【完結】僕の大事な魔王様

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

文字の大きさ
71 / 82

71.不思議な色の子が出てきてびっくり

しおりを挟む
 ピンクの卵は温かった。ひんやりした水色のレラジェとは違う。きっと火竜だと思う。期待しながらお父さんが殻の隙間を覗く。割れた殻の間でじたばた暴れる手足は、仰向けに転がったみたいで逆さだった。殻から完全に出るまで、手を貸したらいけないんだ。

「あと少し」

 呟いた僕は手をぎゅっと握る。どきどきするね。ベル様も卵の隙間に目を凝らす。少しして、殻が転がった。その勢いで、中の赤ちゃんも俯せになる。

「あっ!」

「え……?」

 赤じゃない。赤い鱗じゃない赤ちゃんは、キューと鳴いた。お腹側は薄い黄色だったけど、背中側は赤だと思い込んでいた。でもピンクっぽい紫色だ。薄い色だからピンクの方が近いかも。残った殻を踏んで割りながら、四つ足で這い出てくる。

 ここまで来たら、もう触れてもいいんだよ。お父さんが鼻先で支えてから、両手で起こしてあげた。お腹が空いているのか、お父さんの赤い鱗に吸い付く。でもお乳でないし、怒って噛みついた。元気な子だな。じっくり観察したベル様が「オスだな」と呟いた。

「じゃあ、弟?」

「そうだ」

 僕は妹に続いて、弟も手に入れた。順番は僕がお兄ちゃんで、妹はお姉ちゃん、一番下が弟だ。弟は、お父さんの指を噛んで、うぅと唸る。お母さんが来ないと困るな。心配する僕達をよそに、奥から赤い鱗のドラゴンが近づいてきた。

「おいで、ほら」

 ゴロンと横に転がり、赤ちゃんを呼ぶ。赤い目をきらきらさせて、赤ちゃんの両手が伸ばされた。お父さんが離したら、凄い勢いで這っていく。四つ足で近づいて、お腹にしがみ付く。そのまま、ちゅっちゅと吸い付く音が聞こえた。

「久しぶりだけれど、気合を入れれば出るもんだね」

 火竜のおばさんが笑う。お乳を弟にくれたお礼にぺこりとしたところで、お母さんが飛んできた。妹のレラジェは一緒じゃない。置いてきたのかな? 水竜は熱いのが苦手だから、お母さんだけで来たみたい。お母さんは大人だから平気だけど、レラジェは熱いと大変だもん。

 分かった気分でうんうんと頷く。僕の様子にベル様が小さく笑った。

「あら。グレモリーさん、助かります」

 にこにことお母さんが挨拶をする。お乳をあげるおばさんは、お母さんが来たから交代しようとした。でもお腹が空いた赤ちゃんはまだ飲むと嫌がる。満足するまで飲ませることになった。僕はお兄ちゃんだから、あんな風にならないよ。

「この子は火竜じゃないのかしら」

 お母さんが首を傾げる。紫色は珍しいんだ。今まで見たことがない。ピンク色は火竜にもいる。ピンクに近い紫色だから、火竜で合ってるかも。名前を考え始めたので、僕も名前をひとつ提案した。

「キマリスは?」

「いい名前ね。あなた、どう?」

 お母さんは賛成してくれた。迷ってお父さんも頷く。他に名前を考えていたのを譲った感じ? 黒くて強い竜が昔いて、その名前がキマリスなの。オスだったと聞いた時、その名前が浮かんだんだ。お母さんが寝る時に話してくれた英雄ドラゴンの主人公だよ。

「強そうだ」

 ベル様はいい名前だと褒めた。名前は僕が選んだキマリスに決まり。いっぱい遊ぼうね。
しおりを挟む
感想 56

あなたにおすすめの小説

伯爵令息アルロの魔法学園生活

あさざきゆずき
BL
ハーフエルフのアルロは、人間とエルフの両方から嫌われている。だから、アルロは魔法学園へ入学しても孤独だった。そんなとき、口は悪いけれど妙に優しい優等生が現れた。

【完結】元騎士は相棒の元剣闘士となんでも屋さん営業中

虎ノ威きよひ
BL
 ここはドラゴンや魔獣が住み、冒険者や魔術師が職業として存在する世界。  カズユキはある国のある領のある街で「なんでも屋」を営んでいた。  家庭教師に家業の手伝い、貴族の護衛に魔獣退治もなんでもござれ。  そんなある日、相棒のコウが気絶したオッドアイの少年、ミナトを連れて帰ってくる。  この話は、お互い想い合いながらも10年間硬直状態だったふたりが、純真な少年との関わりや事件によって動き出す物語。 ※コウ(黒髪長髪/褐色肌/青目/超高身長/無口美形)×カズユキ(金髪短髪/色白/赤目/高身長/美形)←ミナト(赤髪ベリーショート/金と黒のオッドアイ/細身で元気な15歳) ※受けのカズユキは性に奔放な設定のため、攻めのコウ以外との体の関係を仄めかす表現があります。 ※同性婚が認められている世界観です。

炎の精霊王の愛に満ちて

陽花紫
BL
異世界転移してしまったミヤは、森の中で寒さに震えていた。暖をとるために焚火をすれば、そこから精霊王フレアが姿を現す。 悪しき魔術師によって封印されていたフレアはその礼として「願いをひとつ叶えてやろう」とミヤ告げる。しかし無欲なミヤには、願いなど浮かばなかった。フレアはミヤに欲望を与え、いまいちど願いを尋ねる。 ミヤは答えた。「俺を、愛して」 小説家になろうにも掲載中です。

何故か正妻になった男の僕。

selen
BL
『側妻になった男の僕。』の続きです(⌒▽⌒) blさいこう✩.*˚主従らぶさいこう✩.*˚✩.*˚

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

すべてはあなたを守るため

高菜あやめ
BL
【天然超絶美形な王太子×妾のフリした護衛】 Y国の次期国王セレスタン王太子殿下の妾になるため、はるばるX国からやってきたロキ。だが妾とは表向きの姿で、その正体はY国政府の依頼で派遣された『雇われ』護衛だ。戴冠式を一か月後に控え、殿下をあらゆる刺客から守りぬかなくてはならない。しかしこの任務、殿下に素性を知られないことが条件で、そのため武器も取り上げられ、丸腰で護衛をするとか無茶な注文をされる。ロキははたして殿下を守りぬけるのか……愛情深い王太子殿下とポンコツ護衛のほのぼの切ないラブコメディです

処理中です...