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外伝
外伝1−3.僕だけのお姫様を選んだ
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長女は損だと語るオリエッタ嬢に、姉の話をする。同じ長女で、王家に奪われた未来の王妃……そんな肩書を与えられた姉様を、オリエッタ嬢は「大変だったでしょうね」と締め括った。
「うん」
同意するしかない。だって、姉様は僕と違う生き方を強いられた。ずっと微笑んでいるのも、そう教えられたからだろ? もちろん姉様は優しいから、教えられなくても幸せに微笑んでたと思う。それでも強要された表情や生活は、姉様の生活や考え方に影響を与えたはず。
ごとんと馬車が揺れて止まった。今度は目的地だろう。騎士がノックして開いた扉の先に、森が広がっている。お淑やかな少女を装うオリエッタ嬢より先に降りて、手を差し伸べた。お礼を言って降りる彼女を支え、二人で並んで湖を目指す。この先にある湖の話をしながら、目配せした。
にっこり笑うオリエッタ嬢の手が、スカートの裾を摘む。膝下まであるスカートは走りづらいからね。僕が頷いた直後、重ねた手を握り直した。
「いくよ」
「いいわ!」
隣にあった茂みに飛び込み、潜ってから別の場所に頭を出す。騎士達がおろおろしている隙に、飛び出して走った。完全に撒くことは出来なくて、湖の手前で捕まる。
「王太子殿下、ご自分の立場をお考えください。今回の件は、騎士団長にお伝えします」
「え? それは許してくれ」
「無理です」
今日の警備責任者である分家のコルシーニ子爵に頼むが、一言で断られた。騎士団長に伝わると、近衛を束ねるアロルド伯父様に伝わる。ダメだと言われたら縋るが、無理と断られたら諦めるしかない。がくりと肩を落とした僕と繋いだ手を、オリエッタ嬢が揺らした。
顔を上げると、くすくす笑っている。
「安心して。私も一緒に叱られてあげるわ」
「いや、僕だけでいいよ」
「あら。メーダ伯爵は素敵な男性だから? 会わせたくないんでしょう」
「違うよ! そんなんじゃない。君は伯父様の恐ろしさを知らないから……本当に怖いぞ。姉様以外には厳しい人なんだ」
嫉妬なのと笑う彼女へ、情けないが本心を明かす。その中に気になる言葉があったのか、オリエッタ嬢は目を見開いた。
「そう、王女殿下は守ってくださる騎士がいたのね。よかったわ」
心からほっとした様子で、淡く微笑んだオリエッタ嬢が姉様と重なった。普段は全然違う性格なのに、この微笑みは同じだ。誰かを気遣うときの優しさに満ちた顔……僕はその顔が嫌いで、同時に大好きだった。そう気付く。
アナスタージ侯爵の懸念は現実になりそう。申し訳ないけど、綺麗な他のご令嬢がオリエッタ嬢より魅力的に思えることはないと断言できた。だから一緒に「羨ましい」と叫んで、促されて早々に王城へ戻る。もう帰っていいなんて言わないさ、僕と一緒に叱られよう。
数年後、僕は彼女の前に膝を突いて愛を請う。王太子妃の教育の厳しさを知るから、請うてから乞う。
「オリエッタ嬢、僕と婚約して欲しい。王太子妃という大変な苦労を与えてしまうけど、それに匹敵する愛を捧げるから僕を選んでください」
婚約してくれと請うのは、僕の我が侭だ。国王となって国を守る僕を、隣で支えて欲しい。側妃や愛人は要らない。君だけが欲しいから、僕を選んでと乞うた。
「王太子殿下の婚約者は嫌だけど……ダヴィード、あなたの婚約者ならいいわ」
僕は感激して涙を零し、彼女はハンカチではなく袖でそっと拭ってくれた。姉様がカスト兄様を選んだ理由が分かる。僕は僕にないものを持つ人を選んだ。きっと、そういうことだ。姉様とかなり違うけど、僕だけのお姫様を見つけたよ。
「うん」
同意するしかない。だって、姉様は僕と違う生き方を強いられた。ずっと微笑んでいるのも、そう教えられたからだろ? もちろん姉様は優しいから、教えられなくても幸せに微笑んでたと思う。それでも強要された表情や生活は、姉様の生活や考え方に影響を与えたはず。
ごとんと馬車が揺れて止まった。今度は目的地だろう。騎士がノックして開いた扉の先に、森が広がっている。お淑やかな少女を装うオリエッタ嬢より先に降りて、手を差し伸べた。お礼を言って降りる彼女を支え、二人で並んで湖を目指す。この先にある湖の話をしながら、目配せした。
にっこり笑うオリエッタ嬢の手が、スカートの裾を摘む。膝下まであるスカートは走りづらいからね。僕が頷いた直後、重ねた手を握り直した。
「いくよ」
「いいわ!」
隣にあった茂みに飛び込み、潜ってから別の場所に頭を出す。騎士達がおろおろしている隙に、飛び出して走った。完全に撒くことは出来なくて、湖の手前で捕まる。
「王太子殿下、ご自分の立場をお考えください。今回の件は、騎士団長にお伝えします」
「え? それは許してくれ」
「無理です」
今日の警備責任者である分家のコルシーニ子爵に頼むが、一言で断られた。騎士団長に伝わると、近衛を束ねるアロルド伯父様に伝わる。ダメだと言われたら縋るが、無理と断られたら諦めるしかない。がくりと肩を落とした僕と繋いだ手を、オリエッタ嬢が揺らした。
顔を上げると、くすくす笑っている。
「安心して。私も一緒に叱られてあげるわ」
「いや、僕だけでいいよ」
「あら。メーダ伯爵は素敵な男性だから? 会わせたくないんでしょう」
「違うよ! そんなんじゃない。君は伯父様の恐ろしさを知らないから……本当に怖いぞ。姉様以外には厳しい人なんだ」
嫉妬なのと笑う彼女へ、情けないが本心を明かす。その中に気になる言葉があったのか、オリエッタ嬢は目を見開いた。
「そう、王女殿下は守ってくださる騎士がいたのね。よかったわ」
心からほっとした様子で、淡く微笑んだオリエッタ嬢が姉様と重なった。普段は全然違う性格なのに、この微笑みは同じだ。誰かを気遣うときの優しさに満ちた顔……僕はその顔が嫌いで、同時に大好きだった。そう気付く。
アナスタージ侯爵の懸念は現実になりそう。申し訳ないけど、綺麗な他のご令嬢がオリエッタ嬢より魅力的に思えることはないと断言できた。だから一緒に「羨ましい」と叫んで、促されて早々に王城へ戻る。もう帰っていいなんて言わないさ、僕と一緒に叱られよう。
数年後、僕は彼女の前に膝を突いて愛を請う。王太子妃の教育の厳しさを知るから、請うてから乞う。
「オリエッタ嬢、僕と婚約して欲しい。王太子妃という大変な苦労を与えてしまうけど、それに匹敵する愛を捧げるから僕を選んでください」
婚約してくれと請うのは、僕の我が侭だ。国王となって国を守る僕を、隣で支えて欲しい。側妃や愛人は要らない。君だけが欲しいから、僕を選んでと乞うた。
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