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第10章 覇王を追撃する闇
365.魔物であっても礼儀を尽くせば恩が返る
潜っていくレイキの巨体が押し出した水が、周囲の森へ染みていく。大質量が沈んだのだから当然だが、周囲の森にとって恵みの水だろう。逆に湖に棲む魚は生死に関わる大事件だった。レイキが湖から出れば、その水量はかなり減ることになる。
「うわっ、水きたけど!!」
騒ぎながらふわりと浮いた双子が現れ、リリアーナも帰ってきた。高い位置から一直線に下降して、勢いを緩めることなく体当たりする。危険なので、他のアスタルテやククルなどに行わないよう、注意しなければ。オレ相手ならば受け止めてやれるが、体の小さな者ならケガをする。説明に素直にうなずいたリリアーナは嬉しそうだった。
「サタン様には飛びついてもいい?」
「ドラゴン姿ならば避けるぞ」
「うん」
あの質量を受け止めるのは骨が折れる。文字通り骨折しかねないからな。勢いを緩めるなり、直前で減速するなら話は別だ。説明している後ろで、双子は顔を見合わせて奇妙な声で「くしし」と笑った。
「この鈍さは逆にすごいよね」
アナトが溜め息をついた。意味はわからぬが、あまり気分のいい言葉ではない。睨みつけると、反省した様子はないが口を手で押さえた。
「レイキは卵見つけたかな」
リリアーナが心配そうに湖を覗き込む。沈んでから少し経つが、大きな動きはなかった。大きく波打った水の表面も元に戻り、溢れ出た水が足元を浸す。
ぐっと水面が持ち上がり、一気に水が外へ溢れ出た。レイキが巨体を持ち上げ、首を伸ばして水の外へ体を押す。ぐっと踏ん張るがイマイチ上手くいかない様子だった。口を固く閉じているので、卵を回収したのかもしれない。押すように魔力で支えてやれば、竜化したアルシエルも後ろから甲羅を押した。
草原を水で波打たせながら、レイキはのそりと大地を踏みしめる。それから口を開いて卵を吐き出した。やはり潰さないように気遣っていたらしい。思ったより小さな卵だった。数は3つ、多いのか少ないのか。
ヴィネが近づいて鳴き真似をする。その会話が終わると卵をひとつ手にして戻ってきた。
「どうした?」
「魔王様に献上するって言うんだけど、どうしようか」
好きにしろと言いたそうなレイキに、軽く会釈して卵を受け取る。神獣となる権利をもつ長寿の生き物への、最低限の礼儀だ。それから受け取った卵を持って歩み寄った。並んでいる2つの卵の横にゆっくり下ろす。
「卵は不要だ。気持ちだけ受け取っておこう」
隣で通訳のように鳴き声をあげて笑ったヴィネを、レイキは伸ばした口でべろりと舐めた。
「食われるっ! くさっ」
騒ぐヴィネを解放すると、レイキは口に卵を入れずにこちらに鳴いてみせる。何かを伝えようとしているようだ。だが残念ながら言葉が通じない。
「……他に何か礼を受け取ってくれとさ」
溢れた湖の水で顔を洗ったヴィネが、苦笑いしながら伝えた内容に、オレは少し考え……せっかくなので手伝いを頼むことにした。
「うわっ、水きたけど!!」
騒ぎながらふわりと浮いた双子が現れ、リリアーナも帰ってきた。高い位置から一直線に下降して、勢いを緩めることなく体当たりする。危険なので、他のアスタルテやククルなどに行わないよう、注意しなければ。オレ相手ならば受け止めてやれるが、体の小さな者ならケガをする。説明に素直にうなずいたリリアーナは嬉しそうだった。
「サタン様には飛びついてもいい?」
「ドラゴン姿ならば避けるぞ」
「うん」
あの質量を受け止めるのは骨が折れる。文字通り骨折しかねないからな。勢いを緩めるなり、直前で減速するなら話は別だ。説明している後ろで、双子は顔を見合わせて奇妙な声で「くしし」と笑った。
「この鈍さは逆にすごいよね」
アナトが溜め息をついた。意味はわからぬが、あまり気分のいい言葉ではない。睨みつけると、反省した様子はないが口を手で押さえた。
「レイキは卵見つけたかな」
リリアーナが心配そうに湖を覗き込む。沈んでから少し経つが、大きな動きはなかった。大きく波打った水の表面も元に戻り、溢れ出た水が足元を浸す。
ぐっと水面が持ち上がり、一気に水が外へ溢れ出た。レイキが巨体を持ち上げ、首を伸ばして水の外へ体を押す。ぐっと踏ん張るがイマイチ上手くいかない様子だった。口を固く閉じているので、卵を回収したのかもしれない。押すように魔力で支えてやれば、竜化したアルシエルも後ろから甲羅を押した。
草原を水で波打たせながら、レイキはのそりと大地を踏みしめる。それから口を開いて卵を吐き出した。やはり潰さないように気遣っていたらしい。思ったより小さな卵だった。数は3つ、多いのか少ないのか。
ヴィネが近づいて鳴き真似をする。その会話が終わると卵をひとつ手にして戻ってきた。
「どうした?」
「魔王様に献上するって言うんだけど、どうしようか」
好きにしろと言いたそうなレイキに、軽く会釈して卵を受け取る。神獣となる権利をもつ長寿の生き物への、最低限の礼儀だ。それから受け取った卵を持って歩み寄った。並んでいる2つの卵の横にゆっくり下ろす。
「卵は不要だ。気持ちだけ受け取っておこう」
隣で通訳のように鳴き声をあげて笑ったヴィネを、レイキは伸ばした口でべろりと舐めた。
「食われるっ! くさっ」
騒ぐヴィネを解放すると、レイキは口に卵を入れずにこちらに鳴いてみせる。何かを伝えようとしているようだ。だが残念ながら言葉が通じない。
「……他に何か礼を受け取ってくれとさ」
溢れた湖の水で顔を洗ったヴィネが、苦笑いしながら伝えた内容に、オレは少し考え……せっかくなので手伝いを頼むことにした。
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