【完結】魔法は使えるけど、話が違うんじゃね!?

綾雅(りょうが)今年は7冊!

文字の大きさ
149 / 1,100
第6章 聖獣、一方的な契約

22.増えた仲間たちの確執(5)

しおりを挟む
朝食だ!」

『主殿?』

 オレの言い方に疑問を浮かべたヒジリから飛び降りて、椅子に陣取る。目の前に並んでいるのは、パンケーキみたいな形の平べったいパンとスープ、サラダ、焼いたハム、卵だった。目玉焼きに近いが、目玉は潰されている。

「キヨ、人聞き悪いこと言うなよ」

「そうだ、聖獣殿が心配しているぞ」

 口々に窘められるが、すでにパンに卵と野菜を挟んだオレは小首を傾げた。何かおかしなこと言ったか? だって事実だろう。

「本当のことじゃん」

 いただきますと告げてから、パンにかぶりつく。柔らかいパンに感激する。

 そういや収納魔法で持ち歩くなら、食料は長持ちするらしい。完全に腐らないわけじゃないので、レトルト食品扱いくらいの感覚だろうか。多少保管できるが、何十年も入れてると食べられなくなる。おかげで茶葉や焼き菓子は持ち歩けた。

 誘拐された先で食べたクッキーは涙が出るほど美味しかったのを思い出しながら、柔らかいパンを夢中で頬張る。その必死な姿に、ジャック達がこっそり涙を拭いていた。

 哀れむなら、パンをくれ! それも柔らかくて白いやつがいい。

 しょうがないだろう、この世界に来てから朝御飯は乾パンと干し肉だったんだから。

 もぐもぐするオレの膝に顎を乗せたヒジリが見上げてくるので、手にしたパンを千切って渡してみた。目の前に差し出されたパンを、怪訝そうに匂いを嗅いで口を開く。口に放り込まれたパンをゆっくり咀嚼し、ヒジリは数回瞬いた。

「どう?」

『悪くはないが、肉がいい』

「そっか、残念」

 保存食の袋を空中から引っ張り出して、干し肉を取り出す。匂いを嗅ぐヒジリに1枚食べさせた。

「どうした? 歯に刺さったのか?」

 必死にくちゃくちゃ噛むヒジリの牙に、干し肉が刺さっているらしい。繊維質だから噛みづらい上に時間がかかる。味はするが、生肉主食の獣に向かない食べ物だったのかも。

「ちょっと口あけて」

 無造作に手を突っ込んで牙に刺さった干し肉を抜いてやる。すると、穴のあいた干し肉を再び手から奪って食べ始めた。器用に手で立てて噛む姿は、大型の猫だった。

「大丈夫か?」

『不思議な味だが悪くない』

 良くもないが、初めての食感に目を輝かせている。そんな聖獣の姿を見ていた傭兵達の涙腺がついに決壊した。目元を拭うジャックに続き、ノアはハンカチで顔を覆っている。ライアンは目元だけじゃなく鼻も赤くし、サシャは気の毒そうな顔で俯いてしまった。

「どうしたんだ? 皆」

 目の前のスープを飲みながら首を傾げれば、彼らは「これも食べろ」と卵やハムを分けてくれる。ありがたく礼を言って口をつけるが、食べる姿にまた涙を零していた。
しおりを挟む
感想 51

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

処理中です...