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第151話 不器用ながら愛した
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ルイの婿入り承諾を伝え、父親に離れの使用許可を求める。しばらく唸った後、セイランは渋々承諾した。が、内容はアイリーンが思っていたものと違う。
公家や貴族に横やりを入れられないよう、婚約は済ませる。婚姻も早めに行うが、あと二年は同居不可の条件がついた。まだ未熟な少女である巫女の保護、という名目を引っ張り出したのだ。これは父と兄の苦肉の策だった。
周囲に邪魔されて不幸になる娘は見たくない。それでも、幼さの残る末姫の結婚はまだ早い。両方を叶える方法として、結婚したルイを離れに住まわせて、アイリーンは母屋に暮らす妥協案を提示した。少し考えて、アイリーンはあっさり頷いた。
会いたくなったら、私が出向けばいいのよね。親の心、子知らず――アイリーンは抜け道を見つける才能はずば抜けている。見抜いて額を押さえる小狐の横で、白蛇神はからからと笑った。子犬姿のネネは、足元で大欠伸をして丸まる。
以前、住んでいた離れの準備を整えるようお願いし、アイリーンは浮かれながら舞台へ向かった。神事が行われる舞台は、檜が使われている。慣れた香りを吸い込んで、術を展開した。ルイに会いに行く、丸く広がった陣の上へ一人飛び込む。
「え?」
間抜けなアイリーンの声を残し、全員の姿が消えた。偶然目撃したヒスイは、見なかったことにして自室へ引き上げる。そうよ、何も見なかった。父上が不在だなんて、外へ漏らせないもの。
どこから回り込んだのか、いつから狙っていたのか。帰ってきたら兄上に問い詰められるでしょうけれど。私には関係ないわ。ヒスイは淡々と廊下を進んだ。途中で騒ぐ近習とすれ違うも、曖昧に微笑んで逃げた。
「お父様、ああいうのは危険なんですよ」
「三柱の神獣殿がいて、危険などあるまい」
そりゃ、調整してくれるけど。間違って上半身だけ転移したら大惨事よ。残された下半身を発見する人が可哀想だし、上半身だけ連れてきたら私のトラウマになるじゃないの。
いつもなら、意見をする相手じゃない。だが、陰陽術や巫女の能力に関することでは、国一番の術者なのだ。アイリーンは容赦なく抗議した。素直に頷く父は、おとなしい。自分でも無茶をした自覚があるのだろう。
「そもそも、帝であらせられるお立場を考えてください。替えが利かない人なんですから」
「それはリンも同じだ」
私とは違う。そんな意味を込めたアイリーンの叱責を、セイランは穏やかな声で訂正した。四人の妻を尊敬しているし、それぞれに長所と短所があって家族の愛もある。政略結婚だが、粗末に扱うことはしなかった。
そんな妻達が産んだ子は、すべて愛おしい。たとえ騒動を起こして距離を置かなければならない子でも、愛情の深さは同じだった。いや、不憫に感じるから、逆に気にかけたつもりだ。
表立って味方できなくても、優秀なキエを付けてサポートしてきた。埃が舞う屋敷の部屋で、アイリーンは頬が熱くなるのを感じる。そっか、私はちゃんと愛されていたんだ。
「伝わりにくい方法を使ったのは……悪かったが、お前を愛さない日はなかった。これだけは八百万の神々に誓える」
小さく頷いたアイリーンは、緩んでしまう頬を両手で押さえた。
公家や貴族に横やりを入れられないよう、婚約は済ませる。婚姻も早めに行うが、あと二年は同居不可の条件がついた。まだ未熟な少女である巫女の保護、という名目を引っ張り出したのだ。これは父と兄の苦肉の策だった。
周囲に邪魔されて不幸になる娘は見たくない。それでも、幼さの残る末姫の結婚はまだ早い。両方を叶える方法として、結婚したルイを離れに住まわせて、アイリーンは母屋に暮らす妥協案を提示した。少し考えて、アイリーンはあっさり頷いた。
会いたくなったら、私が出向けばいいのよね。親の心、子知らず――アイリーンは抜け道を見つける才能はずば抜けている。見抜いて額を押さえる小狐の横で、白蛇神はからからと笑った。子犬姿のネネは、足元で大欠伸をして丸まる。
以前、住んでいた離れの準備を整えるようお願いし、アイリーンは浮かれながら舞台へ向かった。神事が行われる舞台は、檜が使われている。慣れた香りを吸い込んで、術を展開した。ルイに会いに行く、丸く広がった陣の上へ一人飛び込む。
「え?」
間抜けなアイリーンの声を残し、全員の姿が消えた。偶然目撃したヒスイは、見なかったことにして自室へ引き上げる。そうよ、何も見なかった。父上が不在だなんて、外へ漏らせないもの。
どこから回り込んだのか、いつから狙っていたのか。帰ってきたら兄上に問い詰められるでしょうけれど。私には関係ないわ。ヒスイは淡々と廊下を進んだ。途中で騒ぐ近習とすれ違うも、曖昧に微笑んで逃げた。
「お父様、ああいうのは危険なんですよ」
「三柱の神獣殿がいて、危険などあるまい」
そりゃ、調整してくれるけど。間違って上半身だけ転移したら大惨事よ。残された下半身を発見する人が可哀想だし、上半身だけ連れてきたら私のトラウマになるじゃないの。
いつもなら、意見をする相手じゃない。だが、陰陽術や巫女の能力に関することでは、国一番の術者なのだ。アイリーンは容赦なく抗議した。素直に頷く父は、おとなしい。自分でも無茶をした自覚があるのだろう。
「そもそも、帝であらせられるお立場を考えてください。替えが利かない人なんですから」
「それはリンも同じだ」
私とは違う。そんな意味を込めたアイリーンの叱責を、セイランは穏やかな声で訂正した。四人の妻を尊敬しているし、それぞれに長所と短所があって家族の愛もある。政略結婚だが、粗末に扱うことはしなかった。
そんな妻達が産んだ子は、すべて愛おしい。たとえ騒動を起こして距離を置かなければならない子でも、愛情の深さは同じだった。いや、不憫に感じるから、逆に気にかけたつもりだ。
表立って味方できなくても、優秀なキエを付けてサポートしてきた。埃が舞う屋敷の部屋で、アイリーンは頬が熱くなるのを感じる。そっか、私はちゃんと愛されていたんだ。
「伝わりにくい方法を使ったのは……悪かったが、お前を愛さない日はなかった。これだけは八百万の神々に誓える」
小さく頷いたアイリーンは、緩んでしまう頬を両手で押さえた。
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