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67.パレードは屋根のない馬車で
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お父様の衣装は、公式の礼服を白で仕立てていました。お母様の色である青い大きなブローチを飾り、金の房飾りが揺れて金髪を引き立てます。
お母様のドレスはマーメイドラインで、体の凹凸を強調したデザインです。螺旋と三日月をいくつも重ねたような、幻想的な地模様が美しいですね。薔薇を模した髪飾りやブローチを使い、耳飾りを大きくして首飾りを控えめに。品よく纏まっていて、とても参考になりましたわ。
私のプリンセスラインは膨らんだスカートが特徴ですが、白に淡いピンクを重ねました。スカート部分とビスチェの刺繍は銀色です。実は、靴を黒にしたのです。歩くとちらりとつま先が見えるのがお気に入りでした。カスト様の黒髪に合わせた形ですわ。
「俺の色だね」
靴に視線を合わせたカスト様の微笑みに、私は嬉しくなりました。気づいてくれましたね。本当は銀色かピンクの靴が用意されましたが、どうしてもとお願いして変更したのです。
お飾りやドレスの一部を変更するのは難しいですが、靴ならば隠れる場所なので比較的自由に出来ます。私が単独で纏うと妙なバランスですが、隣にカスト様が立つことでお揃いになりますわ。そう小声でお話ししている間に、ダヴィードが駆け込んできました。
「お待たせして申し訳ありません」
あらあら、毛先がまだ直っていませんね。間に合わないから走ったことで、直した寝癖がまた飛び出したようです。近づいて、指先で捻って隠しました。
「これでいいわ。王太子らしくね」
この国を背負って立つ存在です。国の運営を任せられると皆に思って貰えるよう、支持される王子を目指してください。さまざまな思いを込めた言葉に、ダヴィードは神妙な顔で頷きました。
きちんと勉強しているようです。これ以上追い詰めてはいけません。身をかがめて頬にキスをすると、照れた様子で「もう子供ではありません」と文句を言いました。でも嬉しそうな顔は隠せてませんよ。
用意されたパレードの馬車に分乗します。上に屋根がないので、沿道に集まる民からよく見えるでしょうね。この馬車のアイディアは、他国のパレード用を真似したとか。以前は見たことがありませんでした。カスト様が仰るには、外交を担当する伯爵家の方が導入を進めたと。優秀な方なのですね。夜会でご挨拶できたらいいのですが。
私とカスト様が並んで座り、分家頭のメーダ伯爵アロルド伯父様も同乗なさいました。今後は侯爵になられると伺っていますわ。
「伯父様、こちらへどうぞ」
お父様とお母様は、真ん中にダヴィードを乗せました。それに倣い、私が中央に座るようです。ならば右側はカスト様、左側が伯父様なので勧めました。挨拶して腰掛けた伯父様が、厳ついお顔を綻ばせます。
「姫の隣なら、俺も笑顔でいられそうだ」
「伯父様はいつも笑顔ではありませんか」
「……俺の時と違い過ぎる」
ぼそっとカスト様がこぼし、伯父様がにやりと笑いました。動き出した馬車から街道の左右へ集まった人達に手を振りながら、私はくすくすと笑ってしまいました。だって、私の背中越しにカスト様と伯父様が、指先でケンカしてるんですもの。
がたごとと揺れる道の上、美しい栗毛の馬に引かれる屋根のない馬車と、着飾った王族の姿。興奮したのでしょうか。甲高い声を上げた子どもが飛び出し、御者は慌てて手綱を引きます。間に合わないかも知れません。
「きゃぁっ!!」
大きく揺れる馬車、私は隣から伸びた腕に抱き締められました。
お母様のドレスはマーメイドラインで、体の凹凸を強調したデザインです。螺旋と三日月をいくつも重ねたような、幻想的な地模様が美しいですね。薔薇を模した髪飾りやブローチを使い、耳飾りを大きくして首飾りを控えめに。品よく纏まっていて、とても参考になりましたわ。
私のプリンセスラインは膨らんだスカートが特徴ですが、白に淡いピンクを重ねました。スカート部分とビスチェの刺繍は銀色です。実は、靴を黒にしたのです。歩くとちらりとつま先が見えるのがお気に入りでした。カスト様の黒髪に合わせた形ですわ。
「俺の色だね」
靴に視線を合わせたカスト様の微笑みに、私は嬉しくなりました。気づいてくれましたね。本当は銀色かピンクの靴が用意されましたが、どうしてもとお願いして変更したのです。
お飾りやドレスの一部を変更するのは難しいですが、靴ならば隠れる場所なので比較的自由に出来ます。私が単独で纏うと妙なバランスですが、隣にカスト様が立つことでお揃いになりますわ。そう小声でお話ししている間に、ダヴィードが駆け込んできました。
「お待たせして申し訳ありません」
あらあら、毛先がまだ直っていませんね。間に合わないから走ったことで、直した寝癖がまた飛び出したようです。近づいて、指先で捻って隠しました。
「これでいいわ。王太子らしくね」
この国を背負って立つ存在です。国の運営を任せられると皆に思って貰えるよう、支持される王子を目指してください。さまざまな思いを込めた言葉に、ダヴィードは神妙な顔で頷きました。
きちんと勉強しているようです。これ以上追い詰めてはいけません。身をかがめて頬にキスをすると、照れた様子で「もう子供ではありません」と文句を言いました。でも嬉しそうな顔は隠せてませんよ。
用意されたパレードの馬車に分乗します。上に屋根がないので、沿道に集まる民からよく見えるでしょうね。この馬車のアイディアは、他国のパレード用を真似したとか。以前は見たことがありませんでした。カスト様が仰るには、外交を担当する伯爵家の方が導入を進めたと。優秀な方なのですね。夜会でご挨拶できたらいいのですが。
私とカスト様が並んで座り、分家頭のメーダ伯爵アロルド伯父様も同乗なさいました。今後は侯爵になられると伺っていますわ。
「伯父様、こちらへどうぞ」
お父様とお母様は、真ん中にダヴィードを乗せました。それに倣い、私が中央に座るようです。ならば右側はカスト様、左側が伯父様なので勧めました。挨拶して腰掛けた伯父様が、厳ついお顔を綻ばせます。
「姫の隣なら、俺も笑顔でいられそうだ」
「伯父様はいつも笑顔ではありませんか」
「……俺の時と違い過ぎる」
ぼそっとカスト様がこぼし、伯父様がにやりと笑いました。動き出した馬車から街道の左右へ集まった人達に手を振りながら、私はくすくすと笑ってしまいました。だって、私の背中越しにカスト様と伯父様が、指先でケンカしてるんですもの。
がたごとと揺れる道の上、美しい栗毛の馬に引かれる屋根のない馬車と、着飾った王族の姿。興奮したのでしょうか。甲高い声を上げた子どもが飛び出し、御者は慌てて手綱を引きます。間に合わないかも知れません。
「きゃぁっ!!」
大きく揺れる馬車、私は隣から伸びた腕に抱き締められました。
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