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16.黒い宝石はないけれど準備完了
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登城の準備は早かった。まだ荷物を完全に解いていなかったので、季節に合わせた外出着一式の箱をそのまま運ぶらしい。中を確認したクロエが満足そうなので、問題はないわね。
私は持っていくお飾りを選んでいた。黒髪と黄金の瞳……琥珀は持っていくけれど、黒い宝石はない。今までの服がピンクや黄色など明るい色中心だったので、宝石類もそれに合わせていた。先日のお出かけで靴と服は買っていただいたが、宝飾品も探すべきだった?
違うわ。だってエル様に買って頂くのは間違ってるもの。一つ二つなら嬉しいけれど、できたら記念日に頂きたい。普段は持参金で賄うことにしよう。お金目当てみたいで嫌だわ。
そういえば、黒い宝石ってあるのかしら。きらきら光を弾いたり、透き通っている宝石しか思い浮かばなかった。
「姫様、王妃殿下は黒真珠をお持ちでした」
クロエに尋ねたら、すぐ答えをくれた。確かに黒だけど、かなりグレーだったわ。緑の艶がある黒い真珠もあると聞いたけれど。話に聞いただけで、実物を知らない。真珠って高価だったわよね。お小遣いで買えるかしら。
「黒い宝石についてはお調べしておきます」
「お願いね、クロエ」
今回は金細工の琥珀の髪飾り、シトリンの首飾りとブレスレットかな。念の為にルビーやサファイアも用意した。ドレスに合わせて変更する可能性もある。夜会用ドレス、登城に合わせて青紫のドレス、それからワンピースも入れてもらおう。
侍女達と賑やかに荷造りを終えて、私はゆっくり休んだ。お姉様に頂いた人形を抱え、お兄様が買ってくれた枕を使って。朝までぐっすりと眠る。
起きて最初に驚いたのは、すでに侍女が部屋にいたこと。クロエではない。ぱちくりと瞬いて、首を傾げた。
「姫様、大変失礼いたしました。こちらで異常はなかったでしょうか」
「いえ、何も」
周囲を見回し、部屋の中を確かめる。眠る前と同じだ。それでも改めるよう言われ、カーディガンを羽織って部屋靴を履いた。一緒に見回り、宝飾品も揃っているのを侍女二人と確認した。頷き合い、箱に鍵をする。
「何があったの? クロエは?」
「筆頭侍女のクロエ様は、現在荷物の確認を行なっております」
「なぜ?」
「……その」
言い淀む様子から、口止めされたのだろうと思う。着替えを手伝ってもらい、廊下に出たところで険しい表情のエル様を見つけた。
「まだ犯人がわからないのか! 急げ、万が一にも我が姫に危害が加えられたら何とする!」
危害、ですか? 耳が肩につきそうなほど首を傾げた私に、慌ててエル様が駆け寄る。両手で体を確かめ、それから抱き上げた。
「エル様、おはようございます」
「ケガがなくて良かった。昨夜は変なことがなかったか? 音がしたとか」
「いいえ。ぐっすりでした」
そもそも扉の外に護衛の騎士が立っていました。幼い婚約者といえど、未婚女性なので間違いがないよう、変な噂に巻き込まれないよう、結婚まで守ってくれるのです。
「何かあったのですか」
まるで強盗に入られたような騒ぎです。そう付け加えた途端、エル様は表情を曇らせた。整ったお顔は、どんな表情でも似合うのですね。
私は持っていくお飾りを選んでいた。黒髪と黄金の瞳……琥珀は持っていくけれど、黒い宝石はない。今までの服がピンクや黄色など明るい色中心だったので、宝石類もそれに合わせていた。先日のお出かけで靴と服は買っていただいたが、宝飾品も探すべきだった?
違うわ。だってエル様に買って頂くのは間違ってるもの。一つ二つなら嬉しいけれど、できたら記念日に頂きたい。普段は持参金で賄うことにしよう。お金目当てみたいで嫌だわ。
そういえば、黒い宝石ってあるのかしら。きらきら光を弾いたり、透き通っている宝石しか思い浮かばなかった。
「姫様、王妃殿下は黒真珠をお持ちでした」
クロエに尋ねたら、すぐ答えをくれた。確かに黒だけど、かなりグレーだったわ。緑の艶がある黒い真珠もあると聞いたけれど。話に聞いただけで、実物を知らない。真珠って高価だったわよね。お小遣いで買えるかしら。
「黒い宝石についてはお調べしておきます」
「お願いね、クロエ」
今回は金細工の琥珀の髪飾り、シトリンの首飾りとブレスレットかな。念の為にルビーやサファイアも用意した。ドレスに合わせて変更する可能性もある。夜会用ドレス、登城に合わせて青紫のドレス、それからワンピースも入れてもらおう。
侍女達と賑やかに荷造りを終えて、私はゆっくり休んだ。お姉様に頂いた人形を抱え、お兄様が買ってくれた枕を使って。朝までぐっすりと眠る。
起きて最初に驚いたのは、すでに侍女が部屋にいたこと。クロエではない。ぱちくりと瞬いて、首を傾げた。
「姫様、大変失礼いたしました。こちらで異常はなかったでしょうか」
「いえ、何も」
周囲を見回し、部屋の中を確かめる。眠る前と同じだ。それでも改めるよう言われ、カーディガンを羽織って部屋靴を履いた。一緒に見回り、宝飾品も揃っているのを侍女二人と確認した。頷き合い、箱に鍵をする。
「何があったの? クロエは?」
「筆頭侍女のクロエ様は、現在荷物の確認を行なっております」
「なぜ?」
「……その」
言い淀む様子から、口止めされたのだろうと思う。着替えを手伝ってもらい、廊下に出たところで険しい表情のエル様を見つけた。
「まだ犯人がわからないのか! 急げ、万が一にも我が姫に危害が加えられたら何とする!」
危害、ですか? 耳が肩につきそうなほど首を傾げた私に、慌ててエル様が駆け寄る。両手で体を確かめ、それから抱き上げた。
「エル様、おはようございます」
「ケガがなくて良かった。昨夜は変なことがなかったか? 音がしたとか」
「いいえ。ぐっすりでした」
そもそも扉の外に護衛の騎士が立っていました。幼い婚約者といえど、未婚女性なので間違いがないよう、変な噂に巻き込まれないよう、結婚まで守ってくれるのです。
「何かあったのですか」
まるで強盗に入られたような騒ぎです。そう付け加えた途端、エル様は表情を曇らせた。整ったお顔は、どんな表情でも似合うのですね。
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