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09.まず一手、次はどう出る?
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ミューレンベルギア妃は遅れて夜会に参加する。この情報はわざわざ調べなくても、皆が知っていた。普段から後半のわずかな時間に、顔を見せるだけだから。
「悪女の尻尾を掴むのは、楽しそうよ」
「あら、悪い公爵令嬢だこと」
「私も協力しますっ!」
リクニス国では、悪女を狐に例える。尻尾を掴むの比喩がぴったりだった。畳んだ扇を揺らしながら笑うカレンデュラに、同調するティアレラ。ぐっと拳を握って、協力すると明言する聖女。
「やれやれ、リクニス国の女性は気の強い方ばかりのようだ」
そこに惚れたのだが……とコルジリネ皇太子が苦笑いした。
「悪役令嬢らしくていいと思う。俺も協力させてもらうか」
先ほどまでの不貞腐れた短い口調を改め、クレチマスが独り言のように呟いた。可愛い義妹を怖がらせた罰はしっかり与えたい。主犯を逃すのは間違ってる、そんな意味合いだった。
ぴくりと反応したのは、カレンデュラだ。
「悪役、令嬢?」
「その単語って!」
ビオラも同様に目を見開いて口元を手で覆う。ティアレラは探るような視線をクレチマスへ向けた。その反応に無関心な当人は、婚約者のリッピアに微笑みかけている。参加すると告げて、心配されたらしい。すごく嬉しそうだった。
「タンジー公爵令息にはあとで、詳細なお話を聞きたいわ。もちろん、婚約者立ち会いの場で……ね」
誤解させる余地はないと差し込みながら、事情聴取するぞと匂わせる。器用なカレンデュラの発言に、クレチマスは己の言動を振り返り、額を押さえて呻いた。やらかしたと気づいたようだ。
「では私が仕掛けますので、あとは合わせてくださいな。適当に」
簡単な流れだけ説明したカレンデュラへ、誰もが同意を示した。壁に徹していた護衛が仕事に戻り、彼らを従えた面々が夜会へ戻る。国王も何食わぬ顔で玉座に座り、続いていた夜会を見守った。
一部の貴族はざわついたが、上層部で話がついたのだろうと深く詮索しない。腹の探り合いや策略など面倒な貴族の付き合いだが、こういった面では割り切っていた。自分に害が及ぶ可能性がある事件には、首を突っ込まない。後日誰かが持ち込む噂で確認すればいいのだから。
婚約者とダンスを踊るカレンデュラは、一曲終えるとビオラを誘った。パートが分かれていない静かな曲を選び、二人でくすくすと笑い合いながら楽しい時間を過ごす。そこへ入ってきたのが、ミューレンベルギア妃だった。
先ほどの事件があるため、一部の貴族が妃の表情を窺う。だが連絡を意図的に遅らせたため、何も知らないミューレンベルギアは王族席に腰を下ろした。
ビオラは指定された窓際へ移動し、扇を広げたカレンデュラが妃を睨む。これも作戦だが、視線に気づいた妃は眉を寄せた。ぐるりと周囲を見まわし、第一王子ローランドがいない状況に眉根を寄せる。
成人間際の息子がいるとは思えないほど若く見える彼女は、数人の貴族に合図を送って呼び寄せようとした。第一王子擁立派だ。だがローランドのやらかしを目撃した貴族は戸惑った。
苛立ち任せに次々と手招きすることで、あっさりと一味が判明していく。用心深さの欠片もない様子に、ティアレラは婚約者シオンと場を外した。ビオラはカーテンの近くで、じっと待機する。
次の一手はどう来るのかしら? カレンデュラは悪役令嬢らしい微笑みを浮かべ、扇をひらりと動かした。
「悪女の尻尾を掴むのは、楽しそうよ」
「あら、悪い公爵令嬢だこと」
「私も協力しますっ!」
リクニス国では、悪女を狐に例える。尻尾を掴むの比喩がぴったりだった。畳んだ扇を揺らしながら笑うカレンデュラに、同調するティアレラ。ぐっと拳を握って、協力すると明言する聖女。
「やれやれ、リクニス国の女性は気の強い方ばかりのようだ」
そこに惚れたのだが……とコルジリネ皇太子が苦笑いした。
「悪役令嬢らしくていいと思う。俺も協力させてもらうか」
先ほどまでの不貞腐れた短い口調を改め、クレチマスが独り言のように呟いた。可愛い義妹を怖がらせた罰はしっかり与えたい。主犯を逃すのは間違ってる、そんな意味合いだった。
ぴくりと反応したのは、カレンデュラだ。
「悪役、令嬢?」
「その単語って!」
ビオラも同様に目を見開いて口元を手で覆う。ティアレラは探るような視線をクレチマスへ向けた。その反応に無関心な当人は、婚約者のリッピアに微笑みかけている。参加すると告げて、心配されたらしい。すごく嬉しそうだった。
「タンジー公爵令息にはあとで、詳細なお話を聞きたいわ。もちろん、婚約者立ち会いの場で……ね」
誤解させる余地はないと差し込みながら、事情聴取するぞと匂わせる。器用なカレンデュラの発言に、クレチマスは己の言動を振り返り、額を押さえて呻いた。やらかしたと気づいたようだ。
「では私が仕掛けますので、あとは合わせてくださいな。適当に」
簡単な流れだけ説明したカレンデュラへ、誰もが同意を示した。壁に徹していた護衛が仕事に戻り、彼らを従えた面々が夜会へ戻る。国王も何食わぬ顔で玉座に座り、続いていた夜会を見守った。
一部の貴族はざわついたが、上層部で話がついたのだろうと深く詮索しない。腹の探り合いや策略など面倒な貴族の付き合いだが、こういった面では割り切っていた。自分に害が及ぶ可能性がある事件には、首を突っ込まない。後日誰かが持ち込む噂で確認すればいいのだから。
婚約者とダンスを踊るカレンデュラは、一曲終えるとビオラを誘った。パートが分かれていない静かな曲を選び、二人でくすくすと笑い合いながら楽しい時間を過ごす。そこへ入ってきたのが、ミューレンベルギア妃だった。
先ほどの事件があるため、一部の貴族が妃の表情を窺う。だが連絡を意図的に遅らせたため、何も知らないミューレンベルギアは王族席に腰を下ろした。
ビオラは指定された窓際へ移動し、扇を広げたカレンデュラが妃を睨む。これも作戦だが、視線に気づいた妃は眉を寄せた。ぐるりと周囲を見まわし、第一王子ローランドがいない状況に眉根を寄せる。
成人間際の息子がいるとは思えないほど若く見える彼女は、数人の貴族に合図を送って呼び寄せようとした。第一王子擁立派だ。だがローランドのやらかしを目撃した貴族は戸惑った。
苛立ち任せに次々と手招きすることで、あっさりと一味が判明していく。用心深さの欠片もない様子に、ティアレラは婚約者シオンと場を外した。ビオラはカーテンの近くで、じっと待機する。
次の一手はどう来るのかしら? カレンデュラは悪役令嬢らしい微笑みを浮かべ、扇をひらりと動かした。
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