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第28章 南の国制圧? 調味料が先だから

195.人質が大人しいとは限らない(3)

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 唸るオレの様子に、聖獣達は顔を見合わせた。振り返るとジークムンドに縛り上げられたリシャールと部下が転がり、正面はのたうち回るドラゴン多数。前途多難だと溜め息をついたオレの肩をぽんと叩いたレイルが、肩を竦める。

 どうやら情報収集を終えて追いついたらしい。いつも思うけど、情報屋って神出鬼没だな。オレの転移みたいに何か能力を隠してないか? 居場所がバレるのは赤いピアスのせいだとして、追いつくのが早すぎる。

「レイルぅ」

 懐いてみたら、気持ち悪いと叩かれた。なぜだ、解せぬ。オレは美少年のはずだろう。しかも義理の従兄弟だし、もっと大切にしてくれてもいいんじゃないか?

「情報を持ってきた。こっち来い」

 どうやら仕事モードだったらしい。素直に後ろへついていこうとすると、慌てたマロンが叫んだ。

『ご主人様、これはどうしますか?』

「使うかも知れないから、そのまま捕まえといて。絶対に逃がさないで」

 ちょっと外道な作戦を思いついたオレの命令に、マロンは目を輝かせる。金の一角獣と呼ぶにふさわしい姿に進化――でいいのか?――した聖獣は、機嫌よく長い首を縦に振った。ほっとした様子で息をつくのはヒジリとコウコだ。スノーはドラゴンを威嚇して脅かしながら、彼らを一か所に集めていた。

 行方不明になったブラウは、ちゃっかりオレの足元を八の字歩きして飼い猫アピールだ。さりげなく足に頬ずりしながら歩く青猫の脚を、わざと踏んづけてやった。調子よすぎるんだよ、お前。

「ここらでいいか」

 開けた場所を選んだレイルに頷き、収納から取り出した椅子を渡す。自分の分も置いて、さっさと腰掛けた。ノアが用意してくれた水筒の麦茶を飲みながら待てば、煙草を咥えたレイルがちらりとジークムンドたちの方に視線を向ける。

 聞こえない距離で、レイルは煙草を手にさりげなく口元を隠した。狙撃手のライアンは口元を読むからな。用心だろう。疑ってるからではなく、疑わないための先手だった。

「もう遅いようだが、リシャールの部下が裏切る話がひとつ」

「うん、襲われたね」

「簡単に言えば、病気の妹を盾に取られたらしい。貴族のやったことで、王族は絡んでなかった。他にも数件は同様の事案があるぞ。年老いた母親、嫁いだ姉の借金、婚約者もあったか……どうする?」

 南の兵士を切り捨てた方がいい。戦力としての利点はないと告げる、レイルの判断はたぶん正しい。面倒事を内包して戦うのは危険だと忠告してくれた。その気持ちをありがたく受け取りながら、オレは飲み終えた水筒を彼に差し出す。

「オレが見捨てるのを待ってるんじゃない? 実力差がありすぎるんだし、ハンデあげてもいいよ。それと新しい武器も手に入れたから、色々と試してみたかったんだ」

 にっこり笑って出来るだけ簡潔にソフトに伝えたのに、引きつった笑いで水筒を押し返された。
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