なのか。 まだ、誰も気づいていない。 欠席から始まる、静かなるファンタジー戦記。

婚約破棄をされ護衛騎士を脅して旅立った公爵令嬢は、まだ真実を知らない

大井町 鶴
恋愛
「婚約を破棄する」── その一言を聞いた日、ローラ公爵令嬢は護衛騎士を脅して旅に出た。 捨てられたままただ、黙って引き下がるつもりはなかった。 ただの衝動、ただの意地……そう思っていたはずだったのに。 彼女の選んだその道には、思いもよらぬ真実が待っていた。 それは、王子の本心や聖女の野心であり── 不器用な優しさの奥に隠れた、彼の本当の気持ちも。 逃げるように始まった旅が、運命だけでなく、心も塗り替えていく。 それをまだ、彼女は知らない。

【完結】婚約破棄に祝砲を。あら、殿下ったらもうご結婚なさるのね? では、祝辞代わりに花嫁ごと吹き飛ばしに伺いますわ。

猫屋敷 むぎ
恋愛
王都最古の大聖堂。 ついに幸せいっぱいの結婚式を迎えた、公女リシェル・クレイモア。 しかし、一年前。同じ場所での結婚式では―― 見知らぬ女を連れて現れたセドリック王子が、高らかに宣言した。 「俺は――愛を選ぶ! お前との婚約は……破棄だ!」 確かに愛のない政略結婚だったけれど。 ――やがて、仮面の執事クラウスと共に踏み込む、想像もできなかった真実。 「お嬢様、祝砲は芝居の終幕でと、相場は決まっております――」 仮面が落ちるとき、空を裂いて祝砲が鳴り響く。 シリアスもラブも笑いもまとめて撃ち抜く、“婚約破棄から始まる、公女と執事の逆転ロマンス劇場”、ここに開幕! ――ミステリ仕立ての愛と逆転の物語です。スッキリ逆転、ハピエン保証。 ※「小説家になろう」にも掲載。(異世界恋愛33位) ※ アルファポリス完結恋愛13位。応援ありがとうございます。

あなたが残した世界で

天海月
恋愛
「ロザリア様、あなたは俺が生涯をかけてお守りすると誓いましょう」王女であるロザリアに、そう約束した初恋の騎士アーロンは、ある事件の後、彼女との誓いを破り突然その姿を消してしまう。 八年後、生贄に選ばれてしまったロザリアは、最期に彼に一目会いたいとアーロンを探し、彼と再会を果たすが・・・。

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

第二王女と次期公爵の仲は冷え切っている

山法師
恋愛
 グレイフォアガウス王国の第二王女、シャーロット。  フォーサイス公爵家の次期公爵、セオドア。  二人は婚約者であるけれど、婚約者であるだけだった。  形だけの婚約者。二人の仲は冷め切っているし冷え切っている。  そもそも温度など、最初から存在していない。愛も恋も、友情も親しみも、二人の間には存在しない。  周知の事実のようなそれを、シャーロットもセオドアも否定しない。  お互いにほとんど関わりを持とうとしない、交流しようとしない、シャーロットとセオドアは。  婚約者としての親睦を深める茶会でだけ、顔を合わせる。  親睦を深める茶会だというのに、親睦は全く深まらない。親睦を深めるつもりも深める意味も、二人にはない。  形だけの婚約者との、形だけの親睦を深める茶会。  今日もまた、同じように。 「久しぶりに見る君が、いつにも増して愛らしく見えるし愛おしく思えて、僕は今にも天に召されそうなほどの幸福を味わっている。──?!」 「あたしのほうこそセオ様とお顔を合わせること、夢みたいに思ってるんですからね。大好きなセオ様を独り占めしているみたいに思えるんですよ。はっ?!」  顔を合わせて確認事項を本当に『確認』するだけの茶会が始まるはずが、それどころじゃない事態に陥った。  

【完結】虐げられて自己肯定感を失った令嬢は、周囲からの愛を受け取れない

春風由実
恋愛
事情があって伯爵家で長く虐げられてきたオリヴィアは、公爵家に嫁ぐも、同じく虐げられる日々が続くものだと信じていた。 願わくば、公爵家では邪魔にならず、ひっそりと生かして貰えたら。 そんなオリヴィアの小さな願いを、夫となった公爵レオンは容赦なく打ち砕く。 ※完結まで毎日1話更新します。最終話は2/15の投稿です。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

やり直し令嬢は本当にやり直す

お好み焼き
恋愛
やり直しにも色々あるものです。婚約者に若い令嬢に乗り換えられ婚約解消されてしまったので、本来なら婚約する前に時を巻き戻すことが出来ればそれが一番よかったのですけれど、そんな事は神ではないわたくしには不可能です。けれどわたくしの場合は、寿命は変えられないけど見た目年齢は変えられる不老のエルフの血を引いていたお陰で、本当にやり直すことができました。一方わたくしから若いご令嬢に乗り換えた元婚約者は……。

処理中です...