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44.人間は嫌な生き物だな
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人間がいっぱいで攻めてきた! 一万は多い数だと思う。僕達が普段使わない数字だった。ベル様によれば、百が百個……うわぁ、そんなに人間がいるんだね。
お祖父ちゃんがすぐに駆けつけて、お父さんが少し遅れて到着した。二人とも戦うつもりで、今回はお母さんも一緒に行くみたい。
「危なくないの?」
「敵の数が多い時はこちらも数を増やすのよ」
お母さんの説明によれば、いっぱいが攻撃してきたら、こっちもいっぱい並んでやり返す。一人で十人倒すより、一人で一人の方が簡単でしょ、だって。魔族は強いから十人でも倒せると思うけど。
たくさん味方がいれば、負ける心配も減る。周りの人を助けたり、助けてもらったりできるから。なるほどと僕は大きく頷いた。そのままベル様の服をきゅっと掴む。
「どうした」
「僕もいく」
「当たり前だろう。置いていくわけがない」
そうなの? 危ないからここで待ってなさい、と言われる気がしていた。ベル様は絶対に勝つし、吸血鬼のおじさん達も強い。
ベル様は他の種族にも声掛けをした。幼子も戦場近くまで連れて参加するよう、命令を出すの。嫌な予感がするみたい。ベル様によれば、こういう大規模な作戦を人間が行うときは、何かある。裏でこっそり子どもを人質に取ったり、巣を破壊したり。後ろで悪さされるくらいなら、全員集まる方が安全だ。
人間はそんなに悪い考えをするんだね。嫌な生き物だな。僕だって五年経って強くなったと思う。ブレスもいっぱい練習して、すぐに出せるようになった。
「行くぞ」
お祖父ちゃんの背中に乗って移動し、人間の群れを上から眺める。すごく高いところで、ぐるりと回ったお祖父ちゃんに向けて棒が飛んできた。あれは人間の武器で、矢なんだ。先端が尖ってて、チクチクするらしい。
お祖父ちゃんの説明を聞きながら、落ちていく矢を眺めた。真っ直ぐ飛んでくるけど、お祖父ちゃんまで届かない。途中で落ちてしまった。飛ばす力が足りないのかな。
何周か回ったら、近くにある小さな山の上に降りた。木がない丘みたいな山だよ。耳長のおねえさん達はもちろん、小人のおじいさんや巨人のおにいさんも集まっていた。吸血鬼のおじさんは、森の木の陰にいる。
「ここを基地とし、防衛ラインをあの川にする。線を越えた人間は、全員殺せ。一切の容赦は不要!」
口々に皆が返事をする。僕も分かったフリで頷いた。えっと、基地と防衛ライン、容赦は不要を後で教えてもらおう。
ベル様は僕を抱っこしたまま、降りろと言わない。だから首に手を回して抱きついた。僕は奥さんだから、ベル様と一緒に戦うよ。
魔法を使うベル様が、見てきた光景を地面に映し出す。山や川の位置もそっくり。その絵に皆があれこれ書き足した。手直しして、決まったみたいだ。
「作戦の決行は夕刻、それまでに配置につけ」
大急ぎで移動する魔族は、連れてきた子どもをお母さんの周りに置いた。お祖母ちゃんも来ていて、他にもメスのドラゴンが子どもを守る係を担当する。僕も手招きされたけど、首を横に振った。
「悪いが、今回は経験を積ませる。連れていくぞ」
お母さんにそう宣言し、ベル様は僕を連れてお祖父ちゃんの背にもう一度飛び乗った。
お祖父ちゃんがすぐに駆けつけて、お父さんが少し遅れて到着した。二人とも戦うつもりで、今回はお母さんも一緒に行くみたい。
「危なくないの?」
「敵の数が多い時はこちらも数を増やすのよ」
お母さんの説明によれば、いっぱいが攻撃してきたら、こっちもいっぱい並んでやり返す。一人で十人倒すより、一人で一人の方が簡単でしょ、だって。魔族は強いから十人でも倒せると思うけど。
たくさん味方がいれば、負ける心配も減る。周りの人を助けたり、助けてもらったりできるから。なるほどと僕は大きく頷いた。そのままベル様の服をきゅっと掴む。
「どうした」
「僕もいく」
「当たり前だろう。置いていくわけがない」
そうなの? 危ないからここで待ってなさい、と言われる気がしていた。ベル様は絶対に勝つし、吸血鬼のおじさん達も強い。
ベル様は他の種族にも声掛けをした。幼子も戦場近くまで連れて参加するよう、命令を出すの。嫌な予感がするみたい。ベル様によれば、こういう大規模な作戦を人間が行うときは、何かある。裏でこっそり子どもを人質に取ったり、巣を破壊したり。後ろで悪さされるくらいなら、全員集まる方が安全だ。
人間はそんなに悪い考えをするんだね。嫌な生き物だな。僕だって五年経って強くなったと思う。ブレスもいっぱい練習して、すぐに出せるようになった。
「行くぞ」
お祖父ちゃんの背中に乗って移動し、人間の群れを上から眺める。すごく高いところで、ぐるりと回ったお祖父ちゃんに向けて棒が飛んできた。あれは人間の武器で、矢なんだ。先端が尖ってて、チクチクするらしい。
お祖父ちゃんの説明を聞きながら、落ちていく矢を眺めた。真っ直ぐ飛んでくるけど、お祖父ちゃんまで届かない。途中で落ちてしまった。飛ばす力が足りないのかな。
何周か回ったら、近くにある小さな山の上に降りた。木がない丘みたいな山だよ。耳長のおねえさん達はもちろん、小人のおじいさんや巨人のおにいさんも集まっていた。吸血鬼のおじさんは、森の木の陰にいる。
「ここを基地とし、防衛ラインをあの川にする。線を越えた人間は、全員殺せ。一切の容赦は不要!」
口々に皆が返事をする。僕も分かったフリで頷いた。えっと、基地と防衛ライン、容赦は不要を後で教えてもらおう。
ベル様は僕を抱っこしたまま、降りろと言わない。だから首に手を回して抱きついた。僕は奥さんだから、ベル様と一緒に戦うよ。
魔法を使うベル様が、見てきた光景を地面に映し出す。山や川の位置もそっくり。その絵に皆があれこれ書き足した。手直しして、決まったみたいだ。
「作戦の決行は夕刻、それまでに配置につけ」
大急ぎで移動する魔族は、連れてきた子どもをお母さんの周りに置いた。お祖母ちゃんも来ていて、他にもメスのドラゴンが子どもを守る係を担当する。僕も手招きされたけど、首を横に振った。
「悪いが、今回は経験を積ませる。連れていくぞ」
お母さんにそう宣言し、ベル様は僕を連れてお祖父ちゃんの背にもう一度飛び乗った。
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