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第15章 意外と近くに和食調味料あった

76.熱中症対策で革命を起こせ!(5)

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 興味深そうに近くで手順を見ていたシフェルへ「あとで作り方は公表する」と伝えておいた。これで奇妙な行動をとる魔術師やら、こっそり塩の量をメモしてる騎士も安心するはずだ。

 だんだんと手際が良くなり、最後の鍋を作る頃には目分量でも同じ味が作れるようになっていた。

 味見を終えた近くの鍋から、ヒジリとブラウの分を確保する。手を出す傭兵達の声に答えながら、自分の水筒にも入れた。後で作ってもいいけど、面倒だからね。

「キヨ、製法を秘匿して一儲けしようぜ」

 こそこそ耳打ちするレイルに苦笑いする。そうだよな、こういう考えが一般的なんだろう。たぶん、リアムに保護されてなかったら、オレも同じこと考えた可能性がある。チート能力を自分の力だと勘違いしたあげく、それを使って一儲けする――金に困ったら将来やるかもしれん。

「もう公開するって言っちゃった」

 ぺろっと舌を出してレイルの提案を断れば「欲がないのか、バカなのか。いっそ両方かも」と頭を撫でられた。手荒なレイルが憂さ晴らしを終えるころ、オレの髪は櫛も通らない程ぐしゃぐしゃにされていた。

「騎士も兵士も関係ないから、好きなだけ飲んで。足りなかったら作るから」

 声をかけて、飲み終えた傭兵が残した3つの鍋の中身を集める。1つ分より少ないので、もう1つ鍋に作ってから魔力で浮かせた。

 魔法の原理がよくわからないんだが、なんとなく使えるんだからいいだろう。浮かせた鍋を捕虜の前に持っていく。

「っ、見せびらかそうってのか!?」

 捕虜の1人がかみつくが、それを王太子が黙らせた。

「煩い、黙れ。……おれはどうなってもいいから、部下たちに水をもらえないか?」

 仮にも王族だった人が頭をさげる。オレより年上のお願いに、ふぅと溜め息をついた。びくりと肩を揺らした彼の前に満たしたコップを差しだす。

 反射的に受け取った彼の喉が、ごくりと音を立てた。

「飲みなよ、毒は入ってないからさ。部下も大事だけど、あんたも部下を守らないといけないんだろ? だったら、こんな場所で倒れるわけにいかないんだから」

 王太子は自分より先に部下へコップを手渡した。すると騎士らしき青年は、さらに奥にいる具合の悪そうな男へ飲ませる。どうやら北の国は西と違って、互いを思いやる心があるらしい。

「コップが少ないから、順番にな」

 にっこり笑って鍋を彼らの前に下した。武器を取り上げられた彼らは両手を拘束されてるわけじゃない。歩きやすいよう、鎖に左手を繋いで逃げられないようにしただけだった。列の前方と後方に鍋を置くと、取り出したコップをいくつか鍋に浮かべる。

「捕虜だって人間だもんな」

 戻ったオレに呆れ顔の兵士や騎士をよそに、傭兵達は笑いながら迎えてくれた。

「キヨなら絶対に捕虜に持っていくと思いました」

「賭けようと思ったけど、オッズが釣り合わねえよ」

 全員が「キヨが持っていく」に賭けたらしい。信頼されているのか、行動を読まれてるのか。どっちにしても傭兵達はこんな甘いオレで構わないようだ。否定する声はなかった。
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