15 / 97
15.登城を催促されたそうです
しおりを挟む
私が隠しておいてとお願いしたから、誰も話してないわよね。涙の跡をクロエが隠してくれた。
「お待たせ、そろそろ帰ろう」
エル様に微笑み返し、伸ばされた手を取る。と同時にまた抱き上げられた。
「お姫様、子どもみたい」
笑う子ども達に、エル様が明るい声で言い放った。
「違うぞ、お姫様は自分の足で歩いたりしないんだぞ」
「絵本には書いてなかったわ」
小さな女の子が、大切そうに絵本を掲げる。この本にお姫様の話が書いてあるみたい。私が知らない絵本だわ。この国の本かしら。
「それはそうだ、これは秘密だからな。大人に言ったらダメだぞ」
上手に誘導して、エル様は馬車に乗った。もちろん私はお膝の上。いつ迎えに来てもらったのか、首を傾げる。
「エル様、いつ馬車を呼んだのですか」
「ああ、予定がわかっているから、ここへ来るよう伝えておいた」
そうなのね。確かに事前に予定と時間がわかっていたら、迎えを頼むのも簡単だわ。頷いたけれど、やっぱり膝からおろしてもらえなかった。
「私は膝の上ですか?」
「アン、この国では婚約者は常に膝の上や抱っこだ」
「知りませんでした」
そんなルールはありません。クロエは屋敷に帰るなり教えてくれた。でもエル様が抱っこしたいと言うなら、私は従うわ。だって大好きな人が「私に触れていたい」と態度に出しているんだもの。
クロエは「そうですね、姫様はそれでいいと思います」と賛成した。妻は夫を支えるものですわ。ふふっと笑って、お風呂を出た。屋敷に戻って用意された風呂に入る。次は食事だった。
外で朝食も昼食も済ませたので、夕食はお屋敷の料理人が腕を振るうと聞いた。とても楽しみだわ。エル様は食堂で待っているので、私は鏡の前で最終チェックをした。くるりと回って、赤と白の衣装を確認する。白いワンピースの腰を赤い太めのリボンで絞り、細い赤ストライプの柄が入っていた。
お気に入りの服に合わせ、赤いリボンで髪を結ぶ。口々に可愛いと褒めてもらい、廊下へ出た。食堂まで階段を降りて左へ曲がり、あと少し。そこで通り過ぎる侍女の一人に睨まれた? 気のせいかも。
振り返りながら確認してしまい、クロエが首を傾げる。彼女が気づかないなら、私の勘違いだわ。決めつけて、食堂に入った。さっと立ち上がったエル様が、私の手を引いて奥の椅子へ誘う。
椅子に大きなクッションが用意されて、抱き上げて下された。お膝の上と同じくらいの高さで、テーブルにぴったり。エル様も満足そうに頷いた。
「ぴったりだ」
「はい、ありがとうございます」
用意されたカトラリーを使い、作法に従ってゆっくりと食べ進める。どの料理も美味しく、用意されたジュースも甘くて好みの味だった。すべてに満足しながら、デザートも口に運ぶ。エル様の前はコーヒー、私は紅茶。
大人になったら、きっと私もコーヒーを飲むんだわ。それまでに何回か練習しておこう。
「国王陛下から、早めに登城するよう連絡があった。悪いが、二、三日で準備してもらえるか?」
「はい。明日でなくてよろしいですか」
「無理を言ったのは陛下の方だ。待たせても問題ない」
頑なに兄上と呼ばないのは、私には不思議です。でも、仲が悪いのとも違う感じで。私はわかりましたと了承した。
「お待たせ、そろそろ帰ろう」
エル様に微笑み返し、伸ばされた手を取る。と同時にまた抱き上げられた。
「お姫様、子どもみたい」
笑う子ども達に、エル様が明るい声で言い放った。
「違うぞ、お姫様は自分の足で歩いたりしないんだぞ」
「絵本には書いてなかったわ」
小さな女の子が、大切そうに絵本を掲げる。この本にお姫様の話が書いてあるみたい。私が知らない絵本だわ。この国の本かしら。
「それはそうだ、これは秘密だからな。大人に言ったらダメだぞ」
上手に誘導して、エル様は馬車に乗った。もちろん私はお膝の上。いつ迎えに来てもらったのか、首を傾げる。
「エル様、いつ馬車を呼んだのですか」
「ああ、予定がわかっているから、ここへ来るよう伝えておいた」
そうなのね。確かに事前に予定と時間がわかっていたら、迎えを頼むのも簡単だわ。頷いたけれど、やっぱり膝からおろしてもらえなかった。
「私は膝の上ですか?」
「アン、この国では婚約者は常に膝の上や抱っこだ」
「知りませんでした」
そんなルールはありません。クロエは屋敷に帰るなり教えてくれた。でもエル様が抱っこしたいと言うなら、私は従うわ。だって大好きな人が「私に触れていたい」と態度に出しているんだもの。
クロエは「そうですね、姫様はそれでいいと思います」と賛成した。妻は夫を支えるものですわ。ふふっと笑って、お風呂を出た。屋敷に戻って用意された風呂に入る。次は食事だった。
外で朝食も昼食も済ませたので、夕食はお屋敷の料理人が腕を振るうと聞いた。とても楽しみだわ。エル様は食堂で待っているので、私は鏡の前で最終チェックをした。くるりと回って、赤と白の衣装を確認する。白いワンピースの腰を赤い太めのリボンで絞り、細い赤ストライプの柄が入っていた。
お気に入りの服に合わせ、赤いリボンで髪を結ぶ。口々に可愛いと褒めてもらい、廊下へ出た。食堂まで階段を降りて左へ曲がり、あと少し。そこで通り過ぎる侍女の一人に睨まれた? 気のせいかも。
振り返りながら確認してしまい、クロエが首を傾げる。彼女が気づかないなら、私の勘違いだわ。決めつけて、食堂に入った。さっと立ち上がったエル様が、私の手を引いて奥の椅子へ誘う。
椅子に大きなクッションが用意されて、抱き上げて下された。お膝の上と同じくらいの高さで、テーブルにぴったり。エル様も満足そうに頷いた。
「ぴったりだ」
「はい、ありがとうございます」
用意されたカトラリーを使い、作法に従ってゆっくりと食べ進める。どの料理も美味しく、用意されたジュースも甘くて好みの味だった。すべてに満足しながら、デザートも口に運ぶ。エル様の前はコーヒー、私は紅茶。
大人になったら、きっと私もコーヒーを飲むんだわ。それまでに何回か練習しておこう。
「国王陛下から、早めに登城するよう連絡があった。悪いが、二、三日で準備してもらえるか?」
「はい。明日でなくてよろしいですか」
「無理を言ったのは陛下の方だ。待たせても問題ない」
頑なに兄上と呼ばないのは、私には不思議です。でも、仲が悪いのとも違う感じで。私はわかりましたと了承した。
316
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。
尾道小町
恋愛
登場人物紹介
ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢
17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。
ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。
シェーン・ロングベルク公爵 25歳
結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。
ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳
優秀でシェーンに、こき使われている。
コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳
ヴィヴィアンの幼馴染み。
アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳
シェーンの元婚約者。
ルーク・ダルシュール侯爵25歳
嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。
ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。
ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。
この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。
ジュリエット・スチール公爵令嬢18歳
ロミオ王太子殿下の婚約者。
ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳
私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。
一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。
正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
悪役令嬢と誤解され冷遇されていたのに、目覚めたら夫が豹変して求愛してくるのですが?
いりん
恋愛
初恋の人と結婚できたーー
これから幸せに2人で暮らしていける…そう思ったのに。
「私は夫としての務めを果たすつもりはない。」
「君を好きになることはない。必要以上に話し掛けないでくれ」
冷たく拒絶され、離婚届けを取り寄せた。
あと2週間で届くーーそうしたら、解放してあげよう。
ショックで熱をだし寝込むこと1週間。
目覚めると夫がなぜか豹変していて…!?
「君から話し掛けてくれないのか?」
「もう君が隣にいないのは考えられない」
無口不器用夫×優しい鈍感妻
すれ違いから始まる両片思いストーリー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる