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90章 臆病な精霊女王の恋愛事情
1230. 積極的に口説けばいいのよ
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魔族の生態については、多少曖昧な部分もあるので深く追求するのはやめた。魔王に必要とされるのは、研究熱心なルキフェルのような性質ではなく、真面目すぎて融通の効かないアスタロトやベールのような気質でもない。気楽すぎるベルゼビュートも無理だった。そう、柔軟に状況を受け止め、上手に受け流す技術だけだ。
表面をさらりと柔らかく撫でるように生きていけば、何とかなる。難しいことは問題が起きてから解決しよう。理解しようとする思考を放棄し、ルシファーはリリスの意見に同意した。
「今はオスなら、人化した状態で結婚すれば問題ないな」
「そう、そうなのよ!」
我が意を得たりと喜ぶリリスが嬉しそうなのが何よりだ。種族として結婚できるオスならば、何ら問題ないではないか。ルシファーは柔軟性を十分すぎるほど発揮しながら、ふと気づいた。
「メスの姿で告白したから拒まれたことを、彼女? いや、今は彼か。彼は理解しているんだろうか」
「姉さんにバレる前に、説明した方がいいかも知れないわ」
頷き合うと、2人は大急ぎでベルゼビュートの部屋に取って返した。ノックしてそっと覗くと、真っ赤な顔のベルゼビュートを抱きしめる彼の姿があり……無言で扉を閉めた。
遅かった。いや、告白成功だから問題ないのだが。いつ彼と話をするか。リリスが「困ったわね」と呟く。
「仕方ない。後でオレが彼と話すから、その間、ベルゼビュートの相手を引き受けてくれ」
「わかったわ。姉さんと食後にお茶を飲むことにすればいいわね」
簡単すぎる作戦を練り、頷き合う。時間はさほどかからないので、さっと終わればいい。リリスと腕を組んで歩くルシファーは、先ほど見たベルゼビュートの表情を思い出す。
「幸せそうだな」
「そうね。ベルゼ姉さんは美人だし、スタイルもいいんだから。皆もっと積極的に口説けばいいのよ」
「やはり高嶺の花だったか」
「ベルゼ姉さんに声かけるのは、ハードル高いと思うわ」
よほど自分に自信がないと無理ね。断言したリリスに、ルシファーは先入観を捨てて考える。大公の地位にある唯一の女性で、美貌と抜群のプロポーションを持ち、微笑んだベルゼビュートは……確かに告白しづらいか。声を掛けて冷たくあしらわれる可能性の方が高い。中身を知っているから恋愛対象外になったが、本来は魅力的な女性なのだ。
「魔王陛下、リリス姫様。料理の準備が出来ました。ベルゼビュート大公閣下とお連れ様はお声がけした方がいいでしょうか」
デカラビア子爵家から派遣された侍女に声を掛けられ、廊下で足を止めた。少し考えてから、ルシファーは彼女に依頼する。
「寝ている可能性もあるから、ノックして返事があったら声を掛けてくれ。もし返事がなければ、そのままでいい」
「かしこまりました」
礼儀正しい侍女を見送り、リリスは首を傾げた。
「もう起きてたわ」
「リリス、もし抱き合ってる場面に人が入ってきて見られたら、恥ずかしいだろう?」
「そうなの?」
即時問い返されたことで、ルシファーの方が言葉に詰まる。リリスは羞恥心が薄い方だった。同族と素っ裸で過ごすベルゼビュートよりマシになったと思うが、そう考えると……彼女に気遣いは不要だったか? だが、相手の魔獣には必要だろう。
「彼は恥ずかしがるかも知れない」
「それはそうね」
リリスはあっさり意見を覆した。なぜ納得されたのか解せないルシファーだが、余計な突っ込みは後に回した。
「先に食堂で待っていよう」
食堂として作られた部屋は、隣に応接室もある。食後のお茶はそこに用意させるか。いや、ベルゼビュートにハーブティを振る舞ってもらうのもいい。久しぶりに彼女に頼もう。頭の中で段取りを考えながら、ルシファーとリリスは仲良く椅子に座った。
表面をさらりと柔らかく撫でるように生きていけば、何とかなる。難しいことは問題が起きてから解決しよう。理解しようとする思考を放棄し、ルシファーはリリスの意見に同意した。
「今はオスなら、人化した状態で結婚すれば問題ないな」
「そう、そうなのよ!」
我が意を得たりと喜ぶリリスが嬉しそうなのが何よりだ。種族として結婚できるオスならば、何ら問題ないではないか。ルシファーは柔軟性を十分すぎるほど発揮しながら、ふと気づいた。
「メスの姿で告白したから拒まれたことを、彼女? いや、今は彼か。彼は理解しているんだろうか」
「姉さんにバレる前に、説明した方がいいかも知れないわ」
頷き合うと、2人は大急ぎでベルゼビュートの部屋に取って返した。ノックしてそっと覗くと、真っ赤な顔のベルゼビュートを抱きしめる彼の姿があり……無言で扉を閉めた。
遅かった。いや、告白成功だから問題ないのだが。いつ彼と話をするか。リリスが「困ったわね」と呟く。
「仕方ない。後でオレが彼と話すから、その間、ベルゼビュートの相手を引き受けてくれ」
「わかったわ。姉さんと食後にお茶を飲むことにすればいいわね」
簡単すぎる作戦を練り、頷き合う。時間はさほどかからないので、さっと終わればいい。リリスと腕を組んで歩くルシファーは、先ほど見たベルゼビュートの表情を思い出す。
「幸せそうだな」
「そうね。ベルゼ姉さんは美人だし、スタイルもいいんだから。皆もっと積極的に口説けばいいのよ」
「やはり高嶺の花だったか」
「ベルゼ姉さんに声かけるのは、ハードル高いと思うわ」
よほど自分に自信がないと無理ね。断言したリリスに、ルシファーは先入観を捨てて考える。大公の地位にある唯一の女性で、美貌と抜群のプロポーションを持ち、微笑んだベルゼビュートは……確かに告白しづらいか。声を掛けて冷たくあしらわれる可能性の方が高い。中身を知っているから恋愛対象外になったが、本来は魅力的な女性なのだ。
「魔王陛下、リリス姫様。料理の準備が出来ました。ベルゼビュート大公閣下とお連れ様はお声がけした方がいいでしょうか」
デカラビア子爵家から派遣された侍女に声を掛けられ、廊下で足を止めた。少し考えてから、ルシファーは彼女に依頼する。
「寝ている可能性もあるから、ノックして返事があったら声を掛けてくれ。もし返事がなければ、そのままでいい」
「かしこまりました」
礼儀正しい侍女を見送り、リリスは首を傾げた。
「もう起きてたわ」
「リリス、もし抱き合ってる場面に人が入ってきて見られたら、恥ずかしいだろう?」
「そうなの?」
即時問い返されたことで、ルシファーの方が言葉に詰まる。リリスは羞恥心が薄い方だった。同族と素っ裸で過ごすベルゼビュートよりマシになったと思うが、そう考えると……彼女に気遣いは不要だったか? だが、相手の魔獣には必要だろう。
「彼は恥ずかしがるかも知れない」
「それはそうね」
リリスはあっさり意見を覆した。なぜ納得されたのか解せないルシファーだが、余計な突っ込みは後に回した。
「先に食堂で待っていよう」
食堂として作られた部屋は、隣に応接室もある。食後のお茶はそこに用意させるか。いや、ベルゼビュートにハーブティを振る舞ってもらうのもいい。久しぶりに彼女に頼もう。頭の中で段取りを考えながら、ルシファーとリリスは仲良く椅子に座った。
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