【完結】魔法は使えるけど、話が違うんじゃね!?

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

文字の大きさ
144 / 1,100
第6章 聖獣、一方的な契約

21.呼ばれぬ客の想定外(6)

しおりを挟む
 すべすべした美しい手に、黒や赤で汚れた手で触れるのは気が引けるが、手を取らないとリアムの機嫌を損ねてしまう。あんなに心配してくれた友人へむくいたいと思うから、素直に手を取った。だけど、リアムの重さを受け止めた僅かな時間で痺れた足は、ちょっと情けない。

 もっと鍛えたら平気になるだろうか。いやそこまで鍛えたら、兵器になりそうな気がした。うっかりした発言がフラグになって、シフェルの地獄の特訓を呼び寄せそうなので、お口にチャックだ。

 それより、リアムの「セイ」という愛称は二人だけの特別な呼び方だと考えていたのだが、普段使いになったらしい。小鹿のように足がプルプルしないよう堪えるオレの努力を無にするように、ヒジリが鼻先で膝裏を押した。

 これは――伝説(?)の技、ひざかっくん!! 

「あっ」

 間抜けな声が漏れた瞬間、転がっていた。ちなみに手を繋いだリアムが離さなかったため、前に転んだオレがリアムを押し倒しそうになる。もちろんリアムにケガをさせないように受身を取って、背中を下に落ちたのだが……。

「陛下っ!」

「キヨ?」

 あちこちから声があがり、あっという間に抱き起こされた。ついでにジャックに肩へ担がれてしまう。見た目の年齢が少年なので、24歳にして二人とも子供扱いだった。

「まだ疲れてるんだろう。歩かなくていいさ」

 ノアも頷いている。騎士に抱き上げられたリアムは不満そうだが、我慢するらしい。足元のヒジリがジャックのズボンを咥えて引っ張った。

「ん? どうした」

 あまり怖がっていないのは、ジャックの順応能力が高いからだ。オレを最初に拾ったときも、彼が一番最初に理解を示していた。傭兵だからなのか、彼自身の資質なのかはわからない。
 
『我が乗せていく』

「……そうか?」

 困惑顔ながらも、ジャックはオレをヒジリの背に下ろした。しっとりした毛皮は艶があって美しい。中に手を突っ込むと、ふわふわしていた。ぎゅっと抱きついたオレを乗せたヒジリは満足そうだ。

 視線の先で羨ましそうなリアムを見つけて手を伸ばす。

「一緒に乗ろうぜ。平気だろ? ヒジリ」

『よかろう』

 なんだろう、この上から目線の獣。オレが主だよな、普通は「承知しました」とか言うと思うが……まあ、実家の猫も「この下僕め、飼わせてやってるのだ、ありがたく思え」みたいな態度だったから、猫科はこれが標準かもしれない。

「頼むな」

 首筋をくしゃくしゃ掻いてやれば、嬉しそうに尻尾が揺れた。言葉より尻尾の方が正直です、はい。

 騎士が迷いながら後ろにリアムを乗せる。皇帝の指示に逆らえなかったのだろう。心配そうな顔で隣を歩く彼は、何かあれば抜刀できるように準備していた。

 バイクのタンデムさながら背にリアムの温もりを感じながら、オレ達は宮殿のアーチをくぐった。
しおりを挟む
感想 51

あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...