【完結】彼女が魔女だって? 要らないなら僕が大切に愛するよ

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

文字の大きさ
144 / 173

144.どこまでも知りたいんだ

 街はお祝いムードだという。トリシャが窘めるため、悪虐皇帝が大人しくなった。そんな噂をばら撒いた。彼女が言い聞かせれば、悪虐皇帝である僕が大人しく話を聞く、と。

 貴族階級は血筋がどうのと口にするが、僕には関係ない。悪虐皇帝と呼ばれる僕も、平民の間で人気があった。公平な政を行い、悪辣な貴族を成敗し、能力があれば平民でも昇進させてくれる。間違ってはいないよね。すごく好意的に見たらの話だけど。

「今日はソフィと一緒に化粧品を選びましたの。肌に合わなければ、調整してくださるそうです」

「それはよかった。気に入ってくれたなら何よりだよ。明日はヴェールの最終チェックだけ?」

「いえ、ソフィのドレスも」

「ああ。それならニルスに休みを与えるから、一緒に選ぶといいね。僕達は庭でお茶会でもしよう」

「素敵ですわ、ありがとうございます。エリク」

 微笑む彼女の肌は、ほんのりと赤い。出会った頃の青白い肌が嘘のようだ。試した化粧品も痒みなどもなさそうで、安心したよ。

 肌にいいと評判の薬草を使った化粧品を作る商会を呼び寄せた。平民が起こした商会だと貴族は蔑んだが、品質も接客もまったく問題ない。ニルスの調査結果をもって、彼らに皇室御用達の看板を上げさせた。皇妃ベアトリスが使用する化粧品、その評判は品質以上に広まるだろう。

 トリシャが好むから取り寄せていた果物や魚だけど、最近は定期便ができた。長距離を一度に移動するのではなく、各町まで運びリレーする形になったらしい。お陰で山間部の民も魚を口にするようになり、海辺に山の幸が届き始めた。商魂たくましいと褒めるべきかな。

 帝国内外の横柄で傲慢な貴族を片っぱしから吊るしたお陰で、各国に真っ当な貴族が増えた。普通はゴロツキを処分したら街の治安が良くなった、となるはずだけど。貴族を大量処分したら、政が真っ当になるなんて。どれだけ酷い状況だったか、よく分かる事例だよ。

「僕の方は、各国の収益が上がって治安も良くなったから……徐々に仕事が減ってきた。君との時間をゆっくり取れそうで安心してる」

 詳しい内容はなくてもいいから、出来事を互いに話し合う時間を作った。僕はまだまだトリシャのことを知りたいし、彼女に僕を知って欲しい。報告書に載るような話じゃなくて、庭の花を見て何を感じたか。今日の天気に何を思ったか。そんな些細なことも独占したかった。

「嬉しいです」

 微笑む彼女の耳に唇を寄せて、こっそり内緒話をひとつ。

「僕は君を閉じ込めたいのと同じくらい、知りたい。僕だけのトリシャを見たいんだ」

 真っ赤になった彼女は、お返しのように呟いた。

「全部、髪の先まであなたの物ですわ」

 思わず言葉に詰まる。愛しさが溢れて、貪ってしまいたい激情を深呼吸で抑え込んだ。なんて悪い子だろうね。悪魔のような僕を誘惑するなんて、困った天使だ。
感想 214

あなたにおすすめの小説

結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。

佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。 結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。 アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。 アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。 日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。 そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。 一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。 ◇小説家になろう、ベリーズカフェにも掲載中です! ◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

裏切りの先にあるもの

マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。 結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。

わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑

岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。 もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。 本編終了しました。

私は既にフラれましたので。

椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…? ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

【完結】ご安心を、2度とその手を求める事はありません

ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・ それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望

私の手からこぼれ落ちるもの

アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。 優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。 でもそれは偽りだった。 お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。 お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。 心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。 私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。 こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら… ❈ 作者独自の世界観です。 ❈ 作者独自の設定です。 ❈ ざまぁはありません。