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151.僕が暴走したら君の魅力のせいだ
控室でトリシャの背のボタンを外し、現れた肌の白さに目を細める。日に焼けない肌は透き通るような透明感があった。唇を寄せてしまい、触れた瞬間に肩を震わせる彼女を、捩じ伏せたくなる衝動を堪える。余計なことしちゃったね。もう少しで押し倒すところだった。
自分を抑えながら、両肩から滑り落ちそうなドレスを両手で支える彼女に微笑む。
「ごめんね、化粧直しが終わるまで外で待つから」
「はい……」
照れた様子だけど、怒ってはいない。トリシャの小さな返答を聞いて、控室から出た。そこで待っていたニルスにハンカチを差し出される。イニシャルの刺繍もないシンプルなハンカチは、まるで食事で使うナプキンのようだ。
「ん? 何」
「陛下、唇を拭われた方がよろしいかと」
執事の口調で指摘されると、余計に恥ずかしいね。受け取ったハンカチで拭き取ると、紅が布を赤く汚した。こんなについていたの? トリシャの赤い唇から色を奪うほど夢中になったから、当然の結果かな。気になってもう一度拭いたが、色は移らなかった。
「式場の様子はどう」
「それぞれの控室に案内させました。問題は起きていません。お披露目の宴は日が沈んでからの予定で、式場の内装変更を行っております」
着々と進む手配の見事さに、侍従達への労いを考える。正直、難しいことや関係ないことで頭を働かせないと、口付けたトリシャの記憶に支配されそうだった。うっとり目を閉じた彼女の美しさ、天使の輝きを思い浮かべてしまう。
「国民の祭りと宴は夜通し行う予定ですが、皇帝陛下と皇妃殿下におかれましては途中退席していただきます」
新婚の初夜を邪魔するほど野暮ではない。結婚した皇帝と皇妃の義務は、次世代となる子どもを作ること。一般的な体面はそうなるが、僕は義務だなんて思っていない。もし子どもを授からなければ、それでも構わなかった。ただトリシャの子どもは可愛いだろう。男でも女でも、腹を空にする時間がないほど産んで欲しい。いや、僕を構う時間がなくなるから、程々にしよう。
自分勝手な僕は、愛しいトリシャの着替えが終わった合図があるまで、扉の前でうろうろしていた。何人か通り過ぎた貴族や侍女が微笑ましそうにしていたけど、他人の視線は気にならない。
「お支度が整いました。どうぞ」
ソフィがそう言って開いた扉の向こうで、特別な手法で染めた青絹を纏うトリシャに目を細める。彼女のためだけに染め、用意される服は細い体のラインを強調するシンプルなデザインだった。無理にスカートを膨らませず、柔らかなラインを描いて絹が足に寄り添う。ヴェールは取り払われ、髪を別の形に結い直した銀髪には、ティアラが輝いていた。
大粒の蒼玉が目を引くネックレスを際立たせるため、胸元をレース仕様にしたドレスは見事の一言に尽きる。着こなす美女は微笑んで手を差し伸べた。それを受けて膝をつく。
「綺麗だ、トリシャ。僕の大切な小鳥……誰かに見せるのが惜しいくらいだよ」
「エリク、ありがとう」
まだ何か言いたそうだけど、侍女が呼びにきてしまった。宴の支度ができたらしい。後でその可愛い声を、ベッドで聞かせて欲しいな。もし僕が暴走するとしたら、君が魅力的すぎるのが罪だよ。
「陛下、あと数時間の辛抱ですので我慢してください」
ニルスに釘を刺されてしまった。僕はそんなに飢えた獣の目をしていたかい?
自分を抑えながら、両肩から滑り落ちそうなドレスを両手で支える彼女に微笑む。
「ごめんね、化粧直しが終わるまで外で待つから」
「はい……」
照れた様子だけど、怒ってはいない。トリシャの小さな返答を聞いて、控室から出た。そこで待っていたニルスにハンカチを差し出される。イニシャルの刺繍もないシンプルなハンカチは、まるで食事で使うナプキンのようだ。
「ん? 何」
「陛下、唇を拭われた方がよろしいかと」
執事の口調で指摘されると、余計に恥ずかしいね。受け取ったハンカチで拭き取ると、紅が布を赤く汚した。こんなについていたの? トリシャの赤い唇から色を奪うほど夢中になったから、当然の結果かな。気になってもう一度拭いたが、色は移らなかった。
「式場の様子はどう」
「それぞれの控室に案内させました。問題は起きていません。お披露目の宴は日が沈んでからの予定で、式場の内装変更を行っております」
着々と進む手配の見事さに、侍従達への労いを考える。正直、難しいことや関係ないことで頭を働かせないと、口付けたトリシャの記憶に支配されそうだった。うっとり目を閉じた彼女の美しさ、天使の輝きを思い浮かべてしまう。
「国民の祭りと宴は夜通し行う予定ですが、皇帝陛下と皇妃殿下におかれましては途中退席していただきます」
新婚の初夜を邪魔するほど野暮ではない。結婚した皇帝と皇妃の義務は、次世代となる子どもを作ること。一般的な体面はそうなるが、僕は義務だなんて思っていない。もし子どもを授からなければ、それでも構わなかった。ただトリシャの子どもは可愛いだろう。男でも女でも、腹を空にする時間がないほど産んで欲しい。いや、僕を構う時間がなくなるから、程々にしよう。
自分勝手な僕は、愛しいトリシャの着替えが終わった合図があるまで、扉の前でうろうろしていた。何人か通り過ぎた貴族や侍女が微笑ましそうにしていたけど、他人の視線は気にならない。
「お支度が整いました。どうぞ」
ソフィがそう言って開いた扉の向こうで、特別な手法で染めた青絹を纏うトリシャに目を細める。彼女のためだけに染め、用意される服は細い体のラインを強調するシンプルなデザインだった。無理にスカートを膨らませず、柔らかなラインを描いて絹が足に寄り添う。ヴェールは取り払われ、髪を別の形に結い直した銀髪には、ティアラが輝いていた。
大粒の蒼玉が目を引くネックレスを際立たせるため、胸元をレース仕様にしたドレスは見事の一言に尽きる。着こなす美女は微笑んで手を差し伸べた。それを受けて膝をつく。
「綺麗だ、トリシャ。僕の大切な小鳥……誰かに見せるのが惜しいくらいだよ」
「エリク、ありがとう」
まだ何か言いたそうだけど、侍女が呼びにきてしまった。宴の支度ができたらしい。後でその可愛い声を、ベッドで聞かせて欲しいな。もし僕が暴走するとしたら、君が魅力的すぎるのが罪だよ。
「陛下、あと数時間の辛抱ですので我慢してください」
ニルスに釘を刺されてしまった。僕はそんなに飢えた獣の目をしていたかい?
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