【完結】あなたの思い違いではありませんの?

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

文字の大きさ
8 / 100

08.転覆ではなく座礁程度ね

しおりを挟む
「ところが、思わぬ暴走を始めた、と?」

 クレチマスはキツイ性格のようだ。言葉を飾らず直球で投げつけた。相手が国王や公爵であろうと、許せないと示す。

「なぜ婚約者を見つけて破棄することに必死だったのか、不思議ですね」

 カージナリス辺境伯家のティアレラの婚約者シオンは、首を傾げた。その間も、隣で目を閉じて考えているティアレラの髪を撫でる手を休めない。

「それも罠の一つだ」

 父の発言に、カレンデュラが続きをさらった。

「私に彼の悪意をぶつけさせたのは、すでに婚約者が決まっているから。騒がれても、瑕疵になりませんもの。周囲に波及したのは、阿呆にも思惑があったのでは?」

 頷いたデルフィニューム公爵が告げたのは、ミューレンベルギアの策略だった。国を乗っ取るため、母国から公爵令嬢を呼んで息子に嫁がせる。その計画を聞かされ、ローランドは考えた。

 淑女の鑑と名高いカレンデュラを退けるには、別の女性と婚約してしまえばいい。聖女のビオラなら元平民だから、騒動に巻き込んだ後でも簡単に捨てられる。男爵家程度、王家の圧力で黙らせたら問題ないと判断した。

 そこで表舞台にビオラを引き摺り出す。しかし彼女は婚約者がいる上、ローランドの暴挙に反発した。カレンデュラにも蔑まれ、慌てて周囲に被害を撒き散らしたのだ。ここまでは誰も予想しなかったらしい。

「なるほど。私と愛しの姫を巻き込んだ理由としては弱いが、わからなくもない……か」

 皇太子であるが故に、裏や先を読むことに長けたコルジリネは唸る。渋々納得するが、感情は別だった。

 国王としては確たる証拠もなく、ホスタ王国を糾弾して排除できない。だが乗っ取られるのは絶対に阻止なければならない。その状況で、自国の公爵令嬢と婚約した皇太子に助けを求めたら、弱みを握られると考えた。これが王女との婚約なら、頼ることもできただろう。だが姪では繋がりが弱い。

「難しい舵取りで転覆した形かしら」

「あら、ギリギリ座礁程度ではなくて?」

 容赦のないティアレラとカレンデュラの嫌味に、国王フィゲリウスは項垂れた。慰めるように肩を叩く父にも、娘はグサリと釘を刺す。

「お父様もお父様です。諌めるべきお立場のはずでは? 何より、巻き込んだ方々へのお詫びが足りておりません。しっかり補償と名誉回復をなさいませ」

 ぱちんと扇を畳んで叱る娘に、父は小さく「わかった」と返すのが精一杯だった。黙って利用される娘ではありませんと示したカレンデュラは、渋い顔の当事者達に向き直る。

「伯父と父が失礼いたしました。今後の処断はきっちりと、ええ……誰がみても納得する形で行いますわ。皆様の希望をお聞かせくださいね」

 被害者が望むのは、はっきりとした名誉回復とアレの処分。ついでに、嗾けたミューレンベルギア妃の処理もできたら、最高だ。その点は全員一致していた。

「なら一つ、芝居を打つのはいかがかしらね」

「我が姫はわざわざ水溜まりを踏みたがるのだな。濡れた靴を拭う名誉は譲ってくれるかな?」

 コルジリネ皇太子が放った遠回しの嫌味に、まぁと呟いたカレンデュラは微笑んだ。

「構いませんわ。抱き上げる許可も差し上げましてよ?」
しおりを挟む
感想 143

あなたにおすすめの小説

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

運命に勝てない当て馬令嬢の幕引き。

ぽんぽこ狸
恋愛
 気高き公爵家令嬢オリヴィアの護衛騎士であるテオは、ある日、主に天啓を受けたと打ち明けられた。  その内容は運命の女神の聖女として召喚されたマイという少女と、オリヴィアの婚約者であるカルステンをめぐって死闘を繰り広げ命を失うというものだったらしい。  だからこそ、オリヴィアはもう何も望まない。テオは立場を失うオリヴィアの事は忘れて、自らの道を歩むようにと言われてしまう。  しかし、そんなことは出来るはずもなく、テオも将来の王妃をめぐる運命の争いの中に巻き込まれていくのだった。  五万文字いかない程度のお話です。さくっと終わりますので読者様の暇つぶしになればと思います。

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】白い結婚で生まれた私は王族にはなりません〜光の精霊王と予言の王女〜

白崎りか
ファンタジー
「悪女オリヴィア! 白い結婚を神官が証明した。婚姻は無効だ! 私は愛するフローラを王妃にする!」  即位したばかりの国王が、宣言した。  真実の愛で結ばれた王とその恋人は、永遠の愛を誓いあう。  だが、そこには大きな秘密があった。  王に命じられた神官は、白い結婚を偽証していた。  この時、悪女オリヴィアは娘を身ごもっていたのだ。  そして、光の精霊王の契約者となる予言の王女を産むことになる。 第一部 貴族学園編  私の名前はレティシア。 政略結婚した王と元王妃の間にできた娘なのだけど、私の存在は、生まれる前に消された。  だから、いとこの双子の姉ってことになってる。  この世界の貴族は、5歳になったら貴族学園に通わないといけない。私と弟は、そこで、契約獣を得るためのハードな訓練をしている。  私の異母弟にも会った。彼は私に、「目玉をよこせ」なんて言う、わがままな王子だった。 第二部 魔法学校編  失ってしまったかけがえのない人。  復讐のために精霊王と契約する。  魔法学校で再会した貴族学園時代の同級生。  毒薬を送った犯人を捜すために、パーティに出席する。  修行を続け、勇者の遺産を手にいれる。 前半は、ほのぼのゆっくり進みます。 後半は、どろどろさくさくです。 小説家になろう様にも投稿してます。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

処理中です...